スポーツと二人三脚

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第6回 日本のマスコミの異常なスポーツ報道 2005年11月16日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 前回、スポーツメディアの報道について触れたが、今回はそのことを少し掘り下げてみたい。というのは、近年、日本のマスコミの異常なスポーツ報道ぶりがいつも気になっているからである。

 シドニーオリンピックの折り、「日本のスポーツを弱くしているのは日本のメディアだ」という記事を読んだことがある。先日もマスコミ関係者の集まりで、 「スポーツに対する取材や報道のレベルが日本は低く、特に女性アナウンサーのインタビューは内容も無く、何だ」との発言があった。私も平素から強く思って いることだが、特にアテネの報道ぶりはあまりにも異常だと思っていた。しかし、その異常ぶりがかえって日本選手団の好成績にもつながったように思えるの で、報道というのはなかなか難しいものだなと感じたことも事実である。

 しかし、メディアの異常な報道ぶりを肯定するわけにはいかない。

 ひどい報道になると、優勝者よりも、入賞者の方が大きく扱われていたり、もっとひどい場合は入賞しなかった選手に多くの紙面を割いている場合も見られ る。何のために金、銀、銅メダルがあり、表彰台に高さがあるのかを理解して純粋に先ずは勝利者を称えて欲しいと思っている。

 また、大会や競技会についてもどれが主要なものなのか、レベル高いものなのかということが明確に伝えられていないのが現状だ。ローカルなものであっても、メディアが主催する大会はあたかも全国的で、レベルの高い大会のように報道されている。

 スポーツ報道で大切なことは正確に、公平に、平等に報道することと思っているのだが、残念ながら日本のメディア、特にスポーツ紙やテレビではそのような報道を見ることが少ない。

 大会のレベルや記録、成績を正確に、公平に、平等に報道した上で、特別に思い入れのある選手、話題ある選手を取り上げるのであれば十分理解できるのだが。

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