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大阪かわら版 第68号(2015.02)

 当たり前を見直すこと  ~学校安全を今一度、考える~
    ここ数年、学校や通学路において、子どもたちが巻き込まれる事件が大きな社会問題となっています。安全で安心であるべき学校環境について、考える機会が増えたのではないでしょうか。
 今回は、管内の学校における重大事故を教訓とし、独自の安全対策を講じている堺市教育委員会(大阪府)保健給食課の西野課長と三木指導主事にお話を伺ってきました。 

   平成23年10月、堺市立の小学校で校舎2階の廊下の窓から児童が転落し死亡するという、とても痛ましい事故が発生しました。それを受けて堺市教育委員会では、原因究明と再発防止のために、「堺市立学校園における転落事故防止対策会議」を設け、事故に関する事実関係、学校における安全指導の状況及び安全管理体制などを調査しました。そして二度と起こることがないよう、転落事故を含めた学校園における事故を防止するため、調査で明らかになったことを教訓とした安全管理・安全教育等について、今後の対策・改善等を報告書にまとめました(※詳細は、堺市のホームページに掲載)。

原因は固定観念?

    原因の究明にあたって、まずは事実関係を正確に把握することから始めました。事故、児童が廊下の窓を開けようとした際にあやまって転落したのですが、窓際に設置していた用具入れを足がかりにして、窓を開けようとしたのです。
    事故当時、廊下の窓際には、各クラスの用具入れがずらりと並んでいる状況でした。学校創立時から、廊下には用具入れがあるのは当たり前の光景であり、存在を疑問視することもなく、疑問視する先生がいても、それを声にあげることはしなかったようです。
    西野課長曰く、「大人目線の固定観念、危険情報の共有不足、これらのことが今回の惨事を招いた大きな原因のひとつであり、今回の事故の調査を進めて、対策や改善策を検討する中で、事故防止には安全点検や対策はもちろんのこと、改めて情報共有の重要性を強く認識した」とのことでした。

情報を共有することの重要性

 毎月、市内の学校園から多くの災害共済給付金支払請求が、教育委員会にあがってきます。その中で、設備や教員の指導に瑕疵があったもの、骨折や入院を伴ったもの、その他知ってもらいたい事例などを西野課長がピックアップし、管内の学校園に『重要』として、毎月文書で発信しています。他の学校の事例は、自校でも起こり得ることとして認識してもらい、わが身をふり返ってもらうことがねらいだそうです。
 また、現場の先生達はとても忙しい上に、様々なところから大量の文書や資料が届くため、すべてのものに目を通すことはできません。このため、堺市教育委員会では、先生達に見て欲しい箇所を具体的に指示したり、ピックアップしたものを一覧にして発信しています。また、事故防止資料を各学校園に周知する際には、センターから刊行されている冊子や資料・統計データも紹介してくださっています。特に『学校の管理下の災害』からは、 発生件数や留意が必要な事故事例を、子どもの命にかかわる重要な情報として、全学校園に発信しています。
 そして、情報が一方通行ではいけないので、教育委員会では、文書を読んだかの確認、安全対策・点検についてのアンケートも行い、実際の現場での動きをしっかりと確認・把握されています。
  










「学校事故事例の情報提供」
『重要』として毎月発信しています。

ヒヤリハット事例に学ぶ

 また、結果としては大事に至らなかったものの、一歩間違えば大事故につながりそうなものが「ヒヤリハット報告」として、各学校園から報告され、学期ごとにとりまとめたものを教育委員会が発信しています。平成26年度の1学期は、45校園から118件の報告が集まりました。西野課長は、「これらの事例を収集・分析し、学校園に提供することは、事故の予防対策を考える上でかなり有効である」と指摘されていました。

ヒヤリハットの事例の写真
学期ごとに集計し、発信する
「ヒヤリハット報告」
              

ハインリヒの法則

   労働災害における経験則の1つ。
   『1つの重大事故の背景には、29の軽微な事故があり、
                      その背景には、300の無傷の災害(ヒヤリハット)がある』  

​   逆に考えると、300のヒヤリハットを防ぐことができれば、29の軽微な事故、
   ひいては1件の重大事故を防ぐのに効果的だと思われる。

      
 西野課長や三木指導主事の努力により、教育委員会への報告体制が構築されたので、現場の先生たちの「報告しなければ・・・」という意識が高まっているようにも感じました。
 けがをしそうになっても大事に至らなかった場合、よかったと安堵し、すぐに忘れてしまいがちですが、それを報告をし、情報が共有されることで、同じ事故を繰り返すまい、同様な状況を作るまいという考えをも共有されるのでしょう。 

毎月15日は「学校安全の日」

   毎月15日を「学校安全の日」とし、各学校の安全計画に沿って、学校安全教育の充実を図っています。さらに、校務分掌に「学校安全担当」を位置付け、安全教育・安全管理の活動を組織的に取組んでいます。 
   用具を本来の使い方でない方法で使用するなど、子どもならではの見方・考え方・捉え方があるので、安全点検には、教職員だけでなく、児童会や生徒会の子ども達・PTAも参加し、様々な視点から、点検をしていきます。 

   例えば、教室のドア。子どもはドアにもたれかかることが多いため、ドアがたわんで外れ、外れたドアが当たってけがをすることもあります。子どもの行動に注目することで、大人では気付かない注意すべきポイントなどが分かってきます。設備・遊具など「子どもにとってどうか」という視点から捉えることで、大人にとっての当たり前が通じないことがよく分かります。点検の参加者を、定期的に交替することで、常に新鮮な視点で、点検のポイントなどを見直しているとのことでした。

効果テキメン!ストップ10

   堺市内のある小学校では、児童会による児童議会で「学校のけが0(ゼロ)」を目標とし廊下を走る児童が他の児童にぶつかりそうになる絵て掲げました。
   廊下や運動場でのけがが多いことが分かり、その原因を
・廊下:休み時間の始めと終わりに、走って運動場や教室に行く児童が多いため
・運動場:使用の約束を守らなかったり、危険な遊び方をしている児童がいるため
と考えました。
   そこで、毎月15日の「学校安全の日」に、児童会の子どもが、廊下を走っている子や運動場で危険な遊び方をしている子に対し、個別に注意したり、授業開始5分前に教室へ戻るように声がけをしたり、運動場や学校内の危険箇所を点検したりなど、安全パトロールを実施しました。

      また、廊下を走っている子を見かけたら、ストップと言い、言われた子どもは、その場で10秒止まらないといけない、「ストップ10」というルールも設けています。ストップ!と言いたい子どもは多く、また言われた子どもは恥ずかしい・・・ということもあいまって、なかなかの効果があるようです。
  「ストップ10」のルールの下、廊下を走るチームと歩くチームに分かれて、ゴールまでの時間を競いました。結果は・・・歩くチームの勝利!歩く方が安全であり、しかも早く到着することが証明されました。廊下を歩くことは、自分の安全だけでなく、周りにとっても安心・安全な環境を作っているんだということも伝わったのではないでしょうか。
    これらの取り組みを通じて、廊下でのけがが少しづつですが減少したり、チャイム時に着席していることを意識する児童が増えました。また、子どもが主体となることで、安全意識の高いリーダーの育成にもつながったとの学校現場からの声も聞こえてきました。

災害発生が600件も減少!

 これらの活動を続けて4年…確実に成果は出ています!センターのオンライン請求元気な児童が並んでいる絵システムの統計情報で、堺市教育委員会(小・中・高・幼)の災害発生件数を見てみると、平成22年度が約6400件だったものが、23年度には約6000件、そして24・25年度は約5800件と確実に減ってきています。
     事故の減少につながった背景には様々な理由があろうかと思いますが、教職員や子ども達の安全に対する意識が高まったことが一番の要因ではないでしょうか。
    「日々の小さい事故に問題意識を持ち、再発防止にはどうしたらよいかを考えたり、適切に処理することの積み重ねが事故の減少につながり、また緊急時の対応にもつながってきます。当たり前を見直すこと、事例に習い、フィードバックし活かすことによって防げる事故は必ずあると信じ、今後もやり続けていきます!」との西野課長・三木指導主事の熱い思いが、災害発生減少の一番の原動力なのだと感じました。

取材を終えて

 堺市教育委員会の安全に対する熱意には驚きました。
   たくさんの情報の中からのピックアップ、学校園が目を通したかの確認など、作業量はかなり多く、とても大変だと伺いました。しかし、「事故を1件でも減らしたい」その思いで、「正直 しんどいですが、今後も頑張ります!」と力強くおっしゃられた姿が印象的でした。 
   また、どうしてもマンネリになってしまうので、常に刺激を与え続けることが課題だとも・・・。
    学校安全に限った話ではありませんが、私自身、日々をふり返り、問題意識を持ち続けることの大切さとともに、その難しさを感じた次第です。 
    お忙しい中、取材にご協力いただきました、堺市教育委員会の保健給食課 三木指導主事さん、どうもありがとうございました。

 写真
堺市教育委員会の西野課長(右)と三木主導主事

 

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