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Web杜のたより 第38号(2014.12)

自分の命は自分で守る
-予告なし避難訓練の取組-
 
        
 山形市立出羽小学校 校舎風景写真学校に通う子どもは、学校にいる時間が多く、学校で被災する確率が高いと考えている方も多いのではないでしょうか。1年を通じて児童生徒が学校で過ごす時間というのはわずか2割程度だそうです。残りの8割は、家庭など学校外で過ごしています。
 
 今回の「Web杜のたより」では、学校で過ごす時間だけに留まらず、『自分の命は自分で守る』という意識を常に持ちながら、『いつでもどこでも自分で判断し行動できる力』を育てる防災教育に力を注いでいる山形市立出羽小学校(石塚 直樹校長 全校児童 335名)の「予告なし避難訓練」の取組を取材しました。 
 

まずはやってみよう!

 今回取材に伺った出羽小学校では、平成25年度にも、一度予告なしの避難訓練を実施したことがあったそうです。その際は授業中に行ったため、教師が児童と一緒にいる状況でした。平成26年度は、前回の訓練から一段階上のレベルで訓練を行うため、教師不在が予想される「休み時間」に実施することを決めたそうです。

 また、森谷教頭先生のお話では、「近年、山形県では東日本大震災や広島市の土砂災害のような大きな被害をもたらす災害が発生しておらず、教師や児童ともに災害に対する危機意識が薄れているのではないか」と危惧されていたそうです。
 災害の恐さを再認識し、災害が起きた際の対応について再確認して欲しいという思いもあり、「まずはやってみよう!」と今回の「予告なし避難訓練」実施に至ったそうです。   
      平成25年度の訓練の様子(授業中の教室)写真

避難訓練前の事前指導

 しかし、予告なしの避難訓練を行うといっても、突然緊急地震速報の音を聞いてパニックになる児童が出てくることが予想されました。そのため、速報音に慣れることを目的として、訓練とは別の日の給食時間中に実際の緊急地震速報の音源を校内放送にて流しました。実際、突然の速報音に驚いて泣いてしまう児童もいたそうです。

 また、実際の訓練は、休み時間に実施するため、速報音が鳴った際に児童がそれぞれ異なる場所に居ることも予想されました。各々が居る場所で、その場に合わせた避難行動がとれるよう、事前に各学級で教師が児童に対し、パネルや安全副読本等の資料を利用しながら地震発生時の行動等について学年に応じた指導を行ったそうです。
   地震時の訓練の仕方「お・か・し・も・ち」おさない、かけない(走らない)、しゃべらない、もどらない、ちかづかない
-事前指導の資料-
「校庭で地震が来たら」「トイレで地震が来たら」のポスター、「緊急地震速報って知ってる!?」(気象庁HPより)リーフレット等

休み時間に予告なし避難訓練

 そしてついに、平成26年9月9日の中休み時間、震度5弱の地震発生を想定した避難訓練が実施されました。午前10時30分、緊急地震速報の音とともに避難を促す校内放送が流れ、参加児童332名が一斉にグラウンドへの避難を開始したそうです。

 グラウンドにいた児童は、周りの様子がよく見渡せたため、周りの子の行動を見ながらグラウンドの中央に集まり、身を低くして頭を守るという行動がスムーズにできていました。一方、教室やトイレ内など、本人以外に人がいない状況にあった児童は、避難行動に迷ったり、戸惑ったりしたという様子も見受けられたようです。

 事前指導を十分に行っていたこともあり、訓練当日は大きな混乱もなく、避難を行うことができました。訓練後、児童からは「落ち着いてできた」という感想が多く聞かれたとのことです。

 また、訓練後の全体集会では、気象庁山形地方気象台の太田地震津波防災官から、携帯電話の速報受信音を児童に聞かせ、「どんな場所にいてもこの音が聞こえたら、迷わず今日の避難行動をとって自分の身を守ってください」との話があったそうです。


-訓練当日の様子-
 当日の訓練(校舎内、校庭)の様子の写真
事前指導のとおり、その場に合わせて行動し、揺れがおさまるのを待っています。

学校だより「はなふし」訓練実施の報告と家庭内でも防災意識を持つよう声掛け
 

自分の命は自分で守る

 災害発生時、緊急地震速報に限らず、テレビ・ラジオ・携帯電話などから得られる情報から必要な情報を選択し、避難行動に移すというのは大人でも容易なことではありません。森谷教頭先生に、「予期せぬ災害時の対応も含めて出羽小学校の児童には、どのような児童になってほしいか」伺いました。

    ◆判断力
     ・ いつどこにいても災害が発生した際に自分で判断し、行動できる児童
    ◆想像力
     ・ 平時でも災害や事故に対する危機意識を持ち、安全な行動がとれる児童
    ◆共感力
     ・ 東日本大震災等で被災された方の中には、現在も避難生活を余儀なく
      されている方もおり、災害等で被害にあった人の辛い気持ちを共感できる児童
 防災について、知識として「知る」というだけでなく、判断力・想像力・共感力などを総合的に活用し、「実際に災害が起きた際にも自分の命は自分で守り、さらに家庭や地域においても教え合い助け合いながら避難できるようになってほしい」というのが学校の願いとのことです。 
 
 出羽小学校がある出羽地区は山形市の北部に位置し、天童市に隣接する田園地区で、3世代同居の世帯が多い地域です。児童が防災について学び、それを家族に伝え、家庭で被災した際に活用できるようになれば、地域の防災にもつながっていくのではないかという学校側の思いもあったそうです。
児童が作った不審者進入禁止のポスター、交通安全の標語の写真
出羽小学校では、地震の他にも防災に関わる取り組みに力を入れています。

取材を終えて

 今回の避難訓練に参加した児童は、訓練時に限らず日頃からの災害に対する心構えや事前準備を行うことの重要性を確認するきっかけになったのではないでしょうか。

 学校に留まらず、家庭・地域と広がっていく防災教育は、地域の防災を考える上で理想の形ではないかと感じました。出羽小学校の子どもたちが学校を卒業し、社会に出てからも地域の防災に寄与し、活躍していくことを期待します。  

【参考】
平成17年~平成26年度に災害共済給付を行った山形県内の避難訓練中における災害(医療費・速報値)
                  
   被災学校種別  被災学年  性別     災害発生場所   負傷部位  
 1   小学校  1   女  体育館・屋内運動場   肘部 
 2   小学校  1   男  その他(教室外の非常口)  膝部
 3  小学校  2   男  教室   前額部
 4  小学校  3   男  階段   膝部
 5  小学校  3   女  教室  歯部
 6  小学校  5   男  階段  足・足指部
 7  小学校  6   女  廊下  足関節
 8  小学校  6   女  階段  足関節
 9  中学校  6   男  運動場・校庭  手・手指部
10  中学校  2   男  ベランダ  頭部
11   中学校  3   女  運動場・校庭  足関節
12   中学校  3   女  階段  足関節
13   中学校  3   男  運動場・校庭  足関節
14   中学校  3   男  ベランダ  腰部
15  高等学校全日制  2   女  廊下  足・足指部
16   養護学校高等部  2   女  教室  腰部
                         平成26年11月20日現在

災害発生状況(抜粋)
事例6
 全校避難訓練で、教室から体育館へ避難の際に急ぎ足で階段を降りていた。その途中に、後方から友達が倒れてきたため、右足を捻りながら転倒した。
事例13
 避難訓練で、走りながらグランドに避難中、グランドとフィールドの境の段差につまずき、左足首を捻って負傷した。
事例15
 火災を想定した避難訓練で、煙中の非難を体験するため防火シャッターで囲まれた空間に入って行こうとした際、防火扉が閉じたため、足元の防火シャッター壁と扉に踵を挟まれ負傷した。
 

 

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