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研究員インタビュー:小野寺峻一(ハイパフォーマンス戦略部 開発課/スポーツ科学研究部門)

小野寺峻一さん:イメージ1

ハイパフォーマンス戦略部 開発課とスポーツ科学研究部門に所属する小野寺峻一さん。2024年度より国立スポーツ科学センター(以下、JISS)の研究員として入職しました。アスリート育成パスウェイなどタレント発掘・育成事業(以下、TID事業)のモデルをつくる支援を行う一方で、海外のスポーツ政策やマネジメントなどスポーツ科学研究に従事しています。アスリート育成の取組やJISSではどのような研究に携われているのかなどお話を聞きました。

アスリートの成長や生き方の道筋を探る

現在、ハイパフォーマンススポーツセンター(以下、HPSC)では、2つの職務を兼任しています。1つは、オリンピック・パラリンピック競技種目に関わる競技団体のアスリート育成パスウェイのモデルをつくる事業のサポートです。もう1つは、スポーツ科学研究者として、各国がどのようなスポーツ政策やスポーツマネジメントを行っているのか、組織的な観点から見て研究を行っています。

アスリート育成パスウェイとは、子ども・初心者の段階から、トップアスリート、さらには引退後までを見通した「一貫した育成の道筋」のことで、競技力・人間的成長・健康・キャリア形成など総合的に捉えたものです。日本で本格的に発掘・育成が行われ、約20年が経ちましたが、、モデルや検証するためのリソースが不足しています。私の役割は、発掘・育成・強化の事業が、地域や競技の現状に合う形で進められるように、それらを研究(エビデンス)で繋ぐこと。幅広くデータを収集して分析するのが仕事です。

小野寺峻一さん:イメージ2

HPSCには、各競技のトップアスリートたちが集まりますが、トップアスリートは競技レベルや要求水準が極めて高いため、個別の分析やサポートが必要です。そのためトップアスリートの事例は特に少なく、可能な限りアスリートたちの経験をデータとして積み重ねることで、その共通項を分析するなど、それぞれの事例をまとめながらモデルを構築しています。この領域を専門とする研究者の数も少なく、多くの課題があります。

“積極的に挑戦する”気持ちと自身の経験が強み

JISSに入職する前は、いわてスーパーキッズ発掘・育成事業スタッフとしてTID事業に携わっており、私自身も発掘・育成事業第1期の修了生です。現在もスピードスケート選手として活動していますが、スピードスケートに出会ったのもTIDの競技体験プログラムでした。TIDでは、日本代表クラスの選手や指導者から直接ご指導いただくなど競技力の強化はもちろんですが、“積極的に挑戦する”姿勢を学べたことは現在にもつながっています。岩手大学時代では学生発のベンチャー企業を起業したり、岩手大学大学院を修了後に筑波大学大学院へ進学したり、スピードスケートの世界から研究や指導の分野へ転身したことも“挑戦”への気持ちが原動力となっています。

小野寺峻一さん:イメージ3

自分自身がTID事業の出身者で、実際に一連のプログラムを経験したこと、プログラムの講師として経験したこと、またユースオリンピックでトップクラスの選手たちを間近で見てきたことなど、複数の視点を持っているのはJISSの中でも、おそらく私だけだと思います。パスウェイの対象となる方とコミュニケーションを取る際にも経験者の視点があれば深くお話を伺うことができ、その背景や意図を理解することもできます。こうした自分の強みを研究に生かしていきたいです。

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将来は、自分の専門であるスピードスケートに関わらず、東南アジア、南米、アフリカなどウインタースポーツが十分に普及されていない国や地域を対象に、ウインタースポーツの事例やモデルづくりに取り組み、それを通じた研究を実践したいと思っています。

JISSを目指す学生へのメッセージ

私は、中学3年生の時に研修のためHPSCを訪れて以来、いつかはここで働きたいと考えるようになりました。大規模な施設の中に最先端の設備と技術が備えられており、日本のスポーツ界を支える中核的な拠点であることを実感しました。JISSに入職してからは、大学や民間の研究機関では得難い多様な出会いがあり、トップアスリートと協働できる環境に大きな魅力を感じています。また、チーム内の研究者はいずれも高度な専門性を有しており、入職1年目の私に対しても温かく接してくださることに感謝しています。海外の研究や国内の現場にも同行する機会もあり、これまで接することのなかった世界を経験できることもJISSならではの貴重な環境であると感じています。

前述のように自身がアスリートとして取り組んできたプロセスは非常に重要であると実感しています。そのため、アスリートから研究者を目指す方は、現在取り組んでいるスポーツに真摯に向き合うことを大切にしてほしいと考えています。自分自身を分析対象として捉え、その過程を振り返る経験は、研究者としての活動に大いに役立つはずです。

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<プロフィール>
小野寺峻一(おのでら・しゅんいち)
戦略部 開発課/スポーツ科学研究部門 研究員
2007年いわてスーパーキッズ発掘・育成事業1期生。
スピードスケート競技選手として国体(現・国スポ)などで活躍。修了後は同事業のコーチとして活動。
岩手大学在学中にはスピードスケートのブレードを研ぐ砥石の開発を行う学生カンパニーを起業、卒業後は筑波大学院でコーチングを学ぶ。
2024年度よりJISSの契約研究員となる。JISSではTID事業等のサポートとスポーツ医・科学を研究する部門の研究員として従事。

※本記事は2026年1月時点のインタビューをもとに作成しています

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