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学校現場での取組(事故防止対策) 福岡第47号(2022.02)

管轄地域内の大学における講義について
~福岡県立大学 教職実践演習(養護教諭)講義~

 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)では、学校での事故防止に活用できる資料を作成し学校安全Webに掲載しています。また、大学等の関係団体における研修会等で、学校安全Webに掲載している資料の紹介や事故防止情報を提供しています。

 今回、公立大学法人福岡県立大学(以下「福岡県立大学」)看護学部 助教 梶原由紀子先生からの依頼を受け、令和3年11月29日に、看護学部4年生の教職実践演習(養護教諭)で講義を行いました。
 福岡県立大学は、かつて炭坑のまちとして栄えた福岡県田川市にあり、人間社会学部・看護学部の2学部と大学院2研究科を擁する西日本で数少ない公立福祉系総合大学として、地域に根ざした教育・研究を実践しています。
 講義では、災害共済給付制度や「学校等での事故を減らすために」と題して、「学校安全Webの紹介」と「福岡県の災害の状況」、令和2年度に調査研究を行った「体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策」について説明を行い、最後にDVD『スポーツ活動中の歯・口のけが防止と応急処置』を上映しました。
                       

◆講義の概要

〔災害共済給付制度の説明〕
 令和3年度学校安全・災害共済給付ガイドを用いて、制度の性格(JSC、学校、設置者との三者による互助共済制度)や給付対象となる災害の範囲、学校の管理下の範囲、請求の流れなどを説明しました。
写真は講義を聴講している学生の様子 (講義の様子)
  講義を聴講した学生は、卒業後、養護教諭として災害共済給付に携わる方々ということもあり、熱心に説明を聞いていただきました。


〔学校安全Webの紹介〕  
 学校安全Webでは、学校の管理下における災害防止のための情報、調査研究の成果、各地域に密着した情報を掲載しており、今回の講義では、その中でもスポーツ事故防止を中心とした資料を紹介しました。
紹介の一例 「学校での事故防止対策集」
学校での事故防止対策集                    外部有識者とJSC職員で「学校災害防止調査研究委員会」を組織し、選定した課題の調査・研究を実施し、その結果を報告書等にまとめ、情報の提供を行っています。                    テーマ一覧                    突然死の予防                    熱中症の予防                    頭頚部外傷の事故防止                    歯・口の事故防止                    眼の事故防止                    水泳指導中の事故防止                    固定遊具の事故防止                    その他の体育活動中の事故防止                    その他の学校の管理下における事故防止                    突然死の予防                    スポーツ事故防止ハンドブック                    スポーツ事故対応ハンドブック
  JSCがこれまでに調査研究した、突然死の予防、頭頚部外傷の事故防止、眼の事故防止、固定遊具の事故防止、熱中症の予防、歯・口の事故防止、水泳指導中の事故防止、その他の資料を掲載しています。
 研修等の資料作り等に、ぜひご活用ください。 


〔福岡県の災害の状況〕  
  学校種ごとに、令和元年度の災害発生件数や医療費給付額を、グラフを用いて紹介しながら福岡県における災害の状況を説明し、学校における事故防止の重要性について理解を深めていただきました。
 福岡県の給付状況(令和元年度)                    令和元年度に災害共済給付を行った、福岡県内の小・中・高における災害の発生件数は49,967件、医療費給付金額は約7億1千9百万円                    小学校  災害発生件数21,619件、医療費給付額103,120,806円                    中学校  災害発生件数16,380件、医療費給付額232,263,212円                    高等学校 災害発生件数11,968件、医療費給付額383,887,610円                    直筋5年間(平成27年度~令和元年度)の学校種別(小・中・高)ごとの発生件数推移の折れ線グラフ


〔体育活動中における骨折事故の傾向等〕  
 続いて、骨折事故防止パンフレット「なくそう!骨折事故」の概要を説明しました。
 このパンフレットは、令和2年度に調査研究報告書としてまとめた「体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策」を、学校現場で更に事故防止に活用いただけるよう、令和3年度に8ページにまとめたものです。
骨折事故防止パンフレット「なくそう!骨折事故」 
骨折事故防止パンフレット
「なくそう!骨折事故」
 

 講義では、小学校と中学校・高等学校等で、体育授業中、運動部活動中に骨折事故が最も多く発生している種目について、事故の傾向等を説明しました。
  小学校では、体育授業中に「跳箱運動」、中学校・高等学校等では体育授業・運動部活動ともに「バスケットボール」で骨折事故が最も多く起こっており、それぞれの種目における骨折事故の傾向や骨折予防のポイントを説明しました。

種目別に見る「骨折事故の傾向」と「骨折予防のポイント」
小学校:跳箱運動
 種目別に見る「骨折事故の傾向」と「骨折予防のポイント」                    小学校:跳箱運動                    骨折事故の傾向(小学校)                    手・手指部で多く、前腕部は重症化しやすい。手が滑った、跳箱から落下した、床に体を強打した、跳箱の上に手をついた際に、手首の上にお尻が乗ってしまった時に起きやすい。                    骨折予防のポイント                    主なけがの原因                    ・跳箱の上で手が滑る                    ・跳箱から落下し、手指部、前腕部等を床に強打する                    ・跳箱から落下し、自分の手の上に乗る                    ・跳箱の上に着手した際に手首の上にお尻が乗る                    正しく手をつく動作の習得                     跳箱の奥側に手をつく練習、手をついたときに手で身体を支えて上体を起こす練習をする。跳箱を使った練習以外に、両方の手足を使って前に進むカメさん歩き、トカゲ歩き、手押し車等両方の手のひらでしっかり手をつく動作を身に付けさせる。                    個々の能力に合わせた個別的、段階的な指導                     高い段数や難しい跳び方ができることではなく、跳箱の一連の動作が適切にできることを目標に、個々の動作の習熟度を確認しながら、段階的に指導する。また、段数選択にあたっては身長を考慮し、跳箱の両サイドにはマットを敷く等活動場所の工夫も行う。


〔DVDの上映〕
最後に、DVD『スポーツ活動中の歯・口のけが防止と応急処置』を上映しました。 歯・口のけがは、中学生・高校生の体育活動中に多く発生しています。けがをしないためにできることと、けがをした時の応急処置についてわかりやすく説明しています。
 映像資料(DVD)『スポーツ活動中の歯・口のけが防止と応急処置』の4つの映像

◆講義後の参加者の意見

・講義を聞くまでは、事故防止のための各種資料自体を知らなかったが、今回の講義を聞いて、来年から活用していきたいと思います。
・短い時間でも概要が分かるようなハンドブックやDVDがあれば良いと思います。
・カバンのポケットに入れやすいサイズのハンドブックを活用したいと思います。 などの意見をいただき、講義の内容については、分かりやすかったとの評価もいただきました。

◆今後に向けて

 梶原先生からは、「この講義は、今後、学生たちが、養護教諭として学校で災害共済給付の事務に関わるに当たって、制度を知ることが出来る貴重な機会と思っています。また、学生たちがJSCの職員と顔を合わせることで、学校で困ったことがあった時に、問い合わせがしやすくなるのでは、とも考えて、毎年お願いしているところです。」とお話しいただきました。   
 講義の中でも、「困ったことがあったら、JSC福岡支所まで連絡するように。」と案内していただきました。   
 今後もこのような取組を通じて、学校における事故防止のための取組を支援するために、地域の大学・関係機関と連携を図っていきたいと思います。   
 今回の講義にご協力いただきました梶原先生はじめ、聴講いただいた学生の皆さん、ありがとうございました。

◆お願い

  JSCが提供している事故防止情報を、大学での講義や教職員向けの研修会等で、ご紹介・ご提供することが出来ますので、是非、担当地域事務所にご一報ください。お待ちしております。

 

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