ホーム > 地域だより > 東京地域 > 第69回 誰にでも起こりうる熱中症 -その予防と救急処置についてー (栃木県)

第69回 誰にでも起こりうる熱中症 -その予防と救急処置について- ~栃木市教育委員会&栃木市立大平中学校(栃木県)~

     栃木県南部に位置する栃木市は2010年3月29日に大平町・藤岡町・都賀町、2011年10月1日に西方町の1市4町が合併し、誕生しました。中心地の栃木地域では、蔵造りの町並みが多く残っており「小江戸」として有名な観光都市です。南部には、2012年7月6日にラムサール条約に登録された、渡良瀬遊水地が広がり、北部は、米やいちご(とちおとめ)の生産が盛んです。また、取材先の大平中学校のある大平地域は、北関東最大規模の「大平ぶどう団地」として6月上旬から10月中旬ごろまでぶどう狩りで賑わっています。                            
栃木市地図  
人口 約14万7千人

  今年は例年以上に蒸し暑い日が早く訪れ、7月現在、熱中症で搬送された件数は昨年度に比べて増加傾向にあるようです。栃木市は夏場30度を超える日も多く、35度以上の猛暑日となる日もあります。

   今回、栃木市教育委員会の協力を得て、市内の公立小学校(27校)、中学校(13校)の熱中症予防対策を紹介するとともに、栃木市立大平中学校での具体的な予防対策・救急処置方法を紹介します。

 ◆ 熱中症の給付件数(平成23年度~平成25年度) 
                                            
※ 平成25年度7月10日現在、栃木県は「国・公・私」を含む

熱中症の給付件数(平成23~25年度)表 

    平成23年度は栃木市内の公立小中学校で28件の熱中症案件について給付を行いましたが、24年度は3件減少しました。「水分補給」、「タオル持参」、「職員・児童生徒・保護者への周知」、「教室等の環境管理」、「健康観察強化」、「保健だより」、「汗、運動、休憩、無理をしない等の生徒指導」の徹底をよりいっそう強化した結果と思われます。 

 
 熱中症予防対策まとめ 表
 

1(水筒持参):夏場に限らず1年中持参している学校もあります(冬場はインフルエンザ対策に効果的です)。 

2(扇風機):各普通教室に2台ずつ、特別教室(冷房のない教室)に1台ずつの設置となるよう教育委員会が配布しています。

3(熱中症対策飲料を常備):各学校の児童生徒数に応じて教育委員会が配布しています。

4(よしずの設置):渡良瀬遊水地産のヨシで作られており、栃木市役所・教育委員会の連名で各学校に3枚ずつ配布しています。

5(緑のカーテン、ミスト):近年、設置する学校が増加しています。

         
        緑のカーテン ミスト 
           緑のカーテン               ミスト
    栃木市教育委員会から各学校の熱中症予防対策を伺いました。その中で大平中学校はさらに独自の取組を行っていますので、ご紹介します。
  大平中学校で熱中症の症例はどれくらいありますか? 

     熱中症で保健室に来室する生徒は少なくなってきていますが、平成21年の運動会練習中に複数名の生徒が倒れ保健室に運ばれてきたことがあります。このときは、軽度の症状で安堵しました。生徒に話を聞くと、夏休み明けで体が暑さについていけず、また睡眠不足の状態で練習に参加していた生徒もいたようです。体力がある生徒でも熱中症を発症する可能性があるので、規則正しい生活を送ることが大切だと痛感しました。それ以降は試行錯誤をしながら大平中学校としての予防対策を考えています。

   具体的な予防対策とはどのようなものですか?

  前記のような「水筒持参」、「熱中症対策飲料の常備」、「緑のカーテン、ミストの設置」のほかにも、「運動会を5月に実施」、「保健室にゴザを常備」、「熱中症の対処と判断チャートの活用」、「冷水器、冷凍庫、製氷機の設置」などをおこなっています。

◆運動会を5月に実施しました! 
 
 9月の残暑の厳しさで運動会の練習中や運動会で具合が悪くなってしまうことを避けるため、今年度より運動会を5月に実施しました。生徒応援席にもテントを設置することや給水タイムを30分おきに設定するなど、熱中症予防に重点的に取り組みました。

  運動会1                      運動会生徒応援席にもテントを設置
              矢切の渡しの様子                             生徒応援席にもテント設置

◆ゴザの活用で、身体の熱を逃がします! 
 
  熱中症の生徒を処置するためのベッド(布団)では、体の熱が逃げにくいため、本校では「ゴザ」を用意しています。これは約4年前から実践しています。

             熱中症対策用ござ1                                熱中症対策用ござ2 

 ◆全職員が「熱中症の対処と判断チャート」を実践します!
 
  環境省、文部科学省、日本スポーツ振興センターの熱中症対策資料を参考に、本校独自の判断チャートを作成しました。
 学校における熱中症の災害は、一度の災害で多数の熱中症患者がでてしまう恐れがあり、養護教諭だけでなく全教職員が共通理解のもとで対応する必要があります。  また、長期休業中などの部活動においては養護教諭不在のため、各顧問の先生方が熱中症の判断・対応をしますので、熱中症についての職員研修を行ったり、校舎内に判断チャートを掲示したりして、いつでも実践できるようにしています。

   熱中症の対処と判断チャート         保健室内冷凍庫            冷凍庫内のアイスボトル
      クリックすると拡大します                保健室内冷凍庫にも  
               判断チャートを掲示    
    冷凍庫にはアイスボ
    トルを用意しています

◆昇降口に「冷水器」、保健室に「冷凍庫」、職員室に「製氷機」を設置しています!

 校舎内の水道の数が少ないこと、そして熱中症・インフルエンザ予防のために、生徒には1年中水筒持参を勧めています。
 生徒が水筒を持参しても授業時間内に飲みきってしまった場合、放課後の部活動での水分補給が課題となっていました。そのため、昇降口に「冷水器」を設置し、水筒の中身が空になったら、冷たい水を水筒に入れることができるようにしています。
 生徒が熱中症を発症した場合、一人当たりに使用する氷の数などが多いため従来の冷蔵庫(冷凍庫の部分が少なかった)では対応できず、職員室に製氷機、保健室に冷凍庫を設置しました。 学校の教育活動では、一度に多数の生徒が熱中症を発症する可能性が高いため、環境設備を事前に整えておく必要があります。
 

◆熱中症予防に向けて周知しています

 保健だよりの発行や、生徒の目に留まる掲示板に熱中症予防の情報を掲示しています。天候・気温・湿度等の影響によって発症することも多いのですが、生徒一人ひとりが規則正しい生活習慣を身につけて、予防することが大切です。現在は養護教諭主導の周知方法が主ですが、今後は生徒会保健室委員会の活動として、集会等で予防や対処法についての呼びかけをしたり、生徒たちがお互いに声をかけ合うように意識が高められたらと考えています。

               7月ほけんだより                        熱中症予防の掲示

~取材を終えて~ 

 取材をした日は天候が良く、とても暑い一日でした。熱中症は天候・気温・湿度等が影響しますが、生徒一人ひとりの健康管理によって防げる部分もあります。今回の取材で、睡眠不足により熱中症を発症したケースが多いと伺い、規則正しい生活習慣がとても大切だと実感しました。  

          中学校外観
    栃木市立大平中学校

  熱中症によって命の危険が迫る場合もあり、熱中症が疑われたときは速やかな救急処置が必要です。大平中学校では、全教職員が共通理解をもって、熱中症予防はもちろん救急処置の対応を確立しました。また、長期休業中には試合会場として校庭・校舎が利用されることから、他校の先生方が熱中症の救急処置をすることも考慮して「熱中症の対処と判断チャート」を校舎内にも掲示して活用していただけるようにしています。
  中学校では部活動も活発に実施されますので、運動中の災害には十分に留意して、健康で安全な学校生活を送ってほしいと願っています。

☆ 栃木市立大平中学校のホームページ☆
http://tochigi7.tcn.ed.jp/oohirachu/

☆日本スポーツ振興センター 教材カード『熱中症』☆
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/anzen_school//card/tabid/519/Default.aspx  

<平成25年8月20日掲載>

 

 

 

ページトップへ