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学校現場での取組(事故防止対策) 仙台第63号(2021.07)

学校安全教育担当者講習会における事故防止情報の提供

独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)では、学校関係者・教育委員会担当者等の学校現場に関わる方を対象として、講習会・説明会を開催しています。
今回、仙台事務所では仙台市教育委員会からの要請を受けて、令和3年6月8日(火)宮城県仙台市にある仙台市教育センターで開催された令和3年度学校安全教育担当者講習会(以下、「講習会」)において、学校の管理下における事故防止と題して情報提供を行いました。今回は、その様子についてご紹介します。
「学校の管理下における事故防止」の講習を受講している様子

講習会の様子

講習会の紹介

仙台市教育委員会は、仙台市内各学校(園)における安全教育の充実と担当者の資質向上を図ることを目的として、毎年、市立学校(園)の安全教育担当者等を集め悉皆研修を行っております。

講習内容と情報提供

今年度の講習会は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、仙台市教育センターの3つの研修室を会場とし、実際に説明を行う会場の様子を残りの2会場に配信するなど感染症対策を万全にし、185名が参加しました。
配信された映像を視聴し、別会場で講習する様子1 配信された画像を視聴し、別会場で講習する様子2
映像が配信されている他会場の様子
前半は、平成27年度から令和元年度までに全国・宮城県・仙台市の小学校・中学校・高等学校へ給付を行った医療費・障害見舞金・死亡見舞金のデータを基に、登下校中・授業中・休憩時間中・授業終了後の特定時間中(放課後)・課外指導(体育的部活動)における場合別の事故の傾向・事例について説明しました。
登下校中の事故の傾向
小学校:ほとんど徒歩での事故。登校中に比べ下校中の事故が多い
※仙台市の場合、登下校中の割合は半々
中学校:自転車通学による事故が約6割。登下校中の割合は半々
※仙台市の場合、登校中の事故の方が多い
高等学校:自転車通学での事故が7割強。登校中の事故が約6割
※仙台市の場合、登校中の事故が約7割と全国よりも多い
課外指導(体育的部活動)における事故の傾向(医療費)
中学校:バスケットボールでの事故が一番多く、サッカー・フットサル、バレーボールと続く
※仙台市の場合、バスケットボール、サッカー・フットサル、陸上競技と続く
高等学校:サッカー・フットサルが一番多く、バスケットボール、野球(含軟式)と続く
※仙台市の場合、ラグビー、サッカー・フットサル、野球(含軟式)と続く
課外指導(体育的部活動)における事故の傾向(障害見舞金)
中学校:野球(含軟式)での事故が一番多く、サッカー・フットサル、バスケットボールと続く
高等学校:野球が約4割と1番多く、サッカー・フットサル、バスケットボールと続く
課外指導(体育的部活動)における事故の傾向(死亡見舞金)
中学校:テニス(含軟式)が一番多く、野球(含軟式)、陸上競技と続く
高等学校:野球(含軟式)が一番多く、登山、サッカー・フットサルと続く

事故の傾向・事例の説明で使用したスライドの一部

登下校中における事故の傾向(通学に準ずる場合を除く)の画像。小学校の登下校中の事故の割合は、登校中が44.1%、下校中が55.9%。小学校の登下校中の徒歩での事故の割合は98.3%、自転車での事故の割合は0.6%、その他の事故の割合は1.1%。中学校の登下校中の事故の割合は、登校中が50.1%、下校中が49.9%。中学校の登下校中の徒歩での事故の割合は30.8%、自転車での事故の割合は66.2%、その他の事故の割合は3.0%。高等学校の登下校中の事故の割合は登校中が62.1%、下校中が37.9%。高等学校の登下校中の徒歩での事故の割合は、16.1%、自転車での事故の割合は74.0%、その他の事故の割合は9.9%。冊子「学校の管理下の災害」平成28年版から令和2年版よりデータを抽出。

登下校中における事故の傾向
課外指導(体育的部活動)における障害の傾向の画像。中学校に支給した障害見舞金のうち、44.0%は体育的部活動において発生したものとなる。第1位は野球(含軟式)で71件、体育的部活動における障害のうち28.2%を占める。第2位はサッカー・フットサルで35件、体育的部活動における障害のうち13.9%を占める。第3位はバスケットボールで29件、体育的部活動における障害のうち11.5%を占める。第4位はテニス(含ソフトテニス)で19件、体育的部活動における障害のうち7.5%を占める。第5位はバレーボールで18件、体育的部活動における障害のうち7.1%を占める。高等学校に支給した障害見舞金のうち、63.7%は体育的部活動において発生したものとなる。第1位は野球(含軟式)で224件、体育的部活動における障害のうち42.8%を占める。第2位はサッカー・フットサルで62件、体育的部活動における障害のうち13.9%を占める。第3位はバスケットボールで37件、体育的部活動における障害のうち7.1%を占める。第4位はラグビーで28件、体育的部活動における障害のうち5.4%を占める。第5位はバレーボールで16件、体育的部活動における障害のうち3.1%を占める。冊子「学校の管理下の災害」平成28年版から令和2年版よりデータを抽出。

課外指導(体育的部活動)における障害の傾向
登下校中における事例3の画像。高等学校3年生男子の内臓損傷による死亡事例。発生状況は、冬休み中の剣道部の部活動に参加するためイヤホンで音楽を聴きながら徒歩で登校中、踏切内(警報機、遮断機なし)で列車にはねられ、死亡した。

登下校中における死亡事例
課外指導(体育的部活動)における事例4の画像。高等学校2年生男子の頭部外傷による死亡事例。発生状況は、サッカー部活動の練習中、ミニゲームでコート外に転がったボールを拾っている際、グラウンド隣で練習していた陸上部の生徒が投げたハンマーが頭部に当たり、頭部外傷を負った。職員が心肺蘇生を行いながら救急車を要請。緊急搬送されたが死亡した。

課外指導(体育的部活動)における死亡事例
後半は、熱中症予防の説明と学校事故再発防止取組事例及びJSCが提供している事故防止資料・教材の紹介を行いました。

熱中症予防の説明

熱中症の医療費給付件数は、年々増加傾向にあります。約7割は運動中に発生しますが、非運動中にも熱中症が発生するので注意が必要となります。また、小学校だけで見てみると、通常の授業よりも年に数回しかないような学校行事で一番多く熱中症が発生していることが統計情報から分かりますので、こまめな水分・塩分補給だけでなく、活動前・活動中の本人の体調についても気を配る必要があります。
熱中症予防の説明を聴講している様子

熱中症予防の説明を聴講している様子

熱中症予防の説明で使用したスライドの一部

熱中症における事故発生件数と傾向②の画像。平成27年度から令和元年度までに給付を行った全国の小学校における熱中症医療費発生件数2,325件からデータを抽出。場合別割合は、各教科等が31.3%、特別活動(除く学校行事)が7.1%、学校行事が37.6%、課外指導が10.7%、休憩時間中が10.4%、通学中が2.9%となっており、学校行事における熱中症の割合が一番高い。学校行事で発生した熱中症事故875件のうち、第1位は運動会・体育祭で355件、第2位はその他集団宿泊的行事で229件、第3位はその他健康安全・体育的行事で86件、第4位は修学旅行で56件、第5位は遠足で30件と続く。

小学校における熱中症発生件数と傾向
熱中症予防と対策③の画像。山形県にある天童市立第一中学校における熱中症予防取組例の紹介。保健体育の授業で1年生の生徒に対し「スポーツ事故防止ハンドブック」を用い熱中症について説明している様子と、映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―」を視聴している様子。

熱中症予防取組例

学校事故再発防止取組事例の紹介

学校で事故が起きた際、再発防止策を講じることで同様の事故が発生するリスクを減らすことができます。実際に自校で事故が発生していなくとも、他校の事故事例と再発防止策を知ることで、自校の現在の状況と照らし合わせれば同様の危険があるかの判断材料にもなると思います。
学校安全Webの「学校現場の取組(事故防止対策)」には、再発防止事例も多数掲載しておりますので、是非参考にしてみてください。

再発防止取組事例の説明で使用したスライドの一部

再発防止取組事例1の画像。生徒が階段の手すりに座り、落下防止のネットに持たれていたところ、手すりとネットの間に隙間があり、おしりからくの字になるよう転落。ネットをつかみながらずり落ちたが、ネットから手を放してしまい落下した現場の写真。 再発防止取組事例紹介事例1の画像。事故発生後の再発防止策として、たまたま格子に固定していた結束バンドと結束バンドの間隔が若干広いところから転落してしまったため、固定する間隔を狭めるとともに、格子の下部だけでなく上部も追加で固定し、隙間が生じないよう改善した。また、手すりに突起物を付け、手すりをすべり降りられないように対策を施した。画像にある写真は、格子上部も結束バンドで固定し、結束バンドと結束バンドの間隔も狭めたものと、手すりに突起物を設置したものになる。
再発防止事例の一部

JSCが提供している事故防止資料・教材の紹介

学校安全Webには、印刷するだけですぐ使える教材カードや10分程度で視聴することができる映像資料(DVD)など、短時間での研修に活用いただけるような資料が多数掲載されていますので、是非一度学校安全Webを覗いてみてください。
1つ目は令和元年5月号小学校中学年・高学年向けの熱中症予防の教材カード。気温や湿度が高かったり急に暑くなったりすると、体に熱がこもってしまい、体温調節がうまくできなくなり、ふらふらしたり、動けなくなったりしてしまい熱中症になってしまう。外に出る時は帽子をかぶったり薄着になること、また、運動するときはこまめに休憩し水分をとることが記載されている。令和元年5月号幼稚園・保育所等・小学校低学年向けの熱中症予防の教材カード。暑いと思ったら、帽子をかぶる、のどが渇いていなくても水を飲む、涼しいところで休む。また、気持ちが悪かったり頭が痛いときはすぐに先生や近くの大人に知らせることが記載されている。

教材カード
平成26年度から平成30年度に行われた「スポーツ事故防止対策推進事業」と「学校における体育活動での事故防止対策推進事業」の成果物である映像資料(DVD)の紹介。映像資料は突然死(約16分で小学校・中学校・高等学校へ送付)、プール飛び込み・歯と口のけが(約15分で中学校・高等学校へ送付)、熱中症(約11分で教育委員会へ送付)、眼の事故(約10分で小学校・中学校・高等学校へ送付)、組立体操(約42分で教育委員会へ送付)の5種類があり、組立体操以外はYoutubeでも配信中である。

映像資料(DVD)

講習を受けた先生方の感想

・今日の講習の内容を校内でも周知したいと思います。
・配布資料のスポーツ事故対応ハンドブックが見やすく分かりやすかったです。
・分かりやすい説明と活用できそうな資料の紹介ありがとうございました。これから積極的に活用していきたいと思います。
・視聴した映像資料(DVD)はイメージしやすく、研修等にも活用できそうです。
・さまざまな事故防止の資料があることを知りました。
・今回の講習を機に適切な対応について見直し、職員間で共有するとともにさまざまな資料を活用していきたいと思いました。

今後作成を希望する資料・教材

映像資料(DVD)
・良い例と悪い例の内容が含まれているもの
・教職員用と児童生徒用のもの
・児童向けにアニメの動画
・クイズ形式で事故の要因を考えさせるもの
・実際に学校で起こった事故の再現映像
資料・教材
・危険の予測、けが防止につなげられるような指導用の教材
・学校生活に潜む事故事例
・事故事例と再発防止策が掲載されている資料
・施設設備の事故防止資料

取材を終えて

事故の傾向や過去事例を知ることは、事故防止の取組の第一歩となります。学校現場に戻られましたら、教職員間で情報を共有していただき、児童生徒等が安心して学校生活を送れるよう事故防止に取り組んでいただければと思います。
今回の講習会で、学校現場が希望する資料・教材についても知ることができましたので、今後の資料・教材作成の参考とさせていただきたいと思います。アンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

お願い

JSCが提供している事故防止情報を活用している先生方がおられましたら、ウェブサイトなどで共有したいと考えておりますので、担当地域事務所にご一報ください。お待ちしております。

 

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