ツルのひとこと

 

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第13回 看板を掲げる

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 JISSがこの4月から建物に看板を掲げた。これまでも正門などに表札は 出していたが、濃い灰色の軍艦みたいな大きな図体の建物なので、通りかかった人などが何をしているところだろうとちょっと気味悪がったりしているというこ とも聞いて、建物の正門よりの角に、JISSのマークと国立スポーツ科学センターという文字の看板を、かなり離れたところからも見えるような大きさで掲げ たものである。夜もライトアップして薄化粧している。

 看という字は手と目が合わさった文字で、手をかざしてよく見るという意味である。看板を掲げるということは、自分の存在と中身を広く示して、多くの人に よく見てもらおうということである。ひっそりと隠れて仕事をするのではなく、堂々と名乗りをあげて、注目されながら仕事をしていこうという姿勢を示したと もいえる。

 JISSは設立から2年、営業を開始して1年半が過ぎたところで、できたばかりなのでといった言い訳はもう通用しないと自覚している。そろそろ掲げた看 板に恥じないような仕事をお見せしなければならないとも思っている。しかしJISSの看板事業の一つである国際競技力の向上を医・科学・情報から支援する という仕事では、看板役者は競技者であり、コーチも狂言作者や振付師として名前が出るが、JISSのスタッフは表看板には名前の出ない黒衣(くろご)の役 割だと思っている。競技者という役者を影でサポートして、国際舞台ですばらしい演技をしてもらう役割である。

 しかし姿を隠して客席からは見えない演劇のプロンプターとは違って、歌舞伎の黒衣は目立たないようにではあるが舞台の上で役者のお手伝いをしている。サポートでのJISSの仕事もこの程度には姿を見せてもよいかなと思っている。

 そして医・科学研究事業、診療事業、情報サービス事業、サービス事業などJISSが主体となる事業では、JISSの看板を堂々と掲げて勝負をしていかなければならない。ここで看板倒れになるようではそれこそ看板が泣くというものである。

 看板を掲げた機会に、看板づくめでJISSの3年目の意気込みを書いてみた次第である。

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