学校現場での取組(事故防止対策) 東京第87号(2020.02)

 日本スポーツ振興センター(以下、JSC)では、学校における事故防止対策に活用できる資料を学校安全Webに多数掲載しています。
日本スポーツ振興センターが提供する事故防止情報を活用した熱中症対策
 今回ご紹介する埼玉県川口市立北中学校(以下、北中学校)では、毎年、事故防止対策の取組を実施しており、今年度は熱中症対策に重点的に取り組んでいます。
 養護教諭の小林先生は、以前から学校安全Webに掲載している事故防止対策に関する資料を活用されていたとのことですが、熱中症対策を行うに当たって、教職員向けの研修会の開催を検討する中で、JSCが講師派遣を行っていることを学校安全Webで知り、連絡をくださいました。
 この依頼を受け、5月20日に北中学校において開催された熱中症対策に係る教職員向け研修会に、JSC職員が行ってまいりましたので、研修会概要についてご紹介させていただきます。また、後日、研修会の感想、その他に実施した熱中症対策、熱中症対策の成果及びその他JSCの提供する事故防止情報を活用した事故防止対策について、小林先生にお話を伺いましたので、その内容についても報告します。

学校紹介

 北中学校は、川口市で4番目に開校した73年の歴史のある中学校で、令和元年度は、646名が在籍しています。
 学校教育目標には、以下の3点を掲げています。
賢 く・・・自ら学び、自ら考えて行動する生徒の育成
逞しく・・・心身ともに健康な生徒の育成
温かく・・・心豊かで、思いやりのある生徒の育成

熱中症対策に係る教職員向け研修会の概要

 研修会では、JSC職員が講師として「学校の管理下の災害 [平成29年版]」から実際に発生した熱中症の事例を紹介した上で、パンフレット「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」及び映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう ―知って防ごう熱中症―」を基に、熱中症予防や発生時の対応についてお話ししました。
【熱中症予防の原則】
▹環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給を行うこと
▹暑さに徐々に慣らしていくこと
▹個人の条件を考慮すること
▹服装に気を付けること
▹具合が悪くなった場合には早めに運動を中止し、必要な処置をすること
【事例】
28死 - 18 中学校1年・男 死亡(熱中症)
ハンドボール部の活動中、運動場で準備運動としてランニングをしていたところ、35分走り終えたときにふらついたので、顧問が日陰に座らせ休ませたが、寝ころんでしまい、自力で給水できず、問いかけにも応えなくなった。すぐに氷で頚部や脇を冷やす等の応急処置を行った。救急車を要請、入院したが、翌日死亡した。
パンフレット 平成30年度スポーツ庁委託事業学校における体育活動での事故防止対策推進事業「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」


           
映像資料(DVD)平成30年度スポーツ庁委託事業学校における体育活動での事故防止対策推進事業「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」


研修会の様子

研修会終了後、小林先生に感想を伺いました。

  「研修でDVDの視聴をしましたが、実際に現場で事故が起こったときの対応の仕方が具体的に紹介されていてとても分かりやすかったと思います。このDVDを参考に、本校でも校庭で意識障害が発生した際に、すぐに全身に水をかけて冷やし、体温を下げることができるように長いホースを設置しました。
  また、パンフレットの『熱中症対応フロー』知識の少ない教職員でも対応できるように大変分かりやすく解説されているため、活用させていただいています。」
映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう ―知って防ごう熱中症―」の1コマ。
意識障害がある場合、すぐにホースで全身に水をかけて冷やし、体温を下げることが大切です。

教職員向け研修会後の取組等の取材

 後日、教職員向け研修会後の熱中症対策に係る取組やその他に実施した熱中症対策、熱中症対策の成果及びその他JSCの提供する事故防止情報を活用した事故防止対策について、小林先生にお話を伺いました。
生徒保健委員会での熱中症対策に係る活動
 教職員の研修だけでなく、5月30日には、生徒保健委員が全校生徒に向けて「熱中症予防の呼びかけ」の活動を行いました。「防ごう熱中症 守れ!自分を」をキャッチコピーに、水分補給、良い睡眠、衣服の調節を心がけて熱中症にならないよう呼びかけました。
5月30日 「熱中症予防の呼びかけ」の様子
 5月30日に、生徒保健委員が全校生徒に向けて「熱中症予防の呼びかけ」の活動を行った際の写真  5月30日に、生徒保健委員が全校生徒に向けて「熱中症予防の呼びかけ」の活動を行った際の写真
 また、7月10日の全校集会においては、第2弾として3択クイズを3問出題しました。

7月10日 3択クイズ出題の様子

第1問 気温、湿度、直射日光以外に、熱中症になりやすい気象条件があります。それはなんでしょうか?
①雷
②風
③台風

7月10日の全校集会において、3択クイズを3問出題した際の写真(第1問)
正解は②の風です。
気温がそれほど高くない場合でも、湿度が高く、風のないときは特に注意が必要です。 

第2問 汗をかいたとき、水分と一緒に補給すると良いものはどれでしょうか?
①砂糖
②ビタミン
③塩分

7月10日の全校集会において、3択クイズを3問出題した際の写真(第2問)
正解は③の塩分です。

第3問 熱中症が起こりやすいかどうかを教えてくれる暑さ指数(WBGT)という指標があります。
暑さ指数を計測できる機械が学校内3ヶ所に設置されています。1つ目は、武道場、2つ目は校庭の体育倉庫の入り口付近、さて、3つ目はどこにあるでしょうか?
①体育館
②昇降口
③プール

7月10日の全校集会において、3択クイズを3問出題した際の写真(第3問)
正解は①の体育館です。左の壁に設置されています。

「熱中症予防の呼びかけ」の廊下への掲示
5月30日に行った「熱中症予防の呼びかけ」の際に使用した作品(「防ごう熱中症 守れ!自分を」「予防策は、①水分補給 ②良い睡眠 ③衣服の調節」)を廊下に掲示した様子
このような形で、教職員だけでなく生徒自ら、自分たちの意識を高める活動も行いました。

校舎内での掲示等

 保健室、教室、廊下には教材カードを掲示するとともに、生徒休養用のテーブル、職員室の救急箱にスポーツ事故防止ハンドブックを設置しています。
 教材カードについては、職員室の出入り口のドアや渡り廊下、保健室の掲示ボード等に、教材カードを掲示し、熱中症予防の意識を高められるように工夫しました。
 また、学校現場では、予測不可能ないろいろな事故が発生する可能性があります。スポーツ事故防止ハンドブックは、熱中症だけでなく、心停止・頭頚部外傷・歯の外傷・眼の外傷に対する対応が1冊にまとめられているため、常に職員室の救急箱に数冊入れておき、必要時に生徒に渡すこともあります。
 また、校外学習時の救急バッグの中にも常備しています。本校では、全教職員が所持して活用しています。保健室の休養用のテーブルにも設置し、生徒が気軽に手に取って読めるようにしています。
保健室
保健室に教材カードを掲示した様子
職員室
(左)職員室に教材カードを掲示した様子(右)職員室の救急箱にスポーツ事故防止ハンドブックを設置した様子

熱中症対策の成果

 教職員向けの研修会の実施、生徒保健委員会での活動、校舎内での掲示等により、熱中症対策に係る教職員・生徒の意識が大きく向上するとともに、体育祭で塩分タブレットを配布する等の対策を行った結果、今年度の発症件数は、昨年度と比べて半数以下に減少するとともに、病院へ搬送する事故は発生しませんでした。

熱中症対策以外での活用(授業におけるDVDの活用)

 主に、保健の授業「傷害の防止」の単元でDVD「運命の5分間 その時あなたは~突然死を防ぐために~」を活用しています。心肺蘇生とAEDの使用についての必要性を認知させるため、授業の導入で使用することが多いです。
 また、養護教諭による歯に関する保健指導において、歯・口のけがの防止と応急処置のDVDを視聴して、中学生はスポーツ外傷により歯・口の障害を負うことが多い等の解説と予防についての話をしています。授業において生徒に映像を見せて、事故防止に関する対策について考える機会を設けていることもあり、歯・口の障害を負うような重大事故は発生していません。
映像資料(DVD) スポーツ庁委託事業「学校でのスポーツ事故を防ぐために」

JSCの提供する事故防止情報を活用した感想

 DVDの映像資料は、どの項目も10分程度で作られているため、保健指導、保健の授業、教職員の研修等でも活用しやすいです。
また、ポイントを絞って分かりやすくまとめられていて、生徒も十分理解できる内容です。
 スポーツ事故防止ハンドブックは、A6判のコンパクトサイズなので、救急箱等に複数冊入れておくことができ、必要時に生徒へ渡すこともできます。
 また、校外学習時には引率教員が携行し、救急バッグにも常時入れてあります。
教材カードは、季節に合わせて毎月異なるテーマで作成されており、定期的に掲示物を差し替えて更新することができるため、生徒や教職員の注目度も高く、生徒保健委員の活動でも参考にしています。
 今後も事故防止に関する対策を、教職員・生徒・PTAが協力し、学校全体で取り組んでいきたいと考えています。

最後に

 熱中症は、気温・湿度などの環境条件を把握し、それに応じた運動・水分補給・休憩をとることや児童生徒等の健康観察、健康管理を徹底することによって防止することができます。北中学校においては、教職員向けの研修会を行うだけでなく、生徒保健委員が中心となり熱中症対策について学び、その成果を全校生徒に向けて発信することにより、より効果的に意識を高めることができていると感じました。
 JSCでは、災害共済給付の実施により得られる年間約100万件の事故情報を活用して、調査研究や情報提供を行い、学校災害の減少を図ることとしています。
 今回ご紹介した資料以外にも、学校における事故防止対策に活用できる資料を学校安全Webに多数掲載していますので、是非積極的にご活用ください。
 また、JSCの提供する事故防止情報を活用している先生方がいらっしゃいましたら、学校安全Webでご紹介させていただきたいと考えておりますので、是非、担当地域事務所までご一報くださいますようお願いいたします。






 

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