ツルのひとこと

 

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第4回『十人十色』

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 群をなして泳いでいる魚や空を覆って飛ぶバッタの大群の一匹一匹に、他と は違う個性があるのかどうかは知らないが、猿や犬ともなればそれぞれに個性があって、それぞれが他とは違う存在として認識される。ましてや人ともなれば、 まさに十人十色どころか、億人億色で地球上に同じ個体はいないといってよいだろう。遺伝子的にはまったく同じであるはずの一卵性双生児でも、外形的にもど こか微妙な違いがあるし、まして精神的なこととなると明らかに他人としての違いを持っている。

 一人一人が違う色を持っているといっても、この色は一人が一つの色ということではない。十人十色も広辞苑では「人の好むところ・思うところ・なりふりな どが一人一人みんなちがうこと」と説明されている。万華鏡のようにいろいろな色が組み合わされていて、その個人のその時々によって色の組み合わせも、それ によってできる模様もみんな異なっていながら、その人なりの特徴があるということなのだろう。

 万華鏡はどれを見てもきれいに見えるが、人の色は必ずしもきれいばかりとはいえないようである。時には原色がぎらついて毒々しく見えたり、汚らしい色彩 の組み合わせに見えることもあるようだ。しかしすべてがいやな色ばかりという人もいないのだろう。誰にも何かしらきれいに輝く色があるもので、それがまさ に特色というものだ。

 人は集団の中で生きていく。その中では勝手に自分の色を出していればいいというわけにはいかない。自分のどの色が集団にとって好ましいのかも考えて行動 しなければならないが、他人のいやな色だけを見るのではなく、それぞれの特色を認めあうことも大切であろう。それぞれの個の特色が生かされてこそ、集団と しての特色が現れ、一人一人の、そして集団としての万華鏡がともに光り輝くことになるのである。

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