ホーム > 学校現場での取組(事故防止対策) > 大阪地域 > 学校現場での取組(事故防止対策) 大阪第76号(2019.4)

学校現場での取組(事故防止対策) 大阪第76号(2019.4)

JSCが提供する事故防止情報の活用事例
~和歌山県教育委員会の取組~
 
 日本スポーツ振興センター(以下センター)の事故防止情報を、和歌山県教育委員会健康体育課で活用していただきましたので、ご紹介します。 
 
 和歌山県養護教諭研究協議会(平成30年12月11日開催)
   第3分科会(中学校部)
 和歌山県教育委員会では、年一回開催される和歌山県養護教諭研究協議会の分科会で指導助言を行っております。今年度は中学校の分科会において、西牟婁支部上富田・白浜・すさみブロックが「部活動の安全管理 ~保健室からの発信~」と題して研究発表しました。 

1 研究発表概要 

 センター発行の「学校の管理下の災害[平成29年版]」を参照したところ、中学校では、毎年、運動部活動中に死亡や重障害などといった重大事故が発生している。また、上富田町、白浜町、すさみ町の各中学校における過去4年間(平成25~28年度)の災害発生件数の約6割が、運動部活動中に発生したものであった。
 中学生にとって、部活動は技術・技能の伸長や連帯感の涵養(かんよう)を図り、健全な心身を培うなど、その教育的意義は大きいため、生徒が安全で充実した活動ができるよう、安全管理の指導、徹底を図らなければならないと考えた。そこで、部活動の安全管理について、養護教諭の専門性を活かし、事故防止や事故発生時の適切な対応等、保健室からどのような発信ができるかについて協議し、取組を行った。
西牟婁支部(上富田・白浜・すさみブロック)の発表風景
   

※「学校の管理下の災害」
 センターでは、学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷・疾病、障害又は死亡)に対して災害共済給付(医療費、障害見舞金又は死亡見舞金の支給)を行っています。
 本書は、災害共済給付を行う際に得られたデータの結果をまとめたものです。
 第一編は、「死亡見舞金」「障害見舞金」「供花料」を支給した全事例を整理、分類し、発生状況と「学校生活における事故防止の留意点」を掲載しました。
 第二編は、医療費(負傷・疾病)の件数について、災害傾向を把握するために、各学校種別に発生の状況と帳票を掲載しました。 

冊子表紙:学校の管理下の災害(平成30年版)
 

2 実際の取組 

(1)実態調査
 運動部活動中に発生した傷病の実態を把握するため、平成25年度から平成28年度の中学校5校(上富田中学校、富田中学校、白浜中学校、日置中学校、周参見中学校)のセンターへの災害報告件数を調査した。
<実地調査の結果> 
西牟婁支部(上富田・白浜・すさみブロック)の中学校5校の平成25年度から平成28年度のセンターへの災害報告件数(割合%)の円グラフ内訳:骨(骨折など)27.2%、関節(脱臼・捻挫など)35.6%、筋肉・腱(損傷など)4.8%、打撲13.2%、挫創・切創・裂孔など8.2%、歯牙(脱臼など)1.2%、脳震盪0.2%、熱中症・脱水症5.5%、眼部(打撲など)2.6%、その他1.4% 
調査の結果
・骨折や捻挫、脱臼、打撲等が多い。
・極めて少数ではあるが、頭部(脳震盪)、眼部、熱中症・脱水症等、重症化しやすい傷病も含まれている。 
 
(2)救急体制の整備
① アセスメントシートの作成
 実態調査の結果を踏まえ、発生件数は少ないが重症化しやすい頭部及び眼部の負傷、熱中症、胸部打撲への対応について、症状を見極めるポイントが丁寧にチェックでき、養護教諭不在時であっても適切な救急処置が行えることを目的に、学校医から指導・助言をいただきながら、症状ごとにアセスメントシートを作成した。
② フローチャート式に改良
 作成したアセスメントシートを養護教諭が利用してみたところ、細かすぎて活用しにくいことが分かったため、救急処置の流れに沿って速やかに判断し、対応できるようフローチャート式に改良した。改良を行う際には、センター発行の「スポーツ事故防止ハンドブック」を参考にした。 
 
スポーツハンドブック事故防止ハンドブックを参考にしたフローチャート
  
  【熱中症】 
フローチャート式に 熱中症の場合 チェックシート(細かすぎて活用しにくい) ⇒ 救急処置の流れに沿って速やかに判断、対応できるように ⇒ フローチャート式に改良 熱中症のフローチャートの流れ  熱中症かもと思ったら ⇒ 質問をしてみる ⇒①意識に異常がある ⇒ 救急車を呼ぶ ⇒ 涼しい場所に運んで、衣服をゆるめてからだを冷やす ⇒ 病院へ ②	意識に異常はない ⇒ 涼しい場所に運んで、衣服をゆるめてからだを冷やす⇒ 水分を自分で飲めるか ⇒ 飲めない ⇒ 病院へ  ⇒ 飲める ⇒ 水分を補給する ⇒ 症状はよくなりましたか? ⇒ いいえ ⇒ 病院へ ⇒ はい ⇒ そのまま安静にして、充分休憩をとり、回復したら帰宅しましょう 
 
  【目を打ったとき】 
目を打った場合のフローチャートの流れ   目を打った ⇒ 目が開かない(まぶたの腫れ、痛み) ⇒ 眼科受診  ⇒ 目が開く ⇒ 見えない ⇒ 眼科受診   ⇒ 見える ⇒ ぼやける、白目が赤い、二重に見える ⇒ 様子をみる ⇒ 症状が改善しない 
 
  【参考にしたスポーツ事故防止ハンドブックとフローチャート】 
スポーツ事故防止ハンドブックの表紙 眼の外傷対応フロー  眼を打った ⇒ 目が開かない(まぶたの腫れ、痛み)⇒ 眼科受診 ⇒ 目が開く ⇒ 見えない ⇒ 眼科受診 ⇒ 見える  ⇒ ぼやける  ⇒  ⇒ ダブる   ⇒ ⇒ 白目が赤い ⇒ ぼやける、ダブる、白目が赤い ⇒ 様子を見る(症状改善しない)⇒ 眼科受診 眼に入った ⇒ ひとみや白目に何かが刺さっている、貼りついている ⇒ 眼科受診 ⇒ 痛がっているが、ひとみや白目に刺さっていない ⇒ 眼を洗う ⇒ 様子を見る(症状改善しない) ⇒ 眼科受診 ⇒ 擦った後などに白目がブヨブヨしている、痒い ⇒ 眼を洗う ⇒ 様子を見る(症状改善しない)⇒ 眼科受診 ⇒ スキーや海水浴後、数時間後,眼の痛み、充血、かすみ ⇒ 眼を暖める ⇒ 様子を見る(症状改善しない) ⇒ 眼科受診
 

3 成果  

 フローチャートを作成し、症状と対応の流れが視覚化されたことで、誰が対応に当たっても救急搬送の必要性等について速やかに判断できるようになる等、救急体制の見直しとスムーズな対応につなげることができた。
 本研究は、養護教諭がこれまであまり積極的に関わることのなかった部活動の安全管理をテーマにした取組であった。「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」「和歌山県運動部活動指針」等において、部活動は生徒の自主的、自発的活動を促すことを目的としていることや心身の健康を培うこと、また、事故防止、安全確保に注意した指導について記載されていることからも、引き続き養護教諭の専門性を発揮していくことが必要である。 
 
おわりに
 野田指導主事より、今回の分科会でスポーツ事故防止ハンドブックの活用について話したところ、参加した養護教諭から「コンパクトにまとまっており、とっさの災害発生の対応時にも便利で使いやすく、救急バッグ等に入れやすいサイズである。」との感想があったとうかがいました。
 生徒の負傷や疾病の状況については、養護教諭だけでなく学校全体で情報を共有するとともに、連携を図りながら全職員が事故の未然防止・再発防止に努めていただくことが重要です。
 学校安全Webで公開している「学校事故事例検索データベース」や「学校の管理下の災害」で事例を検索、分析したり、「学校現場の取組(事故防止対策)」に掲載している災害の再発防止対策事例を参考にしたりする等、事故防止対策の取組に活用していただけると幸いです。 
 

 

ページトップへ