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学校現場での取組(事故防止対策) 福岡第45号(2021.06)

「部活動顧問者研修会」及び「職員研修」における事故防止情報の活用事例
 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)では、学校での事故防止に活用できる資料を作成し学校安全Webに掲載しています。今回は佐賀県の基山町にある基山町立基山中学校(以下「基山中」)において行われたJSC作成の資料(映像資料(DVD)スポーツ事故防止ハンドブック(解説編)、スポーツ事故対応ハンドブック(フローチャート編))を活用した研修会についてご紹介します。

学校紹介

 基山中は、終戦後間もない昭和22年の開校以来、今年で75年目となる伝統ある学校です。今年は1年生4クラス、2年生4クラス、3年生4クラス、特別支援学級4クラスの計16クラス、生徒総数は417名です。生徒たちは、国の特別遺跡である基肄(きい)城を有する基山を仰ぎ、清流流れる豊かな自然に囲まれた環境の中、元気に明るく日々過ごしています。
 基山中の校舎画像、学校教育目標「きたえやりぬきまなびあう」~自律と共同の学校づくりを通して~
 (基山中ホームページより)

今回の研修会開催のきっかけは?

 体育主任の中島教諭に伺いました。
 例年職員研修は、夏休みに行っていますが、熱中症対策などから、体育大会が9月から5月に時期を変更して行うこととなり、感染症を含め怪我の応急手当等について年度初めに研修をしたほうが良いということで実施しました。年度初めは不慣れな1年生が部活動に参加するため、怪我につながる場面が多く見られることや、3年生は最後の日本中学校体育連盟が主催する大会に向けて一生懸命取り組むことから、年度初めのこの時期に怪我が増えているようにも感じています。部活動での怪我は1学期が最も多いと思います。

研修会の内容-「応急手当の意義」と「コロナ禍の体育大会」-

 始業式を翌日に控えた令和3年4月5日に、基山中にて2つの研修会が行われました。
①令和3年度部活動顧問者研修会~応急手当とその意義について~
②令和3年度職員研修~コロナ禍の体育大会にむけて~

 〔①令和3年度部活動顧問者研修会~応急手当とその意義について~〕
 部活動顧問者研修会においては、応急手当とその意義について、中島教諭より説明がありました。以下の資料を使って質疑応答形式により、1つ1つの設問について、参加の先生方と対話しながら、回答を確認して進められました。

令和3年度部活動顧問者研修会。応急手当とその意義について。応急手当とは 救命の連鎖、心停止の予防、早期認識と通報、1次救命処置AED、2次救命処置 集中治療。第1問けが人や病人が出た場合,その場に居合わせた人は、周囲の状況と傷病者の状態を(観察)し、適切な手当や(通報)をする必要がある。第2問適切な手当が行われれば,痛みや不安を和らげたり、けがや病気の(悪化)を防いだり、生命を救ったりすることができる。第3問けが人や病人を発見した場合は、まず、安全な場所かどうか十分に応急手当が行える場所かなど(周囲)の状況の確認をする。第4問傷病者に近づけたら、(反応)があるかどうかを確認し、反応がなければ助けを求め、通報をし(心肺蘇生)を行う。 第5問心肺蘇生では、まず( 胸骨圧迫 )を行う。近くに( AED )がある場合は,それを用いた手当を行う。第6問傷病者に近づけ,反応があれば,(止血)などの応急手当を行います。第7問腫れや内出血が強く、動かさないときも痛みが強い。第8問腫れや内出血がある。第9問患部に外見上の変形がある。関節を動かすのが困難になる。

 その後、JSCが作成した映像資料(DVD)「体育活動による頭部・頚部の外傷~発生時の対応~」を視聴しました。            
 映像資料(DVD)「体育活動による頭部・頚部の外傷~発生時の対応~」の4つの映像  映像資料(DVD)「体育活動による頭部・頚部の外傷~発生時の対応~」を視聴している参加者の様子

 最後に、中島教諭から「スポーツ事故防止ハンドブック」「スポーツ事故対応ハンドブック」を紹介していただき、事故防止のポイントがまとめられているので参考にしてほしい、特に怪我が増える4月、5月は「スポーツ事故対応ハンドブック」を携帯し、事故発生に備え対応してほしいと資料の活用に関してのお話をされました。            

スポーツ事故防止ハンドブックの表紙画像(左) スポーツ事故対応ハンドブックの表紙画像(右) スポーツ事故防止ハンドブック、スポーツ事故対応ハンドブックを紹介している中島教諭

★ぜひご活用ください!(1)
映像資料(DVD)「体育活動による頭部・頚部の外傷~発生時の対応~」
 頭頚部外傷の発生メカニズムをアニメーションで解説し、頭頚部外傷発生時の対応をフローチャートに基づいて紹介しています。また、脳震盪の診断の方法や「教師のための頭頚部外傷の10か条」を収録しています。

「スポーツ事故防止ハンドブック」「スポーツ事故対応ハンドブック」
(首から下げたり、小さい救急セットに入れて携行もしやすくなりました!)
 平成26年度に作成したスポーツ事故防止ハンドブックを、スポーツ事故防止のポイントをまとめた「スポーツ事故防止ハンドブック」と、事故発生時の対応をフローチャートにまとめた「スポーツ事故対応ハンドブック」の2冊に分け、心停止・頭頚部外傷・熱中症・食物依存性運動誘発アナフィラキシー・歯・口の外傷・眼の外傷の項目別に、最新データと各専門家の知見を盛り込み、改訂しました。


 〔②令和3年度職員研修~コロナ禍の体育大会にむけて~〕
 令和3年度職員研修では、コロナ禍の体育大会に向けて「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント等について中島教諭より説明がありました。予防対策の徹底により、学校の管理下における死亡事故は減っている、重症化をさせないために熱中症予防に取り組んでほしいとのお話がありました。

   日頃の健康管理について。「新しい生活様式」では、毎朝など、定時の体温測定、健康チェックをお願いしています。これらは、熱中症予防にも有効です。平熱を知ってことで、発熱に早く気づくこともできます。日ごろからご自身の身体を知り、健康管理を充実させてください。また、体調が悪いと感じた時は、無理せず自宅で静養するようにしましょう。熱中症を予防するためには?熱中症の症状とは?熱中症の疑いがあれば?

 その後、JSCが作成した映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」を視聴しました。 そして、WBGT(湿球黒球温度)については、JSC作成のパンフレット「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」を使って、参加者に対して、内容を確認してほしい旨のお話をされました。

           
映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」の4つの映像 映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」を視聴している参加者の様子 
 パンフレット「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」の表紙  

★ぜひご活用ください!(2) 
映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」
 学校の管理下における熱中症死亡事故は、ほとんどが体育・スポーツ活動によるもので、それほど高くない気温(25~30℃)でも湿度が高い場合に発生しています。「熱中症発生のメカニズム」、「発生してしまった場合の処置の留意点」、「熱中症予防のための5つの原則」、「学校や競技団体が実施している取組事例」等について、分かりやすく解説しています。暑くなる前に、研修等で御活用ください。

研修に参加された先生方のDVD視聴後の感想

○怪我や熱中症などは気を付けていても発生してしまう可能性があるので、その後の対応をみんなが理解しておくことが重症化につながらないための大事なことだと思いました。
 また、誤った対応をするとかえって逆効果になってしまうので、適切な対処を知っておくことが大切だと思いました。

○今回、部活動指導者講習会として、研修を受け、日頃の部活動指導を行うにあたり、大切にすべきことや意識すべきことなど多くのことを知ることができました。特に、熱中症や頭頚部外傷は、屋外の部活動はもちろん、屋内の部活動でも起こりうることであるため、我々指導する立場の人間がいつどのような状況でどのような処置をしなければならないかをしっかりと認識しておくべきであると思います。
 DVD視聴を通じて、指導者が落ち着いて、周りにいる生徒からの協力を仰ぐことが大切であることも分かりました。措置を急ぐことも大切であるし、冷静な判断をするためにも、常に周りに目を配ることも大切だなと感じました。

○研修を終えて、改めて熱中症の怖さ、応急処置の重要性を再確認することができました。また、研修の中には私自身が把握できていない部分もあり、今学ぶことができてよかったと感じています。少しずつ気温が上がってきているので、今回学んだことを活かし、万が一に備えて学校生活や部活動で対処していきたいと考えています。

今回の研修や日ごろの学校安全についての取組についてお話を伺いました。(中島教諭)

Q.研修は年に何回くらいされていますか。
A.食に関する研修(アレルギー、エピペン対応など)は4月に行い、夏には、熱中症や怪我について職員研修を行っています。

Q.事故対応において、学校で気を付けていることを教えてください。
A.週の初めに怪我が多く、部活動の終了間際に怪我をして、帰宅後に痛みが強まり翌日保健室に行くということもあります。そういった場合には必ず保健室から連絡が入るので、保健室との連携をしっかりとりながら対応するようにしています。

Q.事故発生の傾向や事故防止の取組について教えてください。
A.野球部の怪我(キャッチボールの際の目の怪我等)が多い傾向にあります。グラウンドで複数の部活動が同時に練習を行うので、場所をうまく使い分け、時間帯によって活動内容を工夫することで、事故が起きないような環境づくりを心掛けています。

Q.生徒の皆さんに対して授業以外に研修などはされていますか。
A.心肺蘇生(AED)の研修を1年時に行っています。消防署から講師に来てもらい、実技講習も含めて行いました。土日等、教職員が少なく事故対応が十分でないことも想定されるため、生徒も心肺蘇生の知識や技能を習得しておくことは大切だと考えています。

Q.研修後に何か効果はありましたか。
A.研修を通して、怪我や異変を感じた時に「冷やしていいですか」「怪我の対応はどうしたらよいですか」とすぐに教師に申し出る等、生徒自らが応急手当を行おうという自己管理意識が高まったように感じます。

Q.JSCの事故防止情報の資料についての感想、期待することがあれば教えてください。
A.頭頚部や歯、眼の事故は、間違った対応をすると取り返しがつかないこともあり、初期対応に保護者が納得されないこともあります。JSC発行の資料は、教師が適切な対応をするために知っておくべきことがしっかりまとめられており、このままでも十分かと思います。事故が起こりそうな場面を視覚的に見られる等、分かりやすいものがよいと思います。あとは、職員研修等において活用することにより、常日頃から事故防止、事故対応についての意識を持つことの重要性を教職員に伝えていくことが大切であると考えます。

取材を終えて

 始業式を前に、生徒が安心安全に学校生活を送れるよう、また、万が一の事態に備えて熱心に研修会に参加されている先生方の姿に接し、JSCが提供している「スポーツ事故防止ハンドブック」「スポーツ事故対応ハンドブック」、映像資料(DVD)「体育活動による頭部・頚部の外傷~発生時の対応~」「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」等の事故防止情報を、少しでも学校現場での事故防止の実践に役立つものにしていきたいと思いました。
 最後に、取材にご協力いただきました増田校長先生、中島教諭をはじめ基山中の先生方、お忙しい中ご対応くださいましてありがとうございました。

お願い

 JSCが提供している事故防止情報を今回ご紹介したように、職員向けの研修会等でご活用ください。
また、JSCが提供している事故防止情報をご活用いただいている先生方がいらっしゃいましたら、学校安全Webで共有したいと考えておりますので、是非、担当地域事務所にご一報ください。お待ちしております。


 

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