スポーツと二人三脚

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第26回 スポーツ選手は勝者と敗者になることを学ばねばならない 2007年7月27日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 1995年、当時の英国首相メイジャー氏が「英国スポーツ再建策」を政策として打出したことは以前紹介したが、その時のメッセージでスポーツの価値について述べているので、要約したものを紹介してみたい。

 『○スポーツは、英本国の中心的遺産のーつである。
○我々の生活の中で実質的なものと同様に大切なことは、芸術、余暇及びスポーツの世界であり日常生活を豊かにしてくれるものである。
○スポーツは、スポーツを楽しむ世界中の数限りない多くの人々の生活の価値を高めるものである。
○スポーツは、世代間や国境間の結合を生み出す力となるものである。
○スポーツは、健康を増進し、新しい友情の扉を開いてくれるものである。
○競技スポーツからは一生涯続く貴重な教訓が得られる。
・どのゲームも勝者と敗者の双方を産み出す。
・スポーツ選手はこの両者になることを学ばなければならない。
・スポーツは、両者がルールに従ってプレーし、進んで結果を受け入れることにより人間の幅を広げ、成長し、他人と一緒に生活し、チームの一員として貢献する方法を学ぶ。このことが社会性を高める最高の手段のーつである。』 

 このように英国では首相自らがスポーツの価値について理解し評価していることに驚くとともに、英国が近代スポーツの母国といわれている所以もここにあると思った次第である。
この首相の檄で、英国は1996年アトランタオリンピックでは金メダル1個であったが、2000年のシドニーオリンピックで11個、アテネでは9個の金メダルを獲得するという成果を挙げている。

 このメッセージの中で特に嬉しいことは、どのゲームからも勝者と敗者の双方を産み出すものであり、スポーツ選手はこの両者になることを学ばなければならないと述べていることである。

 選手も指導者も敗者になって学ぶことが多いことに気がつくことが大切であり、勝つことばかりでなく人間育成にも取り組んで欲しいものである。フェアープレー精神やラグビーのノーサイド精神の原点はここにあると思っている。

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