ホーム > 地域だより > 大阪地域 > 大阪かわら版 第66号(2014.06) 

大阪かわら版 第66号(2014.06)

 「スポーツ傷害を防ごう」  
                                     ふみ さと
                   ~大阪市立文の里中学校 学校保健委員会の取組み~ 

 JSCが、平成24年度中に全国で災害共済給付を行ったなかで、課外指導中の割合を見ると、中学校では約5割(50.7%)、高等学校では約6割(57.9%)を占めています。(『学校の管理下の災害〔平成25年版〕』掲載
 小学校では、「休憩時間」に発生するケースが全体の約半数を占めていますが、中学校以上になると、年齢が高くなるにつれて「休憩時間」のケガが減少し、「課外指導」つまり部活動の占める割合が非常に高くなる傾向が見受けられます。
 その「課外指導」の災害の多くが「体育的部活動中」の災害です。運動やスポーツをする上で、多少のケガはやむを得ないかもしれません。しかし、事故・災害の中には、指導者や生徒たちの工夫や努力で防ぐことができたものもあると思われます。
 今回は、体育的部活動やスポーツ競技中の事故・災害の防止に取り組まれた学校の活動を紹介します。


文の里中学校生徒による「学校保健委員会」活動​​​​
         大阪市立文の里中学校733名(平成26年3月現在)
            
   
  「スポーツ傷害を防ごう」をテーマした「大阪市立文の里中学校」学校保健委員会の活動について、養護教諭の西尾先生と保健主事の細川先生にお話を伺ってきました。  
     
     
     
     

学校医・歯科医・薬剤師の先生方も支援の輪!

 取材班が大阪市立文の里中学校を訪問したのは、生徒たちによる活動の集大成である「学校保健委員会」での成果発表の約1月後。大成功に終わった資料発表や実践発表の熱気覚めやらぬころ、文の里中学校の養護教諭の西尾先生と保健主事の細川先生にお話を伺いました。

JSC:文の里中学校の学校保健委員会では、活発な活動がされていると聞いて伺いました。具体的には、どのような活動をさ
  れていますか。

先生:学校保健委員会は、例年2年生の保健委員が中心となって、健康の保持増進に関わる活動
  をしています。特に後期の委員会では、委員会で決めたテーマについて学習し、毎年度末に
  はその成果を発表しています。
   その発表会には毎年、各学校医、学校歯科医、学校薬剤師の先生方に参加いただき、各
  立場から専門的なアドバイスを受けています。
   これらの先生方には、日頃から大変お世話になっており、発表会だけでなく、とても熱心
  に学校保健活動を支援していただいています。

「事故の未然防止」という思いが出発点

JSC:スポーツ傷害の防止について取り組まれているということですが、なにかきっかけがあったのですか。

先生:本校では、運動部・文化部ともに非常に熱心に活動しています。
   今回の保健委員には運動部に所属する生徒が多くいたこともあって、彼らの「スポーツ中のケガを防ぐことはできないか」
  という思いから、事故の未然防止という視点で進めていくことになりました。
 大会前にケガをして試合に出られなかったり、大きなケガをして好きな競技やスポーツが続けられなくなったりすると、生徒もまわりも悔しい思いをします。そこで、事故の未然防止に取り組みたい、そういう思いが出発点となりました。
 生徒自身はもちろん、学校としても、ケガは少しでも避けたいところです。
 そのようなスポーツ時のケガを防止するために、運動をする際のウォーミングアップ (トレーニング前の準備運動)やクーリングダウン (トレーニング後の整理運動)の大切さを理解することになりました。 

医・歯学の専門家から実践で学ぶ

 文の里中学校の保健委員会の活動は、様々な方々の支援を受けており、今年度もこの後、専門家を招いての実践的講習会や、いよいよ“本番”となる学校保健委員会の発表会へと続きます。その様子について伺ってみました。 

スポーツ傷害防止講習会開催

JSC:事故の未然防止というのは、とても大切なテーマですね。それに、学校医、学校歯科医、学校薬剤師さんも学校保健委員
  会活動の支援していただいているのですね。
 
先生:はい。昨年(平成25年)12月に大学の先生を外部講師に招いて「スポーツ傷害防止講習会」を開催しました。
   2年生の保健委員が、医学的立場でケガの原因からウォーミングアップやクーリングダウンの大切さを学ぶ、実践形式の
  講習を受けました。
   そこで学んだのは、ウォーミングアップは体温を上げ、ケガの予防をするだけでなく、心の準備も兼ねていることや、クー
  リングダウンをしっかり行うことが、疲れを残さないために必要であるということなど。生徒たちには新たな発見があった
  ようです。
「スポーツ傷害防止講習会」の様子 真剣に聞いています ペアストレッチが効果的!
 
 
 
そして、いよいよこの保健委員会活動の集大成である学校保健委員会での資料・実践発表です。さらにお話を伺いました。

​​

学校保健委員会の開催

先生こうした活動の“まとめ”として、本年(平成26年)2月、各学校医、学校歯科医、学校薬剤師の先生方や教職員、さらに
  保護者のみなさん約40名の方々にお集まりいただき、「スポーツ傷害を防ごう」と題して「学校保健委員会」を開催しまし
  た。
   生徒たちがこれまでに学んだ取組の内容を発表する、いわば集大成です。
   この日、生徒たちは、これまで学んだことや災害の統計情報を活用しながら、また、ストレッチなどの実践を交えながら発表し
  ました。このほか、生徒たちが役割を分担して作った手書きのイラスト付き資料の発表も行ったのですよ。
講習会のの内容をまとめた資料 イラストでわかりやすく センターの統計も掲載
ストレッチ実演の様子                               

先生:特に2年生の保健委員12名は、運動時の負傷を防ぐために学ん
  だことを実演しました。
   ウォーミングアップやクーリングダウンの際のストレッチ等の模
  範を参加者の前で生徒が説明しながら実演・発表を行ないました。

センターの統計情報を活用

 ところで、この学校保健委員会で活用されたものの中にセンターがまとめている「統計情報」があります。学校保健委員会では、この統計情報を上手に活用されていました。

JSC:スポーツ傷害防止講習会、それに続く学校保健委員会と、生徒さんたちは大活躍ですね。生徒さんたちが手作りで工夫
  して作った資料、とても分かりやすくできています。今回の発表での資料に、センターの災害発生の統計情報を活用された
  と伺いましたが、どのような情報を利用されましたか。

先生:まず、保健委員たちが経験したケガを書き出し、その状況や原因などを考えてみました。さらに、本校の災害発生状況がど
  うなっているか、数字としてみることが必要だと考え、全国と本校との発生状況の違いや、小学校との違いを比較するため
  に、センターの情報を利用しました。
   今回の資料には、センターの「統計情報システム」(※)から得られる全国の災害発生状況(統計情報)を参考資料として
  掲載しました。
発表資料 場合別発生割合のグラフ                           

~この資料から分かったこと~
1.小学校は休憩時間中の災害の割合が多い。
2.中学校は部活動中の災害の割合が多い。
3.全国の中学校に比べ、文の里中学校では部活動中の災害の割合が
  高いことが確認できる。

動きも気持ちも変化、自信を持つ生徒たち

JSC:委員会での生徒の発表までには、いろいろと苦労があったのではないですか。

先生:苦労を吹き飛ばすような、嬉しいことも多かったんですよ。委員会活動は、部活動や学校行事など
  との関係で、活動時間が非常に限られていたので、いかに生徒たちが興味を持って楽しみつつも集中
  して取り組めるか、が課題です。
   当初、生徒たちはまとまりのない様子でしたが、委員会での発表が近づくにつれ、生徒たち自らが
  どんどんと積極的に参加してくるのが実感できるようになったのです。
    その気持ちの変化が嬉しかったですね。学校の先生以外の方々に説明をすることも刺激になった
  のか、とても真剣に取り組むように、生徒たちの姿勢が変わってきました。

JSC:委員会活動を通じて、生徒たちも成長してきた、それが実感できる、ということですね。

先生:委員会での取組後には、生徒の顔に自信を見られ、普段とは違い、生徒同士のまとまりもできたように思います。生徒たち
  は大きな役割を終えて達成感を感じている様子で、発表の際に来ていただいた保護者の方からも「この活動を通して子どもが
  自信をもつようになった。」というお話を聞くと、学校としても、とても嬉しいですね。
   毎年、テーマを探して発表まで仕上げるのは、なかなか大変ですが、こういった生徒の成長が垣間見えると、また頑張ろう
  と思いますね。
 
 編集後記

 取材して感じたのは、生徒たちのひたむきな事故防止の取組みや、先生方の日常的な取組みが、大きな輪になってこの活動を支えていることでした。
生徒たちが主体となって調べ、学んだことによって、記憶に残る保健委員会活動になったのではないでしょうか。学んだ知識だけではなく、満足感や自信が持てたことはきっとこれからの学生生活にも活かされると思います。
 学校医の先生たちから、「今年は何のテーマ?」とよく聞かれるそうです。きっと期待しておられるのでしょうね。そのプレッシャーを跳ね飛ばすような、素敵な学校保健委員会活動をこれからも期待しています。
 西尾先生・細川先生、お忙しい中、貴重なお話をいただきありがとうございました。
 
   
(※)… 統計情報
 独立行政法人日本スポーツ振興センターの「統計情報システム」では、学校の災害発生の統計情報が確認できます。また、当センターのホームページ「学校安全Web」には、過去の災害事例や教材カード、地域の情報など学校安全に関する様々な情報やイラスト等を掲載しています。詳しくは、ホームページからご覧ください。 
       
      学校安全Web 
         ・システムの統計情報の便利な使い方[PDF]859KB  
   

 

ページトップへ