スポーツと二人三脚

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第44回 北京五輪その後の話し 2009年3月19日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 昨年11月、招かれて中国スポーツ科学研究所(CISS)の創立 50周年式典に出席した。このCISSは1958年に設立され長年にわたって中国のスポーツ科学研究を支えてきている施設である。施設内も視察したが、日 本のJISSほど器具機材は新しくはないが、内容は非常に充実している印象を持った。北京オリンピックにおいて51個の金メダルを獲得し、アメリカ、ロシ アを抑えて中国が一位に輝いたのも同施設の色々な形での支援があったからと想像できる。

 北京滞在中には、五輪施設も視察する機会があり、8月開催の北京五輪時には激励や応援に走り回っていただけに興味を持って訪れてみて大変驚いてしまっ た。なんと主会場となった国家体育場の「鳥の巣」や、国家水泳センターの「水立方」が観光施設となっており、市民に開放されていた。過去のオリンピック会 場でも公園として観光施設になっているところも多く見受けるが、両施設ともまだ3ヶ月位しか過ぎていないのに、聖火台もはずされてしかも競技が出来る状態 となっていないことに驚いたのである。

 「鳥の巣」は入場料50元(約800円)で、グラウンドの芝の上にマットが敷かれており、誰でもがグラウンド内に入れるようになっていた。「水立方」は 入場料30元(約500円)でプールの中にライトアップできる照明器具が置かれていた。私たちが訪れた時も多くの人々が見学に訪れていて、中には地方の民 族衣装を身に着けている団体もいくつか見受けられた。話を聞くと連日観光客で賑わっており、入場料収入も大きいと言っていた。北京市の観光の中心は、天安 門広場などから、オリンピック公園へと移っているそうである。

 我々の感覚では、五輪の主会場であるならその競技のために当然使用されてしかるべきと思ってしまう。世界新記録で100mを走り抜けたボルト選手、世界 新記録で100m平泳ぎ二連覇を成し遂げた北島選手の雄姿を記憶しているだけに、そのことにこだわりを持つ我々の感覚の方がおかしいのかなと思ってしまう ほどである。

 北京五輪は中国にとっては、一過性の行事だったのだろうか。ある日の新聞に、オリンピック関係者内部にも「北京オリンピックは中国政府のメンツと資金が 可能にした特例」との思いが強いとの記事があり、五輪後の主会場の状況を見てきた私としてはその記事に納得してしまったのである。

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