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名古屋☆通信 第108号(2016.11)


第108号 事故再発防止事例
-学校の管理下における頭頚部外傷について- 

           
 災害により頭頚部を損傷した場合、身体に重篤な障害を残し生活能力を喪失、若しくは、不幸にも死亡に至ってしまうケースが少なくありません。
 今回の名古屋☆通信では、学校の管理下で発生した頭頚部の外傷をテーマとし、名古屋事務所管内での災害共済給付によって得られた事故情報から、頭頚部外傷の傾向及び災害発生事例と学校の再発防止の対応例をまとめました。 
 
 また、8月1日に開催された石川県養護教育研究会主催の「平成28年度養護教員校種別研修会」において、私どもから当該情報を紹介させていただきました。
 当該研修会に参加された養護教諭からは「災害事例により災害の発生状況や管理体制の改善点等、紹介していただいたことを現場に還元していきたい。」、「教師のための頭頚部外傷対応の10か条は養護教諭だけでなく、ほかの教職員にも知ってもらいたい。学校に戻って伝えたい。」などの感想があり、ホームページのみならず、研修会及び説明会等で学校現場等に統計データや災害事例を含む事故再発防止に関する情報提供が重要であることを再認識することができました。
 

1 災害の現状(頭頚部外傷の傾向) 

 平成26年度に名古屋事務所で給付を行った、小学校、中学校及び高等学校等(高等専門学校を含む)における災害発生件数152,508件の内、体育活動中に発生した頭頚部外傷5,023件を抽出しグラフ化しました。
 
(1)学校種別(小学校、中学校及び高等学校等)の体育活動に係る負傷部位別(頭部及び頚部の内訳)の災害発生件数 
 頭部及び頚部の外傷を比べた場合、全ての学校種で頭部外傷が頚部外傷を上回っていますが、中学校及び高等学校等においては、頭部外傷が頚部外傷を大きく上回る傾向が出ています。
 
(2)学校種別に係る場合(体育(保健体育)、体育的部活動、体育的行事及び体育的クラブ活動)別の災害発生率 
 小学校では、「体育」での災害が約86%と最も多く、中学校では、「体育的部活動」が54%と半数を超え、高等学校等では、「体育的部活動」が約72%を占めていることが確認できます。 
 
 

2 災害発生事例及び学校の再発防止の対応例 

 名古屋事務所が災害実地調査を行った災害発生事例の中から、頭頚部外傷の災害発生事例及び再発防止対応例をご紹介します。 
 
【事例1】                                                                                                            
負傷部位 学年・男女 発生月 発生時刻
 頭部 高校2年(男子) 2月 午前11時15分
場 所 場 合 競技種目
運動場 保健体育 ソフトボール
 【災害発生状況】
 体育のソフトボールにおいて、本生徒がゴロを打ち、一塁に向かって全力疾走した。一塁ベース上で一塁手ともつれるような形で激突し、右後方に飛ばされ、倒れる際に後頭部を強打した。
 【応急手当の状況など】
 アイスノンで頭部を冷やし、嘔吐物をタオルで拭いた。すぐに救急車を要請し、医療機関へ搬送した。
 災害発生時の学校の管理体制
 ・ヘルメットの着用はなかった。
 ・バットスイングする場所及び試合中の待機場所について注意するよう指導していた。
 ・授業開始前に生徒の体調チェックを行っていた。
 ・毎日朝礼を実施して安全に関する情報共有を図っていた。
 災害後の安全指導・改善事項
 ・災害発生時の教諭間の連携方法について再確認した。
 ・ソフトボールなど対人プレーが少ない競技でも接触プレーに関する注意喚起を行うようになった。
 ・極力2名体制となるよう手の空いている教諭はグラウンドに居てもらうように した。
 ・部活動でも用具の正しい使い方を改めて指導した。
 ・グラウンド以外でも器具の配置などトレーニング場所の安全性を高めた。
 ・ソフトボールに係る用具や保護具(ヘルメットやプロテクター等)を購入・整備した。

【事例2】                  
負傷部位 学年・男女 発生月 発生時刻
 頚部 中学校3年(男子) 4月 午後0時15分
場 所 場 合 競技種目
学校外・運動場 体育的部活動中 ラグビー
 【災害発生状況】
 試合中、本生徒が頭を下げた状態でタックルをしたところ、相手選手の膝が左側頭部に入り、仰向けに倒れた。
 【応急手当の状況など】
 レフリー、マッチドクター、メディカルサポーター、監督が本生徒に近寄り、マッチドクターが中心になって、名前を呼びかける等の対応を行った。呼びかけを続けると約1分後に意識が戻った。頭部をカラーで固定し担架で医務室に搬送した。医師の指示で救急車を要請した。
 災害発生時の学校の管理体制
 ・タックル時の負傷が多いことから
  ① 頭を下げた状態でタックルをしない。
  ② 逆ヘッドのタックルをしない。
  ③ 肩を固め、相手を両手で捕まえるタックルをする。
  の3点を練習中から常に意識させていた。
 ・県ラグビー協会主催の安全推進講習会を部活動顧問が年2回受講し、その講習内容(タックルスキル等)を生徒へ伝達講習
  していた。
 ・毎年、全教員が地元消防署による救命講習を受講していた。
 ・設備について年1回業者点検を行い、スクラムマシーンの安全点検や備品の交換などを行っていた。
 災害後の安全指導・改善事項
 ・練習内容、方法を再検討し、首の筋力トレーニングを毎日のアップメニューに入れるなど、アップの時間及び内容を
  増やした。
 ・教員が不在の際は、タックル練習をしないようにした。
 ・ラグビー部専用の事故防止マニュアルを作成し、ラグビー部の生徒や保護者に配布することにした。
 ・体育のラグビーの授業については、タグラグビーに変更することにした。
 ・部活前の健康観察を徹底し、体調不良を感じたら無理せず、すぐに練習をやめる意識を持たせ、気兼ねなく体調の状況報告が
  できるような環境を整備した。
 ・用具の破損箇所を確認し、スクラムマシーンの修繕(ボルトの締め直し)を行った。


3 事故防止のポイント 

 ■教師のための頭頚部外傷対応の10か条
【体育活動における基本的注意事項】
 ① 児童生徒の発達段階や技能・体力の程度に応じて、指導計画や活動計画を定める。
 ② 体調が悪いときには、無理をしない、させない。
 ③ 健康観察を十分に行う。
 ④ 施設・設備・用具等について継続的・計画的に安全点検を行い、正しく使用する。

【頭頚部外傷を受けた(疑いのある)児童生徒に対する注意事項】
 ⑤ 意識障害は脳損傷の程度を示す重要な症状であり、意識状態を見極めて、対応することが重要である。※1 ※2 ※3
 ⑥ 頭部を打っていないからといって安心はできない。意識が回復したからといって安心はできない。※4 ※5
 ⑦ 頚髄・頚椎損傷が疑われた場合は動かさないで速やかに救急車を要請する。
 ⑧ 練習、試合への復帰は慎重に。※6
【その他、日頃からの心がけ】
 ⑨ 救急に対する体制を整備し、充実する。
 ⑩ 安全教育や組織活動を充実し教職員や生徒が事故の発生要因や発生メカニズムなどを正確に把握し、適切に対応できる
   ようにする。

           
  ※1 まったく応答がないときも、話し方や動作、表情が普段と違うときも、意識の障害である。
※2 意識障害が続く場合はもちろん、意識を一時失ったり、外傷前後の記憶がはっきりしない、頭痛、はきけ、嘔吐、
  めまい、手足のしびれや力が入らないなどの症状があれば、脳神経外科専門医の診察を受ける必要がある。
※3 頭の怪我は、時間が経つと症状が変化し、目を離しているうちに重症となることがある。外傷後、少なくとも24時間は
  観察し、患者を1人きりにしてはならない。
※4 脳の損傷は、頭が揺さぶられるだけで発生することがある。
※5 意識が回復したあと、出血などの重大な損傷が起きている場合もある。
※6 繰り返して頭部に衝撃を受けると、重大な脳損傷が起こることがある。スポーツへの復帰は慎重にし、必要に応じて
  脳神経外科専門医の判断を仰ぐ。 
 

 出典:「学校の管理下における体育活動中の事故の傾向と事故防止に関する調査研究」
             ―体育活動における頭頚部外傷の傾向と事故防止の留意点―調査研究報告書(平成25年3月)

 4 頭頚部の事故防止に関する資料

(1)刊行物
 『学校の管理下における体育活動中の事故の傾向と事故防止に関する調査研究―体育活動における頭頚部外傷の傾向と事故防止の留意点―調査研究報告書』(平成25年3月)

(2)教材カード
 ・スポーツ事故防止(柔道編(学校指導者向け))(平成27年特別号)
 ・プールでの飛び込み事故を防ぎましょう!(中学生・高校生向け)(平成28年6月号)

(3)スポーツ事故防止ハンドブック(平成27年3月)

(4)スポーツ庁委託事業 平成26年度DVD

(5)スポーツ庁委託事業 平成27年度成果報告書 
 
 

 

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