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学校現場での取組(事故防止対策) 仙台第57号(2019.08)

 
 日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)では、さまざまな事故防止情報を学校安全Webに掲載しています。今回は、事故防止情報の具体的な活用方法についてご紹介します。  
 
 学校における熱中症対策
 

 近年、熱中症による救急搬送のニュースが多く報道 されており、学校の管理下における熱中症の集団発生等のニュースも話題となっています。また、2019年5月26日には、北海道帯広市で気温が37度3分を記録し5月の国内最高気温を更新するなど、早めに熱中症対策を行う必要があります。  熱中症寸前のランナー            
 今回は、熱中症による過去の重災害を教訓に、学校として熱中症対策に積極的に取り組んでいる岩手県立花巻南高等学校(以下「花巻南高校」)の取組について、養護教諭の折舘先生にお話を伺いました。  
 

 熱中症対策について取り組もうと思ったきっかけ 

 花巻南高校では、数年前に、屋内施設における体育的部活動中に、命に関わる重症の熱中症の災害が起こりました。学校として二度と同じような災害を起こさないことと、災害に遭われた本人と保護者から速やかな熱中症対策の実施要望があったことから、学校全体で熱中症対策に取り組むようになりました。 
 

 日常的な取組内容 

~WBGT値の確認と周囲への注意喚起について~

 各教室や体育館など活動する場所すべてにWBGT測定器を設置し、教室では保健委員、部活動ではマネージャーが、1時間おきにWBGT値・気温・湿度を記録するとともに、ホワイトボードにその情報を転記し、さらにWBGT値に基づく熱中症予防のための運動指針を色分けした「注意」や「警戒」等のマグネットを貼るなどし、遠くからでも視覚的に状況を把握できるようにしています。 
 教室の黒板脇の掲示スペースに置いてある熱中症指数記録表、ホワイトボード。ホワイトボードにはWBGT熱中症指数、気温、湿度を記載し、WBGT熱中症指数によって注意や警告など色の付いたマグネットを貼り、視覚的に危険度を認識できるようにしています。  教室の黒板脇の掲示スペースに置いてある熱中症指数記録表、ホワイトボード。ホワイトボードにはWBGT熱中症指数、気温、湿度を記載し、WBGT熱中症指数によって注意や警告など色の付いたマグネットを貼り、視覚的に危険度を認識できるようにしています。
 教室に設置してある熱中症指数記録表・ホワイトボード
 
~JSCが提供する練習前の健康自己チェック表等の活用について~

 部活動開始時には、「練習前の健康自己チェック表※1」を提出させ、活動前の体調管理や自身の健康状態に対する意識付けを徹底しています。また、「部活動チェック表※2」を活用し、運動環境の整備等について意識付けを行い、環境に起因する災害の未然防止にも努めています。             
※1  ※2
熱中症予防のための啓発資料「熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-」のページから
=参考資料= 健康自己チェック表・部活動チェック表 を ダウンロードしてご活用ください! 

実際に使用している練習前の健康自己チェック表。睡眠や食事の摂取状況の他、本人の体調などについて〇×を付け、練習前に顧問教諭へ提出します。 
実際に記録した「練習前の健康自己チェック表」 
 
実際に使用している部活動チェック表。部活動ごとに作成しており、30分置きにWBGT熱中症指数、気温、湿度を記載する他、活動場所の用具等の安全確認についても確認結果を記載しています。
実際に記録した「部活動チェック表【屋内用】」 
 
~その他~

 校内の自動販売機を水・お茶・スポーツドリンクのみに変更するとともに、授業中の水分補給も可としたそうです。 
 

 熱中症対策の研修会の実施について 

~JSCが提供する映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう ―知って防ごう熱中症―」の活用~ 
 
 今回、スポーツ健康科学学系に所属する生徒を対象とした「熱中症対策講座」と各部のリーダーを対象とした「部活動リーダー研修」で、映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう ―知って防ごう熱中症―」を活用いただきました。 
 
JSCのホームページに掲載されている映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう」の画像。 
 
 視聴した生徒からは、

「本人が寒いと言うまでとにかく体を冷やすということを初めて知った」

「現在、部活動で行っている『練習前の健康自己チェック表』『部活動チェック表』が大事だということが分かった」


などの感想が寄せられました。 
 
 スポーツ健康科学学系の生徒約120名を対象に、体育館で熱中症対策講座を実施している様子。講座では、生徒に映像資料(DVD)「熱中症を予防しよう」を視聴してもらいました。
スポーツ健康科学学系の生徒約120名を対象に「熱中症対策講座」を実施している様子 
 
熱中症対策講座を受講した生徒の感想(熱中症にも種類があって、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病という症状に分かれているということを知りました。また、熱中症を引き起こす条件として、環境・体・行動の3つがあるということを知りました。毎年熱中症で救急搬送される人が増加傾向であることにおいて、特に10代が多いと知り、驚きました。さらに1年生の中に多いときいて、自分の部活にたくさん1年生がいるので、遠慮させることのないような部内環境をつくりたいなと思いました。私が部活をするのは体育館なので、直射日光をあびる外の部活よりは暑くないかもしれませんが、中にも熱がこもったり、気温が低い日でも湿度が高かったりする日が多いです。だからこそ、外の部とは違う対策をすることも必要なんだと思います。また、花南の体育館は、WBGTもすごく高くなるので、特に夏の部活動は、できるだけ涼しい服装をして、部活動をしていきたいなと思います。もしも熱中症になってしまう人が近くにいても、水分・塩分補給を速やかに行い、意識障害の有無を確認し、動脈を冷却する等の対処を行えるようにしたいなと思いました。) 当該生徒が所属している部活動の環境をしっかり把握できており、熱中症を発症した生徒がいた場合、状況に応じた対応が必要であることを良く理解していることに感心しました。 
熱中症対策講座を受けた生徒の感想(質問1:熱中症を予防するために、あたなの部で気をつけることは何ですか。回答1:1人1人の体調を把握する。こまめに休み、水分補給する。1番あつい時間帯にハードなメニューは避ける。体育館の窓をあけて風通しをよくする。体調が悪いときに言いやすい関係性をつくる(みんなに体調が悪くないか聞く)。質問2:熱中症を予防するための決まりを、各部で決めましょう。回答2:無理はしすぎないで、体調が悪いときは休む。水分補給をしっかりする。きちんと休けいをとる。周りの人が体調が悪くないか、気配りをする。質問3:あなた自身が気をつけることは何ですか。回答3:3食しっかり食べる。疲れをためこまない。水分補給をこまめにする。気軽に話せるような関係を築く。誰かが倒れたり、具合が悪くなったときに対応できるように氷の場所を把握したり、何をしたらいいのかイメージをつくっておく。
 「熱中症対策講座」の感想
 
約60名が参加した部活動リーダー研修で映像資料「熱中症を予防しよう」を視聴している様子。 
約60名が参加した部活動リーダー研修で映像資料「熱中症を予防しよう」を視聴している様子 
 
部活動リーダー研修で映像資料視聴後に、「熱中症対策と練習前の自己チェック表、部活動チェック表の活用」と題して作成された問題に回答しました。大項目1: DVDの中にヒントがあります。質問1:熱中症の発生件数は 件。そのうち、体育活動中 %、体育以外 %。記載された回答:4,000件、80%、20%。質問2:運動している場合、熱中症の予防に必要なことは、水分補給、運動量の調整、・・・の取り方。回答2:休憩。質問3;実際の対応(1)意識障害があるとき 1、 2、 3、 4の要請をする。(2)本人が・・・というまで、冷やす。回答3:(1)救急車、AED、協力者、1問未回答。(2)さむい。質問4:熱中症予防で大切なこと5つ。回答4:1 環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給を行うこと。2 暑さに徐々に慣らしていくこと。3 個人の条件を考慮すること。4 服装に気をつけること。5 具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止し、必要な処置をすること。大項目2:パワーポイントの中にヒントがあります。質問1:熱中症の対応6つ。回答1:1 遮光ネット、2 生徒応援席にテント設置、3 熱中症情報を掲示し注意喚起、4 WBGT計の設置、準備、5 チェック表で運動前の健康管理、6 冷凍庫を保健室に設置。質問2:全体を通しての感想をお願いします。回答2:これからどんどん暑くなるので、こまめに水分補給をし、無理をしないようにしたいと思います。
   DVDの内容を問題にして「部活動リーダー研修」で映像資料視聴後に回答してもらうなど工夫を凝らしています。
                                   

 熱中症対策の効果 

 花巻南高校では、単に熱中症対策を行うだけでなく、生徒に対し熱中症対策に関する意識調査も行い、効果を検証しています。調査では約8割の生徒が熱中症対策に効果があったと回答するなど、効果的な熱中症対策が実践されています。
 また、以前はⅡ度熱中症症状(頭痛、嘔吐、しびれ等)を発症するまで周りに体調の悪化を伝えない生徒が多かったそうですが、最近はⅠ度熱中症症状(めまい、立ちくらみ等)でも体調の悪化を伝える生徒が増えてきたことから、重災害に至る前に対応できるようになったそうです。 
熱中症対策に関する意識調査表(大項目1 普段の健康管理と熱中症対策のふりかえり。質問1:昨年度より今年度の方が、日常的に健康や安全について意識するようになった。回答1:はい。質問2:昨年度より今年度の方が、怪我や熱中症の知識を対応力がある。回答2:はい。質問3:昨年度より今年度の方が、怪我や熱中症対策について、意識して生活していた。回答3:はい。「はい」と答えた方は、具体的な対策、工夫したことを教えてください。カットバン、体温計、鎮痛剤、袋の常備。怪我の処置の知識をつけるために話を聞いたり、調べたりした。大項目2 部活動での健康管理、熱中症対策のふりかえり。質問4:昨年度より今年度の方が、部活動全体で、熱中症対策をしていた。回答4:はい。「はい」と答えた方は、具体的な対策、工夫したことを教えてください。クエン酸、ポカリ、アクエリアス、、OS-1等水分の用意、アイシングの準備、WBGT,健康チェックの記録、塩分チャージタブレット、冷凍タオルの配布。質問5:練習前の事故チェック表は熱中症・事故・怪我の予防に役に立っている。回答5:はい。質問6:部活動チェック表は熱中症・事故・怪我の予防に役に立っている。回答6:はい。質問7:教室や体育館の熱中症表示は、熱中症・事故・怪我の予防を意識することに役に立っている。回答7:はい。 
熱中症対策に関する意識調査表 
 
 JSCが提供している事故防止情報の活用方法について教えてください
 学校安全Webには、さまざまな資料がありますので、使いたい資料を自分の学校のバージョンに変えて使用すると良いと思います。 
 
 JSCの事故防止情報に対する要望があれば教えてください 
 映像資料が非常に使いやすいので、競技種目ごとの映像資料を是非作成していただきたいです。 
 

 取材を終えて

 多くの学校では、熱中症対策としてこまめに水分・塩分補給や活動制限などを行っていると思いますが、同じ活動を行っていても、児童生徒等自身の体調など個人の条件により熱中症を発症する可能性があります。
 
 花巻南高校では、いつでもどこでも最新のWBGT値が確認できます。また、熱中症対策の研修会のアンケートを確認すると、生徒自身が熱中症をよく理解しており、熱中症対策への意識が高いことに感心しました。

 今回紹介させていただいた花巻南高校の取組のように、

  ・ 児童生徒等が自分の体調を伝えやすい環境作り
  ・ 他の児童生徒等の体調への気配り
  ・ 活動場所(屋外・屋内)ごとの熱中症対策
  ・ 応急処置について学ぶ


などにより、児童生徒等ひとりひとりの意識が高まり、熱中症発生のリスクを減らすことができると思います。

 学校安全Webとあわせて是非参考になさってください。 

 

 お願い

 JSCが提供している事故防止情報を活用している先生方がおられましたら、ウェブサイト等で共有したいと考えておりますので、担当地域事務所にご一報ください。お待ちしております。 
 
                       


 

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