学校現場での取組(事故防止対策) 大阪第77号(2021.10)
管轄地域内の大学における講義について
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令和3年7月30日に大阪教育大学において、学生向けの講義を行い、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」)の取組や事故防止に関する情報提供について説明しましたので、その様子を紹介します。
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大阪教育大学は、1874年(明治7年)5月に設置された教員伝習所を起源とした教育大学で、現在は、大阪府柏原市の金剛生駒紀泉国定公園内にメインキャンパスを配置し、教員養成教育と教養教育を通じて有為な人材を輩出されています。
また、大阪市内に天王寺キャンパスを擁し、大阪市内3地区に初等・中等教育並びに特別支援教育に対応した11の附属学校園を設置している総合的な教育系の大学です。
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今回の講義は、養護教諭部門出水典子先生からの依頼で、学校現場における災害に対して、学校の教員や養護教諭が果たす役割は重要であり、学校災害の実際について学ぶ必要があることから、JSCの学校安全の取組について説明して欲しい、と依頼をいただきました。
授業の「養護概説」において、養護教諭養成課程2回生と教育協働学科健康安全科学専攻3回生を対象に「学校事故の実際について―安全教育の観点から―」と題し、講義を行いました。
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講義概要
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1 JSCの災害共済給付に関する業務について
災害共済給付制度が、いつどのような背景により設立されたのか成り立ちを説明し、学校の管理下の災害に対する制度の概要や災害発生の傾向等を説明しました。
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2 JSCの学校安全支援に関する業務について
JSCでは、災害共済給付業務の実施によって得られる災害事故情報を活用して、事例・統計データの整理、分析及び調査研究を行い、その成果を学校関係者等に分かりやすく提供することにより、学校における事故防止のための取組を支援していることを説明し、調査・研究等の取組や成果物である冊子、映像資料(DVD)、パンフレット等を紹介しました。
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講義の様子
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講義中、突然死防止をテーマにした映像資料(DVD)「運命の5分間 その時あなたは」を上映しました。心停止のサインである心室細動と死戦期呼吸についてCGとドラマで分かりやすく表現された内容に、学生の方々は熱心に見入っていました。
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映像資料 「運命の5分間 その時あなたは ~突然死を防ぐために~」(9分08秒)
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また、ホームページ「学校安全Web」では、学校の管理下における災害防止のための情報、調査研究の成果等を掲載していることを説明し、ぜひ参考に活用していただきたいとお願いしました。
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「学校安全Web」
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3 スポーツ庁委託事業「学校における体育活動での事故防止対策推進事業」の紹介
今回の講義では、例年、学校の管理下での体育活動中の事故について、小学校、中学校及び高等学校等いずれの学校種においても、負傷・疾病の種類別では骨折事故が最も多く発生しており、骨折事故に対する学校現場で教員や養護教諭の対応が重要であることから、令和2年度スポーツ庁委託事業「学校における体育活動での事故防止対策推進事業」で行った「体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策」について、「調査研究報告書」を使って説明しました。
「調査研究報告書」に掲載されている、事故データ分析、医学(整形外科)、学校安全、法律、それぞれの観点からの事故防止の留意点について、事業のワーキンググループメンバーである有識者の提言を紹介しました。学校現場での骨折事故防止の各専門の有識者からの提言に、学生の方々は非常に関心を示していました。
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令和2年度 スポーツ庁委託事業
学校における体育活動での事故防止対策推進事業
「体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策」
調査研究報告書
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4 まとめ
災害の統計データや事故事例を知ることで、事故の危険を予見し、事故を回避するための安全配慮や方策を実施することの重要性を説明し、JSCでは学校安全支援に関する業務として、事故事例等を参考にした事故防止の資料等を提供していることから、将来必要になった際には、ぜひご活用いただきたいことをお願いし、講義を終えました。
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講義を終えて
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今回の講義について、出水先生から講評をいただきました。
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JSCのご協力により、昨年から引き続き学生向けの講義を実施していただきました。講義の内容は、養護教諭として、学校現場に勤務した4月からお世話になる内容です。
実際には、JSCのことを知らないで来た学生も多くおりますので、災害共済給付制度の説明を受けたうえで、現場に出ることは大きな意味があると思います。
さらに、今回も「その時あなたは」のDVDを視聴させていただきました。DVDの内容は臨場感があり大変学ぶことの多いものです。効果として、学生自身が、養護教諭の立場に立って救急処置の必要性を実感してくれていることが挙げられます。その他の「学校安全Web」の資料等の内容を今後は活用したいと多くの学生が申しております。
また、調査研究報告書についても触れていただき、学際的な視点から学校安全について学ぶことの必要性を実感してくれたことと思います。
これからの養護活動において、学校安全にはさらに多くのことが求められます。今後とも、なお一層JSCのご発展を願っております。
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最後に、受講された学生の感想の一部を紹介します。
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・危険の予測とそれに対する予防法を考えることの大事さがよく分かりました。
・将来、養護教諭として働くとき、何よりもまず一次予防を徹底して事故を起こさないことが大事だなと思いました。
・『体育活動中における骨折事故の傾向及び事故防止対策』により、どういった理由で事故が起きてしまったのかということを学ぶことができるので、再発防止に努めることができるなと思いました。
・DVD資料がたくさんあって、教材として使ってもいいということを知ったので、養護教諭になったら健康教育を行う際に参考にしたり利用してみたいと思った。
・心肺蘇生の講義は何度も受けDVDもいくつか視聴してきましたが、今まで見た映像の中で最も現実味が感じられました。今まで説明を受けたことしかなかった事も初めて映像でどのようなものかを確認できて、とても勉強になりました。他のDVDも、機会があればまた視聴してみたいです。
・学校事故事例検索データベースは、様々なデータや分析結果を提供されていることを知ったので、これからの勉強や研究に活用させていただきたいと思います。
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