ツルのひとこと

 

ツル 浅見前センター長の
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第10回 禁煙と喫煙マナー

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 千代田区が道路での喫煙を禁止して違反者からは罰金を取るようにしたが、 日本中全部そうなればよいと思っている一人である。JISSは競技スポーツ、それもトップレベルを対象とした施設だから、当然のこととして館内は全館禁煙 としている。しかし、ベランダ的なところと入り口の外の4箇所にささやかな喫煙所を設けている。全部ドアの外で、館内へは煙は入れないという完全分煙の考 えからである。

 これでもスタッフの中には生ぬるいという声がある。特に、はじめは入り口の外だけにあった喫煙所を、2階の研修室の脇のベランダ的なところに増設したと きは、かなりの強い反対意見があった。しかし宿泊者が室内で隠れて喫煙している事実があり、夜間に玄関のロックをはずして外に出て、ロックせずに戻って鍵 が開け放しになっていたというようなことも一度ならずあって、火災の危険性やセキュリティー上の問題とを天秤にかけて、喫煙所の増設に踏み切らざるを得な かったのである。それに競技者だけが利用者ではなく、スタッフにも喫煙者はおり、成人男性の50パーセント以上が喫煙者であるという日本の現状(女性、そ れも若い女性の喫煙者も増えている)からも、喫煙所をまったく設けないというのは、かえって周辺に吸殻を撒き散らす結果になるという判断もあってのこと だった。

 私自身はサケは高校時代からたしなんでいたが、タバコは恩師の「選手の間はタバコだけはやるな」という教えを今に至るまで守っているので、スポーツマン がタバコをやるなんてもってのほかと思っている。一方でパフォーマンスを高めるためにトレーニングに励みながら、それにマイナスになる行為を自ら選択して 行うというのが信じられないのである。指導者も自ら吸う人が多いからかもしれないが、なぜ私の恩師のようにもっと厳しく選手に禁煙を要求しないのかが不思 議である。

 JISSの利用者の喫煙者にお願いしたいのは、喫煙所のみで喫煙するという最低のマナーを守ること(これはJISS以外でも同じであるが)と、いちいち 離れた喫煙所へ行くよりも、JISSにきたのを機会に禁煙するという決心をしてもらいたいということである。近い将来JISSから喫煙所の消える日の来る ことを切に願っている。

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