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学校現場での取組(事故防止対策) 広島第75号(2021.08)

庄原市立庄原小学校の取組について

独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)では、学校安全に対する取組に活用できる教材や資料を学校安全Web等で提供しています。
今回、広島県の庄原(しょうばら)市立庄原小学校(以下「庄原小学校」)からの依頼で、「突然死の防止」に関する資料を中心に、映像資料(DVD)やスポーツ事故防止ハンドブック等のスポーツ事故防止資料を提供しました。また、昨年も庄原小学校へ「眼の外傷の防止」に関する資料を提供しています。
それらを利用して行われた職員研修の様子や、取組について保健主事の大山養護教諭から報告を頂いたのでご紹介します。

1.職員研修について

(1) 研修の概要

本校では「学校安全計画」に危機管理研修を位置づけ、年間を通して定期的に研修を実施することにより、職員の危機管理意識の向上に努めています。
庄原小学校「学校安全計画」抜粋
庄原小学校「学校安全計画」抜粋

(2) 研修の対象者

本校に在籍する職員全員としています。

(3) 研修開催の理由

本校は347人の中規模校ですが、健康課題を抱えている児童が多く在籍しており、教職員の救急対応に係る共通認識は必須です。また、平成27年度から平成30年度まで、けがによるJSCへの申請は減少傾向だったものの、令和元年度より申請が増加傾向にあり、学校事故未然防止のため、研修を実施しました。
庄原小学校の災害発生件数の推移(H26~R2)
災害発生件数の推移(H26~R2)

(4) 開催時期

危機管理研修は、学期に一回以上実施しています。JSCの資料を使用した研修は、一学期に実施しています。

2.学校で行っている学校安全・事故防止に関する取組

本校では新年度、始業前に「始業前確認事項」とし危機管理研修を実施しています。
その時の資料としてJSCの「スポーツ事故対応ハンドブック(フローチャート編)」を活用しています。
危機管理研修資料のスライドの一部
タイトル:危機管理研修「始業前確認事項について~児童の健康・食物アレルギー等~」
タイトル:危機管理研修「始業前確認事項について~児童の健康・食物アレルギー等~」
眼のけがについて、災害発生時の対応フロー
眼のけがについて、災害発生時時の対応フロー
頭部打撲について、災害発生時の対応フロー
頭部打撲について、災害発生時の対応フロー
てんかん発作時に注意すること
てんかん発作時に注意すること
食物アレルギーの症状:皮膚の症状
食物アレルギーの症状:皮膚の症状
児童への投薬~学校において医療用医薬品を使用する場合について~
児童への投薬~学校において医療用医薬品を使用する場合について~
また、水泳学習前の指導において、教材カード「プールでは5,6年生のけが多発中!/こんなけがが多い!~高学年編~」(令和元年度)および「楽しいプールのために!みんなで気を付けよう(令和2年度)」を使用しました。
先生が、教材カード「楽しいプールのためにみんなで気をつけよう」を使用して児童に説明をしている様子
先生が、教材カード「楽しいプールのためにみんなで気をつけよう」を使用して児童に説明をしている様子
児童が、教材カード「プールでは5,6年生のけが多発中!/こんなけがが多い高学年編」を見ながら先生の説明を聞いている様子1
児童が、教材カード「プールでは5,6年生のけが多発中!/こんなけがが多い高学年編」を見ながら先生の説明を聞いている様子2
児童が、教材カード「プールでは5,6年生のけが多発中!/こんなけがが多い高学年編」を見ながら先生の説明を聞いている様子

3.研修資料活用の経緯

以前より、さまざまな研修において、JSCの資料を拝見していたため、活用させていただいていました。昨年度より新型コロナウイルス感染症のため外部講師の招聘が難しくなり、JSC広島支所に相談させていただき、講義形式の研修を行いました。

4.研修の様子

「スポーツ事故防止ハンドブック」を使いながら、研修を行っている様子。
「スポーツ事故防止ハンドブック」を使いながら、研修を行っている様子。
JSCが作成された資料を基にプレゼンを行いながら、本校のAEDの使い方を確認しました。
JSCが作成された資料を基にプレゼンを行いながら、本校のAEDの使い方を確認しました。
講義後、映像資料(DVD)「その時あなたは~突然死を防ぐために~」を視聴しました。
講義後、映像資料(DVD)「その時あなたは~突然死を防ぐために~」を視聴しました。

5.研修後の取組の変化

毎年、危機管理研修を実施することにより、全教職員が学校安全に対して、高い意識をもって職務に当たっています。事故防止、事故対応の場面において、一人一人が強い責任感をもち、行動することで、事故後の対応がスムーズになりました。昨年度実施した「熱中症研修」後には、体育科の授業において児童の健康観察、授業開始前のWBGTを丁寧に確認する職員が増えました。また、「眼のけが」研修後は、児童が眼を負傷した後の経過観察や、保護者連絡等、対応の共通認識ができています。
昨年度の研修の振りかえり(先生方の感想)

〇休憩時間の事故発生が50%以上という現状を改めて見て、教職員がしっかりと注意喚起を行っていくべきだと改めて感じました。休憩に入る前に声掛けを行い、一人一人が安全を意識できるようにしていきたいと思いました。児童の“これから”を守るためにも、事故防止に努めていきたいです。
〇学級の中でも事故が増えているので、事故を未然に防ぐために危険を予測する、回避する指導の重要性を学ぶことができました。学校のきまりや学級でのルールを、もう一度児童と一緒に確認し、安全に安心して学校生活が送れるように声掛けを行っていきたいと思います。
〇受傷の部位は全国も庄原小も割合の傾向が同じということが納得です。具体的事例をあげて の研修だったので、実際の生活を想像することができました。日ごろから児童に「○△したらどうなるか」や「ルールはなぜ大切か」を考えさせたり、環境の整備につとめたりすることが必要だと思いました。
〇眼のけがは、以前学校での事故で対応したことがあります。児童が安全に過ごせる環境づくりには、特に力を入れて取り組まなければならないと、その事故の時に感じました。眼だけでなく、未然防止の指導を充実させ、学校での事故を減らしていきたいと思います。
〇眼の事故は本校でも毎年起こっており、改めて未然防止のために意識できることは全て意識していくべきであると感じました。まずは、組織として校内のルールの徹底を図ること、そして児童自身にも事故防止に努めようとする意識を高めるよう指導すること等を行っていきたい。
今年度実施した「突然死」の研修では、研修前までは定期健康診断で所見があった児童の受診後の結果を確認する程度でしたが、研修後は、「保護者と話をしていかないといけない。」「もっとよく子供を見ていかないといけない。」という声が聞かれました。研修を企画した私自身も改めて、再度、児童の健康状態の確認と、資料の整理、担任連携の見直しを行いました。
今年度の研修の振りかえり(先生方の感想)

〇日々の中で、児童の異常を見逃さないように、意識を高めておくことが必要であると感じた。個人、組織として、児童を守ることができるように研修を行っていきたい。
〇毎年行っていただいている研修ですが、受ける度に改めて意識していくことができます。大切な子供達の命を預かっているので、危機意識を高めて、瞬時に判断できるようにしていきたいです。明暗を分けるものは、とにかく心肺蘇生を行い、続けることであると分かりました。
〇学校現場でAEDを使う場面を身近に感じることのできる映像でした。使った経験がないだけで、対応が遅れてしまうこともあるので、普段からできる限りの知識を身につけて準備しておこうと思いました。

6.今後に向けて

毎年、健康課題を抱えている児童は変わっていきます。これからも、本校のけがの傾向や児童の実態をもとに研修を行い、職員の危機管理意識の向上を図っていきたいと思います。今後は、本校でも多く発生している「腹部の打撲」、「眼の異物」の事故防止事例を取り上げていただけると幸いです。
庄原小学校の取組の報告をご紹介させていただきました。
詳細な報告書を作成いただきありがとうございました。
庄原小学校では、定期的に研修を行うことで職員の危機管理意識の向上を図り、児童が安心して学校生活を送れるように、学校全体で積極的に取組をされていました。
他の学校の先生方も参考になるところが多かったのではないでしょうか。
JSCでは今後も、報告いただいた感想や取組を参考に、危険の予測、けがの防止につなげられるよう、事故の傾向や過去事例等の情報の発信に努めて参ります。

■JSCが提供した事故防止の資料

スポーツ事故防止ハンドブック/スポーツ事故対応ハンドブック
スポーツ事故防止ハンドブック/スポーツ事故対応ハンドブック
映像資料 突然死、頭頚部のけが防止
映像資料 突然死、頭頚部のけが防止
映像資料 眼部のけが防止
映像資料 眼部のけが防止

 

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