第3回 JAPAN SPORT NETWORK セミナー(岩手会場)

 平成27年11月20日(金)に、岩手会場では岩手県・岩手県教育委員会に共催として御協力いただき、セミナーを開催いたしました。詳細は以下のとおりです。

開催概要

日時 平成27年11月20(金)13:00~16:20 
場所 いわて県民情報交流センターaiina会議室501
テーマ  「スポーツを通じた健康増進」、「スポーツ・ツーリズム」
参加人数 54名

セミナー概要

開会挨拶 森岡 裕策(日本スポーツ振興センター 審議役)
講演 テーマ:「スポーツ庁設置とスポーツを通じた健康増進施策について」
講演者:関 伸夫氏(スポーツ庁健康スポーツ課 課長補佐)

講演
ディスカッション

テーマ:「スポーツ無関心層へのスポーツウエルネス浸透策の具体化
      ‐ポピュレーションアプローチの重要性‐」
講演者:久野 譜也氏(筑波大学体育系 教授)

JSC情報提供  テーマ:「海外におけるスポーツ無関心層への取組:豪州VicHealthの例」
発表者:本間 恵子(日本スポーツ振興センター情報・国際部)

テーマ:「JAPAN SPORT NETWORK 取組について」
発表者:神谷 和義(日本スポーツ振興センター経営戦略部)

テーマ:「JAPAN SPORT NETWORK活動支援自動販売機のご紹介」
発表者:岩切 達樹氏(サントリーコーポレートビジネス株式会社)

事例発表

テーマ:「『健康の駅よこて』の取組」
発表者:田代 久和氏(横手市健康福祉部健康推進課健康の駅係 副主幹兼係長)   
テーマ:「スポーツ、健康づくり、ツーリズムを通じたスポーツと地域の活性化」
発表者:伊藤 智彦氏(上山市教育委員会スポーツ振興課 主査) 


<講演> 関 伸夫氏 (スポーツ庁健康スポーツ課 課長補佐)

 東京会場と同じく、スポーツ基本法・スポーツ基本計画、スポーツ庁の創設とその概要及びスポーツを通じた健康増進施策についてご講演いただきました。平成22年に「スポーツ立国戦略」が策定されて以降の4~5年はスポーツ界にとって非常に重要な時期であり、スポーツ界の様々な出来事の基盤が整備されたというご説明をいただきました。
 また、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等の大会後に何が残せるのかということを意識しながら施策を進めていく必要性についてお話いただきました。
 
 スポーツ庁 関氏

<講演・ディスカッション> 久野 譜也氏(筑波大学 教授)

 
 冒頭で、日本が今後直面することになる2025年問題(日本の人口を多く占める団塊の世代が75歳以上になること)について触れ、その時に起こりうる社会的課題を紙に書き出すワークが実施されました。自身で課題を書き出すことによって、改めて各地方自治体で取り組むべき事を認識する機会となったようです。
 スポーツ庁が発足し、スポーツを通じて目指す社会の姿として、健康の保持増進が明確になったことは非常に良い機会であり、スポーツ・健康に関わる政策を考える場合には、①スポーツ関係部局だけでなく保健福祉部局と連携すること、②一部の人を対象にした事業ではなくポピュレーションアプローチ(大規模な人へのアプローチ)を意識すること、③スポーツに参加しない人をどのように参加させるのかという視点を持つことの3点を強調されました。また、スポーツを「する」「観る」「支える」ことにより、健康長寿の柱の1つである社会参加を可能にするので、今後は年齢に応じたスポーツとの関わり方を地域でどのように作っていくかが重要であるとご説明いただきました。また、健康づくり無関心層に対するスポーツ参加へのきっかけ作りには、魅力的なインセンティブの提供・口コミを始めとする幅広い広報・ヘルスリテラシー(健康に関する知識・理解)の向上に関する施策の重要性についてお話いただきました。
 高齢化を始めとした日本がこれから解決しなければいけない課題に対して、「「スポーツの力」で状況を変えるという思いを強く持っていただきたい」という久野先生の力強いお言葉に、参加者からも「今後、自分たちがやるべき事を気づかされました。」という感想をいただき、大変ご好評でした。
 
     筑波大学 久野氏


<JSC情報提供・JAPAN SPORT NETWORK事業紹介>

 
 情報・国際部の本間より「海外におけるスポーツ無関心層への取組」について豪州VicHealthを例に取組内容をご紹介させていただきました。また、経営戦略部の千代より「JAPAN SPORT NETWORKの取組」についてご紹介させていただきました。

<事例発表①> 横手市「『健康の駅よこて』の取組」

 
 横手市健康福祉部健康推進課健康の駅係の田代氏より、「健康の駅よこて」の取組について、事業紹介のVTRを交えながらお話いただきました。「健康の駅よこて」は、健康をテーマにした交流拠点として、子どもから高齢者まで、すべての年齢層における健康づくりを支援することを目的に平成15年から始まり、3つの規模別の駅が市民の継続的な健康づくりをサポートしています。
 大規模駅では、保健師や運動指導員等の専門家が常駐し、運動機器等を用いて個別プログラムにより安全で効果的な運動をすることができ、中・小規模駅では、大規模駅から派遣された専門家と健康の駅サポーターが、市民に対して運動をきっかけとした健康全般にわたる保健指導を行う仕組みとなっています。また、中・小規模の健康の駅では、横手市が独自に考案した身体に負担の少ない「健康の駅よこて らくらく体操」等を中心に活動しており、参加者に好評を得ているとご紹介いただきました。
 口コミにより参加者は増加しており、今後は費用対効果の検証が求められているとのことです。市民は目的や交通手段により3つの健康の駅を自由に利用できる仕組みになっており、運動に参加しやすい環境づくりは他の自治体にとって大変参考となるものでした
       横手市 田代氏

<事例発表②> 上山市「スポーツ、健康づくり、ツーリズムを通じたスポーツと地域の活性化」

 

 上山市教育委員会の伊藤氏より、「スポーツと地域の活性化」に向けた取組についてご紹介いただきました。

Ⅰ.「かみのやまツール・ド・ラ・フランス大会」(自転車)
 「かみのやま温泉」と上山市の特産品である「ラ・フランス」を全国に発信するための取組で、参加者は、まちなかサイクリング・前夜祭・本大会のイベントにより、上山の自然・歴史や文化・食に触れることができます。参加者と地元の人との交流や市内経済の活性化を促し、サイクリングを通じた健康増進を目的としています。本大会では市民ボランティアが大会を支える大きな力となっており、口コミにより参加者は毎年増加し、平成27年は1,000名を超える人気の大会であったとご紹介いただきました。

Ⅱ.「蔵王坊平アスリートヴィレッジ」(高地トレーニング)
 日本の国際競技力の向上に貢献するため、観光を切り口としたスポーツ合宿誘致の取組で、山形県と上山市および民間が一体となり、標高1,000mに位置する蔵王高原坊平を一流のアスリート向けをはじめとするスポーツ関連トレーニングのメッカに向けた整備をしています。この事業を通じて競技交流、世代交流、知識交流、国際交流が始まっているとご説明いただきました。スポーツ合宿に訪れたトップアスリートから刺激を受け、地元のジュニアアスリートの成績が向上するなど、多大な影響を受けているとのことでした。

Ⅲ.「上山型温泉クアオルト事業」(温泉クアオルト)
 クアオルトとはドイツ語で健康保養地を意味しており、上山の豊富な地域資源(温泉)を活かして、市民の健康増進と交流人口の拡大による地域活性化を目指す取組です。クアオルト健康ウォーキングとして、様々なプログラムを提供することにより参加者は毎年増えており、今後は新規参加者の裾野を拡大する工夫が必要になっているとのご説明をいただきました。

 地域資源をスポーツと結びつけて何かできないかと模索し、事業を展開する上山市の取組は、他の地方自治体にとって改めて地域資源の活用について考える機会となりました。

       上山市 伊藤氏

<全体の総括>

 スポーツ庁による国の施策と今後の方向性についてお話をいただき、久野教授から国の方針に基づき各地域で施策を展開する際に意識すべきことをご説明いただくことで、今後のスポーツ施策を考える上での指針となりました。横手市と上山市からはスポーツによる健康づくりと地域活性化についての具体的な取組をご紹介いただき、大変示唆に富む内容となりました。本セミナーにおける内容が各地方自治体の「スポーツによる健康増進」「スポーツ・ツーリズム」の施策に少しでもご参考となれば幸いです。

 

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