平成26年度 成長期における医・科学サポートプログラム

概要

成長期の女性には急激な心身の変化が現れるもので、当然、女性アスリートにも女性特有の心身の変化が現れ、競技活動に影響を及ぼしているケースも少なくありません。また、女性ジュニアアスリートは東京オリンピックを見据え、積極的に強化を行っていく必要がありますが、JISSでサポートを受けられる対象とはなっていない場合が多く、選手に直接アプローチをしていく機会がありません。
そこで、平成26年度は、女性ジュニアアスリート、指導者、保護者に対して個別サポート及び講習会を実施しました。

個別サポートプログラム

実施内容

女性ジュニアアスリート(9歳~18歳)で、NFから推薦のあった者のうち12名を支援対象者とし、それぞれの支援対象者に対して、ヒアリング実施後に運動器メディカルチェック、心理及びトレーニングの各分野のサポートを実施しました。

得られた成果

サポート実施期間が短いため、競技結果への反映等の具体的な成果は得られませんでしたが、将来トップアスリートとして活躍する世代について早い段階で問題の抽出ができたことは競技生活の環境を整備する上での一助となります。
また、成長期は心身ともに大きな変化が伴う年代であるため、サポートを通し自身を把握することは、これからの競技生活をより充実させることにつながることが考えられます。

今後の課題

支援対象者自身への個別サポートだけでなく、サポートを通して把握できた問題を改善するために、支援対象者の関係者や組織への働きかけも重要だと考えられるため、次年度は支援対象者への支援体制の整備なども課題に挙げられます。

女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会

実施内容

婦人科、栄養、心理、トレーニングの各分野を、女性ジュニアアスリートとその保護者がともに実践を交えながら学ぶことにより、成長期におけるからだやこころの変化に家庭でも柔軟にかつ継続的に対応できる知識を身につけ、充実した競技生活へつなげることを目的とし、実施しました。

プログラム内容

アスリートと保護者が一緒に講義を受けたり、分けて実施したりと工夫を重ねた内容としました。
【アスリート】 【保護者】
婦人科(講習会)
講師:高尾美穂(イーク表参道 副院長)
成長期に起こるからだの変化や、競技生活に与える影響について学ぶ
栄養(講習会)
講師:金子香織(JISS栄養グループ専門職員)
女性ジュニアアスリートに必要な
食事のとりかたについて学ぶ
婦人科(講習会)
講師:高尾美穂(イーク表参道 副院長)
運動性無月経など
女性ジュニアアスリートの健康管理について
栄養(実践)/昼食
講師:亀井明子(JISS栄養グループ先任研究員)、金子香織(JISS栄養グループ専門職員)
必要な食事の量や栄養素を考えながら、メニューを選択し
女性ジュニアアスリートに適した食事のとりかたについて学ぶ
昼食として選んだメニューを実際に食べながら、栄養バランスのよい食事を味わう
※「R3」はその日のメニューから各自必要なものを選択することができるアスリート専用レストラン
心理(講習会)
講師:奥野真由(JISS心理グループ研究員)、
関口邦子(JISS心理グループ協力者)
女性ジュニアスリートとして
自分のこころについて知る・考える
栄養(講習会)
講師:金子香織(JISS栄養グループ専門職員)
家庭において女性ジュニアアスリートに必要な栄養を
バランスよく摂取するための基礎知識と食事作りについて学ぶ
トレーニング(講習会)
講師:小川将司、村上拓也(JISSトレーニング指導員)
トレーニングの必要性と効果について学ぶ
心理(講習会)
講師:関口邦子(JISS心理グループ協力者)
成長期におけるこころの発達について学ぶ
トレーニング(実践)
講師:小川将司、村上拓也(JISSトレーニング指導員)
具体的なトレーニングの方法を実践する
トレーニング(見学)
お子さんが実際にトレーニングしている様子を見学する

実施風景

女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会実施風景1 女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会実施風景2 女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会実施風景3

得られた成果

参加者に対し、各分野の講義で知りたい内容について事前にアンケートを実施しました。
アスリートにおいては「試合当日の食事や間食(補食)の上手な食べ方」や「試合前や試合中の緊張や不安について」など、競技へ還元できる内容を多く求めていました。また、保護者においては「食事の基本」や「練習環境の支え方」など、競技生活を支えるための知識や成長期の子どもへ焦点をあてた知識を求めている傾向が確認できました。
今回のアンケートにより、家庭における不安や求められる知識をJISS側としても把握することができました。
アンケートから得ることのできたニーズを元に、求められている知識を普及することができました。

今後の課題

今回は中学生を対象に実施しましたが、各世代において求めている内容は異なると考えられるため、次年度は中学生だけでなく高校生を対象とした講座も実施する必要があります。

女性ジュニアアスリート指導者講習会

JISS主催講習会の開催

実施内容

女性ジュニアアスリートの指導者を対象に、成長期に起こりやすい各種障害についての理解を深め効果的なサポート活動の実現を目的とし開催しました。また、昨年度作成した『成長期女性アスリート指導者のためのハンドブック』を活用し、関連性のある分野をまとめ焦点をしぼった内容のテーマで実施しました。

プログラム内容

【講座1】 9:45~11:00 小児科/心理編
講師:友利杏奈(東京女子医科大学東医療センター小児科)、奥野真由(JISS 心理グループ研究員)
成長期特有の病気、女性アスリートの成長期におけるこころの発達などについて

【講座2】 11:10~12:25 外傷・障害/トレーニング編
講師:半谷美夏(JISS メディカルセンター医師)、小川将司(JISS トレーニング指導員)
成長期及び女性の運動器の特徴、成長期に起こりやすいスポーツ外傷や障害を踏まえた、女性ジュニアアスリート向けのトレーニングについて

【講座3】 13:30~14:45 婦人科/コンディショニング編
講師:高尾美穂(イーク表参道 副院長)、中村真理子(JISS コンディショニンググループ研究員)
女性特有の第二次性徴、女性アスリートの三主徴及び月経周期とコンディショニングについて

【講座4】 14:55~16:10 栄養編
講師:石井美子(JISS 栄養グループ研究員)※12月担当/金子香織(JISS栄養グループ専門職員)※2月担当
基本的な栄養の内容に加え、女性ジュニアアスリートに注意が必要なウエイトコントロール、骨粗しょう症や貧血予防の食事について

実施風景

女性ジュニアアスリート指導者講習会実施風景2女性ジュニアアスリート指導者講習会実施風景3

得られた成果

事後アンケートにて「実践的でわかりやすい」「現場で活かせる講座だった」等の声をいただきました。
今回は知識やノウハウを広く普及することを目的としており、関連性のある分野をまとめた内容を実施したことで、参加いただいた指導者の競技現場への活用や、指導者同士での共有など知識の啓発が期待できます。

今後の課題

夏季競技、冬季競技でシーズンが異なるため、開催時期に偏りがあると、参加できない競技が固定されてしまうことが考えられます。
次年度はさらに多くの指導者へ参加いただくことができるよう、開催時期等の検討が必要となります。
また、参加できない指導者への普及も考慮し、講座の模様をストリーミングにて配信する予定です。

NF主催講習会の開催

実施内容

NFが主催する地区強化指定選手合同合宿における栄養講習会に講師を派遣しました。今回の講習会は、成長期に共通している基礎的な内容及び女性ジュニアアスリートの特徴や競技に特化した内容を実施しました。
なお、次年度はJISS主催講習会のストリーミングも実施することも踏まえた上で、NF主催講習会への講師派遣については、本事業では実施しないこととなりました。

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