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シンポジウム『Integrity of Sportを考える』開催報告

 会場全景
 
 
 
 
 
 
 
 

 日本スポーツ振興センター(JSC)は2014年6月7日(土)、国際サッカー連盟(FIFA)の協力により、シンポジウム「Integrity of Sportを考える」を東京国際フォ−ラムにて開催いたしました。

 JSCは2014年4月、スポーツ・インテグリティ・ユニットを設置し、スポーツの根幹を否定する様々な脅威(暴力、ハラスメント、ドーピング、八百長・違法賭博、中央競技団体のガバナンス欠如等)からスポーツを守るための活動を推進しています。その一環として、2014年5月にスポーツの高潔性、スポーツの価値を守ることを目的として、FIFAとの連携協力に合意しました。今回のシンポジウムはこのFIFAとの合意に基づき、「Integrity of Sport」(スポーツの高潔性)を守り、公正・公平なスポーツの発展を目的として開催されました。

 JSC理事長の河野一郎は、Integrity of Sportの問題は近年、世界のスポーツ界において最重要事項の一つとして国際的に取組まれているテーマであること、スポーツには社会を変える力があると常々語られるが、その前提としてIntegrity of Sportが守られていることが前提である、と趣旨説明を行いました。続いて、ジェローム・バルクFIFA事務総長の本シンポジウムに寄せたビデオメッセージの中で、スポーツのインテグリティを守ることは FIFAの憲章にも明記されているテーマであり、不正行為がサッカーの価値を損なわぬよう、世界各国のサッカー協会、選手、関係者や、法的機関が協力し合うことがとても重要である、と述べました。

       JSC 河野一郎理事長        FIFAジェローム・バルク事務局長 ビデオメッセージ   
           
 続いて元文部科学副大臣の鈴木寛氏(日本サッカー協会(JFA)理事、JSC顧問)が「スポーツ基本法とIntegrity of Sport」というテーマで基調講演を行いました。2011年に成立したスポーツ基本法には、スポーツに関するあらゆる活動を公正かつ適切に実施することが書かれており、それを元に成立したスポーツ基本計画には、スポーツ界における透明性、公平・公正性の向上とスポーツ団体のガバナンス強化等の政策目標が掲げられています。しかし、その後、スポーツ指導における暴力問題を受け、文部科学大臣が「日本のスポーツ史上最大の危機」とメッセージを発する等、日本のスポーツ界はかつてない危機的状況にあるといえます。鈴木寛氏は、「我が国のスポーツ界には、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会開催という最大のチャンスと、数々のスポーツ現場における暴力問題やスポーツ団体の不正経理等ガバナンスの欠如の露呈といった最大の危機が同時にやってきており、抜本的な改革が求められている状況にある」と述べ、基調講演を締めくくりました。


JSCアドバイザー 鈴木寛氏 FIFAの取組みに関するムービー パネルディスカッション

 最後に「スポーツの根幹を脅かす脅威とその対策」をテーマとしてパネルディスカッションが行われ、パネリストとして、境田正樹氏(日本スポーツ法学会監事)、村井満氏(JFA副会長・Jリーグチェアマン)、田邉陽子氏(日本アンチ・ドーピング機構(JADA)理事、全日本柔道連盟理事)、JSCスポーツ・インテグリティ・ユニット長の勝田隆が登壇し、モデレーターの鈴木寛氏の進行のもと、それぞれの専門の立場から熱心な議論が展開されました。また、パネルディスカッションの途中、FIFAが作成したビデオが上映され、その中でラルフ・ムシュケ氏(FIFAセキュリティ担当部長)がFIFAのIntegrity of Sportに関する取り組みと題して、FIFAが行っている八百長行為・違法賭博防止活動の事例を紹介しました。

 当日は、スポーツ関係者、ビジネス関係者、研究者や学生等、約350名の参加者がありました。時宜を得たテーマということもあってか、会場からも多数の質問が寄せられ、改めて本テーマへの関心の高さが伺えました。

 今後も、JSCはスポーツのインテグリティを守るための活動に貢献できるよう全力を挙げて取り組んで参ります。


パネルディスカッション概要


 勝田隆
 
 
 
 
 
 
 
 

勝田隆(JSCスポーツ・インテグリティ・ユニット長)
人類史の中でスポーツが近代的なルールの中で行われるようになったのは、過去150年程度のことといえる。一方、急速なグローバル化・情報化に伴い、スポーツを取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、八百長やドーピングといったスポーツのインテグリティに影を落とす様々な脅威が顕在化している。スポーツが豊かな生活文化として根付き、社会に役立つ存在として成長することを阻害する状況が日々生じており、スポーツはむしろ危機的な状況にあるといえる。指導者の暴力はスポーツのインテグリティを脅かすものであるが、その危機意識がどれほど共有されているだろうか。例えばオーストラリアでは、スポーツにおける倫理や健全性を脅かす問題を特定するためのアンケート調査を行っており、現状を認識するためにはこのような取組みが参考になるだろう。全ての人々がスポーツのおかれた危機的状況を認識し、当事者意識を持ちながらスポーツを守り、育てていくことが重要であろう。
 境田正樹氏
 
 
 
 
 
 
 
 

境田正樹氏(日本スポーツ法学会監事)
スポーツ基本法の骨格にはスポーツを通じて健全かつ公平・公正な社会を形成するという理念がある。この理念の実現のために、国、独立行政法人、自治体、スポーツ団体等が相互に連携を図りながら各自の責務を果たす必要がある。ガバナンスの構築やスポーツ紛争の迅速・適正な解決については、スポーツ団体に努力義務が明記されている。しかしながら、スポーツ基本法制定後もスポーツ界では様々な不祥事が多発している。暴力・セクハラ問題などスポーツ権の侵害行為があった場合には、アスリートファーストの考えのもと、スポーツ団体は迅速・適正な救済措置を施すことが必要であると同時に事前の予防策も講じる必要がある。現在、多くのスポーツ団体は膨大な業務量を抱える一方でそれに見合うだけの事務局体制が整備されておらず、また、理事会や評議員会社員総会等が十分に機能していないという現状があり、そのことが様々な不祥事が起きる原因の一つとなっている。スポーツ団体の自立・自律・自治を守りつつ、スポーツ団体のガバナンスの早期構築に向けた制度設計や支援制度の構築が急務である。
使用スライド(境田氏)

 村井満氏
 
 
 
 
 
 
 
 


村井満氏(JFA副会長・Jリーグチェアマン)

八百長・違法賭博・人種差別等、サッカー界を取り巻く脅威とJリーグの対策について紹介。「ピッチ上のフェアプレー」、「ファイナンシャル・フェアプレー」、「ソーシャル・フェアプレー」という3つのフェアプレーが、JリーグおよびJクラブを発展させる基盤となる重要な概念であることを強調。中でも、「ソーシャル・フェアプレー」は、『3つのフェアプレー』の中で最も根底にあり、Jリーグに関わる全ての人々が常に意識し取り組むべき指針であり、これらの宣言のもと、JリーグはJFAと連携し、フェアネスでオープンな世界に誇れるサッカーリーグの実現を目指している。
 






 田邉陽子氏
 
 
 
 
 
 
 
 

田邉陽子氏(JADA理事、全日本柔道連盟理事)
ドーピングはスポーツへの大きな脅威の一つであるが、その社会的インパクトも大きい。これは、ドーピングをしたアスリートの資格停止、健康被害という個人的問題を超えて、スポーツの社会的信用の低下を招く社会問題につながる。参加選手から多数のドーピング違反者を出したことによりスポンサーが撤退し、競技会の運営に多大な悪影響が生じた事例が複数ある。ドーピングはこのようにスポーツの崩壊を招く社会問題である。JADAでは、競技会場や学校を訪問し、競技会に参加するアスリートや子どもたちにドーピングの問題とスポーツの価値を伝える教育・啓発活動に、アスリートが率先して携わっている。ドーピングのないスポーツであるからこそ、私たちはスポーツを通して未来への展望を描くことができる。



 

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