学校の管理下における 歯・口のけが防止必携

 

 
第1 章 歯に関するQ&A
☆「歯・口のけが」とは?

Q1 「歯・口のけが」とは、具体的にどのようなことですか?
A1
 「歯・口のけが」には、「歯の傷害」と「歯の障害」があります。「歯の傷害」とは、歯の外傷、すなわち歯を外力によって傷つけ損なうことをいい、「歯の障害」とは、歯を損なった結果、歯の機能を果たさない状態をいいます。歯の傷害には、歯に加わった外力の強度と方向性により、以下のような種類があります。


 
 
     
①外傷性歯根膜炎しこんまくえん
  歯冠・歯根しかん・しこん破折
 
 
     
③歯の脱臼だっきゅう
  ④歯の陥入かんにゅう



(P82『第4 章 Ⅰ 歯・口のけがや障害を理解するために』参照)

Q2 今なぜ、「歯・口のけが」の防止が重要なのですか?
A2
 現在、学校保健活動などの結果として、むし歯は減少・軽症化してきている一方、外傷で健康な歯を失ってしまうケースが多いという非常に残念な状況にあります。これは今まで、歯・口に対する安全指導が行われていなかったことも大きな原因と考えられます。また、他のけがでは元に戻る可能性がありますが、歯の場合は元には戻らないので、その後の生活やスポーツ活動等に大きな影響を与え、それ以降の本人の食事や会話、顔の表情や印象などに影響するといった、生活の質(Quality of Life :以下QOL)を低下させてしまいます。その意味から、歯・口のけがの防止に努めることは、「病気ばかりでなく、外傷に対しても自分の体を大切に守る」という態度や習慣を育て、健康な生活を実現し、子どものQOLを向上させることになるのです。
(P8『第2 章 Ⅰ 歯・口のけがの防止の重要性』参照)


☆「歯・口のけが」の発生状況

Q3 特に多い傷害は、どのようなものですか?
A3
 傷病別に見ると一番多いのは「亜脱臼あだっきゅう」で、「歯牙破折」「脱臼だっきゅう」が続き、この3 種類が多くを占めています。小学生など年齢が低い場合には、骨に弾力があるので歯は折れずに抜けることが多く、年齢が上がってくると折れることが多くなります。歯が折れると歯髄しずい(歯の神経)が露出して、歯髄炎を起こすこともあります。部位では、上の前歯の傷害が非常に多く、年齢が上がると歯の傷害の本数も増加する傾向にあります。

Q4 発生原因は、どのような傾向ですか?
A4
 小学校までは「転倒」「人や物への衝突」が特に多く、中学校では「ラケットや相手の手足などが当たる」、高校では更に「ボールが当たる」や「登下校中の自転車の転倒」などの事故によるけがが多くなっています。

Q5 どのような時間帯に、発生していますか?
A5
 小学校では休憩時間、中学校では課外活動や保健体育の授業中、高校では課外活動での発生が圧倒的に多くなっています。また発生場所では、年齢が上がるに従い、校舎外での発生割合も上がっています。
(P11『第2 章 Ⅱ 歯・口のけが防止のための管理と指導』参照


☆ 歯・口のけががおきたら

Q6 応急手当は、どのように行えばよいのですか?
A6
 歯・口のけがの応急手当で重要なことは『抜けたり折れたりした歯を乾燥させず、いかに早く元に戻すか』です。(特に、抜けてしまった場合には歯根にはさわらないように注意し、可能な限り30 分以内に、歯科医院等で処置できるようにしたいものです)
 また、「歯・口のけが」は、歯だけ単独の傷害は少なく、歯肉のほか、顔やあごの骨、口唇や小帯などの軟組織の負傷の有無など、全体的な確認も忘れずに行ってください。

★応急手当のポイント★
① 抜けたり、破折した時は、その歯を捜して乾燥させないように歯の保存液に浸す。
【注意!】  歯の保存液は、歯や歯根膜の乾燥を防ぎ、再植に必要な歯根膜細胞を守るために使用します。
 歯が抜けた時、歯の保存液がなかったら、歯根膜細胞が浸透圧で変性しないように冷たい牛乳でも代用は可能です。しかし、学校では歯の保存液を保健室などに常備しておくことをお勧めします。
② 口をぬるま湯で軽くすすぎ、汚れや血を流す。
③ (歯の保存液につけた歯)を持って歯科医院へ!
【注意!】  けがをした直後は何ともなくても、歯髄内の出血や血液の循環障害で歯髄が壊死して歯が変色し、黒ずんでくることがあります。最初何でもないと感じても、歯の変色に気づいたら早めに受診をしてください。
(P70『第3 章 Ⅰ 応急手当』参照)

参考:歯の保存可能時間の比較表



☆事後措置で注意すること

Q7 どういったケースが、災害共済給付の対象になるのですか?
A7
 歯・口の治療にあたっては健康保険による診療と、自由診療(健康保険証によらないもの)の場合がありますが、日本スポーツ振興センターの災害共済給付の給付対象となるのは健康保険での診療です。自由診療は原則的に対象とはならないので、後で支払いを巡ってトラブルにならないように、本人や保護者が理解できるように説明しておくことが必要です。
 障害見舞金は、歯の欠損か歯冠の崩壊について、3本以上の欠損補綴、あるいは歯冠修復を加えた場合や、前歯2 本の欠損(完全脱落の場合のみ特別対象)などが該当になります。
(P75『第3 章 Ⅱ 災害共済給付の申請』参照)

Q8 災害共済給付の請求手続きにあたって、注意することはありますか?
A8
 A7にも述べましたが、歯に関しては、災害共済給付の申請の面でもトラブルが起こりやすいので、事前に確認することが必要です。特に注意すべきことを75 ページに『よくあるトラブル』として紹介してありますので確認してください


☆学校で行う防止対策

Q9 学校では、どのようにしたら防止できるのでしょうか?
A9
 学校種ごとに災害発生の特徴が見られるので、それぞれの発達段階でポイントとなる留意点を踏まえ、日常の安全点検に努めてください。
(P11『第2 章 Ⅱ 歯・口のけがの防止のための管理と指導』参照)
 また、一歩進めて『危険予測学習』についても紹介しましたので参考にしてください。
(P62『第2 章 Ⅳ 危険予測学習』参照)

Q10 スポーツマウスガードとは、どういうものでしょうか?
A10
 マウスガードは、上顎じょうがくの歯列を軟性樹脂で被覆し、外力を緩和する装置であり、基本的には『スポーツによって生ずる口腔外傷、特に歯とその周囲組織の外傷発生やダメージを軽減するために口腔内に装着する弾力性のある装置』を意味しています。
 現在のところ、ボクシング・アメリカンフットボール・ラグビー(高校)・ラクロス(女子)等のスポーツ競技には装着義務があります。
(P55『第2 章 Ⅲ マウスガードの活用』参照)

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