浅見 俊雄
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あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.
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最近、表題の「一姫二太郎」を間違えて理解している若い人に続け て出会った。一、二を順序数としてではなく、人数として理解していたのである。1人は新婚ほやほやの男性で、「一姫二太郎を目指してがんばります」という ので、「1人目は女の子の方が・・・」といいかけると、「いやどちらでもいいです」というので、あらあらと思った次第である。
そこで「男の子が2人の意味なら一太郎、一次郎じゃないか」といったら、間違っていたことに気付いたのであった。ここでは、「子を持つには、長子は女で、次子は男がよい」(広辞苑による)という意味のこの言い伝えができた理由を私なりに考えてみたい。
まずtotoではないが、生まれてくる子が男の子か女の子かの賭 けをする場合に、どちらに賭けたほうが確率が高いだろうか。正解は男である。ある集団の中に女子100人に対して男子が何人いるかの比率を性比というが、 出生時のそれは毎年105~106となっているのである。受胎時までさかのぼるとその数値はもっと上がるという。なぜそうなっているのかについてよく調べ たわけではないが、多分男の方が生き抜いていくという点では女より弱いからなのであろう。虫や魚がたくさん卵を生むのと同じ理屈である。
この出生時の105台の性比が、数10年前までは20歳台の結婚適齢期になると100ぐらいになっていたのである。種属保持のためのペアのバランスを保つ ために、弱い男をたくさん生んでおく仕組みになっているのであろう。それが現在では、弱い男も医療技術の進歩に救われて死ににくくなったことによって、 20歳では104、30歳でも103程度の性比で、男性が余ってしまうという現象が起きている。今では男女同数になるのは50歳前後で、彼女のできない男 性は、この年齢まで待たなければならない。そして男性が90歳以上まで頑張れば、男1人に女3人という世界で暮らせることになる。性比の加齢にともなうこ うした推移からも、男の方が弱い、死にやすいということが理解できるであろう。
女児の方が出生時の体重が軽い(小さい)ということも、初産にとっては都合がいいことであろう。ほかにも社会行動学的な性差もあるのかも知れないが、女の 子の方が子育ての経験が無くても育てやすく、経験を積んだ上で弱い男を育てる方が都合がよいという多くの経験から、「一姫二太郎」がよいという言い伝えが できたのであろう。
それはともかく、少子化が急速に進んでいる今、順序はどうでもいいから若い夫婦には2人またはそれ以上子どもを作ってもらいたいと思っている。子育ては大変ではあるが、ほかのことでは得られない貴重でしかも楽しい経験でもあるのだから。
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