平成27年度女性競技種目戦略的強化プログラムの概要
Q.1 日本の女子飛込の現状を教えてください。
日本の女子飛込の現状は、ジュニア世代は世界トップクラスですが、オリンピックではいまだにメダルを獲得していません。その要因として、専用トレーニング施設が少ないために、専門的なトレーニング時間を確保しづらいことや、常駐できる専門性の高い指導者が少ないこと、そして、高水準の競争相手が少ないことなどが挙げられています。
Q.2 現在はどのような活動をしているのでしょうか?
ナショナルレベルのコーチと選手が在籍し、陸上でのトレーニングとプールでのトレーニングを効率よく組み合わせた多角的な練習を展開しているアメリカ、中国、オーストラリアの3か国に海外トレーニング拠点を設置し、モデルアスリートを派遣しています。派遣に際しては、社会人あるいは学生といったアスリートの活動状態を考慮し、それぞれのアスリートの競技レベルにあわせた派遣期間や派遣先を設定しています。
また、昨年度はアスリートに対する活動だけに特化してプログラムを行っていましたが、プログラムを展開していく中で、女性アスリートが選手としてのキャリアを終えた後に、飛込界に貢献できるような道が整っていないために、女性のスタッフが少ないことが、女性アスリートを強化する上での課題の一因であることを感じました。そこで今年度は、アスリートからコーチやスタッフへの移行を効率的に図れるモデルプログラムの検討を行うために、コーチ志望の女性トップアスリートをスタッフとして一緒に派遣することにしています。
Q.3 これまでにどのような成果がありましたか?
まず、トレーニング施設についてですが、海外トレーニング拠点には、日本にはない飛込専用の練習器具や設備があり、安全に短期間で高難度の技を習得することができました。例えば、着水時の衝撃を和らげる為にプールの底から気泡を出すバブルシステムがついている環境での練習や、飛込台に見立てた床から宙返りを練習する際、天井から体を吊り下げるロープをつけての練習などにより、恐怖心を与えないようにするとともに、体へのダメージも軽減することで効率的に多くの練習をこなすことができます。このような飛込の専用トレーニング施設で練習することの意義を感じています。
次にコーチについてですが、一番重要だと感じたことは、飛込の強豪国のコーチは、感覚的な指導や根性論的な指導ではなく、常にスポーツ科学に基づいた指導をしているという点です。アスリートが「できない」と思い込んでしまったり、思い切った挑戦ができなかったりという場面で、理路整然と科学的に改善すべき点や「できる」理由を説明し、根気強くやる気を引き出していました。このおかげで上達速度が格段にあがりました。そして、海外トレーニング拠点には、日本の女性アスリートがまだできない高難度な技を実施できるアスリートが存在します。間近でそうしたハイレベルなアスリートの練習を見ることにより、日本のアスリートも彼女たち自身の中でイメージが高まり、自分にもできそうという自信が得られました。また、実際に演技を行っているアスリートからのアドバイスなどを聞くこともできたことも技の上達に役立ったと考えています。
専用トレーニング施設、専門的な指導者からのコーチング、高いレベルの競争相手とのトレーニング機会といった課題に対応した環境を整えることで、日本の女性アスリートらも、もっと上達することができるということが明確になった点が大きな成果となっています。
|