ホーム > 学校現場での取組(事故防止対策) > 名古屋地域 > 名古屋☆通信 第104号(2015.08)

名古屋☆通信 第104号(2015.08)

 
 第104号 事故防止事例
-学校の管理下における熱中症について-
 
  今年の夏は各地で記録的な猛暑となっています。今回は、学校の管理下における熱中症について紹介します。
 
近年では、熱中症予防のための啓発が盛んに行われるようになり、学校においても様々な資料を活用し、熱中症予防に努められていることと思います。しかしながら、熱中症により給付を行った件数は、依然として減少するには至っておりません。
 
そこで、名古屋事務所管内7県(富山、石川、福井、岐阜、静岡、愛知、三重)で実施した災害共済給付によって得られた「熱中症の傾向」及び「災害事例」と「学校の再発防止の対応例」をまとめてみましたので参考とされてはいかがでしょうか。
 
熱中症とは
暑さの中で起こる障害の略称です。大きく次の4つに分けることができます。
熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病 出典:熱中症はこんな病気です ! -熱中症で起こるこんな障害-:啓発資料「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」(平成26年3月刊)の2頁の一部

1. 災害の現状


 
平成25年度に名古屋事務所で給付を行った164,931件の災害(発生件数)のうち、「熱中症」と判断できる730件を抽出しました。

平成21~25年度 熱中症 発生件数 平成22年度から横ばいとなっている。平成21年度234件、平成22年度697件、平成23年度724件、平成24年度667件、平成25年度730件 平成25年度熱中症発生件数 学校種別 高等学校、中学校で多く発生している。 小学校64件8.8%、中学校309件42.3%、346件47.4%、高等専門学校4件0.5%、幼稚園2件0.3%、保育所5件0.7% 月別 7月がピークとなっている。 4月5件、5月43件、6月71件、7月364件、8月172件、9月55件、10月12件、11月3件、1月0件、2月2件、3月3件 発生時刻別 11時・14時に多く発生している。 7時以前4件、8時26件、9時40件、10時79件、11時108件、12時64件、13時64件、14時94件、15時89件、16時77件、17時54件、18時21件19時以降10件 発生場所別 屋外での発生が70%以上を占めている。 屋外72.5%、屋内27.5% 発生場合別 教科、特別活動(学校行事を含む)、課外指導とも体育活動中に多く発生している。課外指導60.6%、特別活動(学校行事含む)27.0%、各教科等10.3%、休憩時間・通学中2.7% 課外指導60.0%の内訳 体育的部活動90.2%、文化的部活動7.3%、その他2.5% 特別活動(学校行事含む)27.0%の内訳 競技大会・球技大会43.2%、運動会・体育祭24.9%、宿泊行事9.1%、その他22.8% 各教科等10.3%の内訳 保健体育(小学校「体育」含む)60.0%、総合的な学習の時間8.0%、その他教科22.7%、保育9.3% 体育的部活動/保健体育・特別活動(学校行事含む) スポーツ種目別発生傾向 体育的部活動では野球、テニス、サッカー(フットサル含む)、バスケットボールの順に、保健体育(小学校「体育」含む)等では陸上競技、ドッジボールの順に高くなっている。 サッカー 体育的部活動45件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)6件、野球 体育的部活動69件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)1件、ソフトボール 体育的部活動18件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)5件、テニス 体育的部活動50件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)1件、バスケットボール 体育的部活動43件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)5件、バドミントン 体育的部活動22件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)2件、バレーボール 体育的部活動32件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)13件、ハンドボール 体育的部活動15件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)0件、卓球 体育的部活動16件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)1件、ドッジボール 体育的部活動0件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)19件、陸上競技 体育的部活動34件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)23件、水泳 体育的部活動3件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)7件、剣道 体育的部活動21件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)0件、柔道 体育的部活動9件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)1件、その他 体育的部活動18件、保健体育(小学校「体育」含む)・特別活動(学校行事含む)8件
 
 

2. 災害の事例と再発防止の対応例



事例1
 
 学年・性別:高1、高2、高3 男・女 発生月:6月、気象状況:晴れ・気温25.3度・湿度68%、発生時刻:12:00、場所:学校外・運動場、場合:特別活動・体育的行事、競技種目:陸上(持久走)、発症人数:18人(女17人 男1人) 災害発生状況:陸上競技場にて、全校生徒参加によるスポーツテスト(運動能力調査)を行っていた。朝から「ハンドボール投げ」2投、「立ち幅跳び」2本、「50m走」2本行い、正午近くに行われた「1000m持久走」終了後、一人がうずくまって動けない状態となった。救急車到着後、救急隊員の呼びかけにより20名近くの生徒の気分が優れないことを訴えた。その日は梅雨の合間の晴れで、夏日であった。 応急手当の状況など:そのことに気づいた体育教諭が背負って救護室に運んだ。症状を確認したところ、脈拍が高い状態であった。熱中症を疑い、氷で冷やした。競技場関係者が救急車を要請、養護教諭は競技場近くの病院へ受け入れができる状況か連絡した。救急車到着後、救急隊員の指示に従い、救急車と学校のマイクロバスに分け、近くの病院へ搬送した。
 事例1の災害発生時の学校の管理体制


・前日に各担任教諭から生徒へ、タオル、飲み物、冷やすものの持参について指示を出し、当日、学校からは業務用クーラーボックスに氷、AEDを用意していた。
・各自で空き時間に水分をとるようにこまめに声をかけていた。(一斉に水分補給の時間を設けるようなことはなかった。)
・教諭は管理職も含め全員で引率、指導監督していた。
・スポーツテストを意識し、5月の体育の際は外周走を取り入れていた。


事例1の災害後の安全指導・改善事項

 

・会場(学校外・競技場)でのテント設営を増やし、水撒きも行うこととした。
・水分補給を教職員でも確認できるよう「飲み物タイム」として水分補給の強制時間を設けることとした。
・養護教諭と保健委員の生徒による「生徒保健推進講習会」にて、「熱中症」をテーマに全校生徒によるアンケートを実施、文化祭にて発表を行った。

 
事例2
 学年・性別:中学2年・女、発生月:7月、気象状況:晴れ・気温35.1度・湿度65%、発生時刻:18:20、場所:運動場、場合:体育的部活動中、競技種目:ハンドボール、発症人数:5人、災害発生状況:ハンドボール部の練習中に15分間ランニングを行っていた。ランニングの様子を見ていた顧問が、走るスピードが遅くなったことや顔色が悪くなっている生徒がいることに気付いた。練習を途中で中断させ、各自で水分補給、アイシングを行うよう指示した。その後、木陰に部員を集め、座らせて話をしていたところ、5名の生徒の呼吸が荒くなり、ぐったりとなった。 応急手当の状況など:顧問が、冷却枕、凍らせたペットボトル等で身体を冷やし、楽な姿勢をとらせた。他の教諭も加わり、処置をしながら担架で生徒を保健室、応接室、玄関へ順次運んだ。教務主任は救急車を要請し、計3台の救急車で病院へ搬送した。顧問は、それぞれの家庭に電話連絡し、状況を説明した。
事例2 災害発生時の学校の管理体制

 

・職員室及び保健室に、経口補水液、氷嚢、凍らせたペットボトルを常備していた。
・養護教諭が1日3回(朝、昼、15時頃)WBGT※を測定し、測定結果を職員室に掲示し情報を共有していた。
・学校保健委員会において『熱中症』の講習会を開催し、教諭、生徒会役員、学級代表、各部活動代表が参加した。
・練習中は、水や持参のお茶等により、自主的に水分補給をするよう指示していた。
・顧問は、練習場所に散水を行いながら指導をしていた。

※WBGT(湿球黒球温度)とは・・ 暑さ寒さに関係する気温、湿度、輻射熱、気流の4要素を                    取り入れた、温度環境を評価する指標


事例2の災害後の安全指導・改善事項

 

・管理職も直接指導に当たるようにし、監督指導を2名体制にした。

・水分補給、休憩を十分に取るよう再度指導した。

・スポーツドリンクの持参を許可することとした。

・養護教諭より全職員に資料を配り、緊急時の対応について再確認した。 


3. 熱中症の予防の原則

●熱中症は予防できる!

 

1 環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給を行うこ

 暑い時期の運動はなるべく涼しい時間帯にするようにし、休憩を頻繁に入れ、こまめに水分を補給する。WBGT等により環境温度の測定を行い、次ページの「熱中症予防運動指針」を参考に運動を行う。汗には塩分も含まれているので水分補給は0.1~0.2%程度の食塩水がよい。運動前後の体重を測定すると水分補給が適切であるかがわかる。体重の3%以上の水分が失われると体温調節に影響するといわれており、運動前後の体重減少が2%以内におさまるように水分補給を行うのがよい。激しい運動では休憩は30分に1回とることが望ましい。 

 2 暑さに徐々に慣らしていくこと

 熱中症は梅雨明けなど急に暑くなったときに多く発生する傾向がある。また、夏以外でも急に暑くなると熱中症が発生する。これは体が暑さに慣れていないためで、急に暑くなった時は運動を軽くして、1週間程度で徐々に慣らしていく必要がある。週間予報等の気象情報を活用して気温の変化を考慮した1週間の活動計画等を作成することも大事である。

 3 個人の条件を考慮すること

 肥満傾向の者、体力の低い者、暑さに慣れていない者は運動を軽減する。特に肥満傾向の者は熱中症になりやすいので、トレーニングの軽減、水分補給、休憩など十分な予防措置をとる必要がある。
 また、運動前の体調のチェックや運動中の健康観察を行い、下痢、発熱、疲労など体調の悪い者は暑い中で無理に運動をしない、させない。

 4 服装に気をつけること
   服装は軽装とし、吸湿性や通気性のよい素材にする。直射日光は帽子で防ぐように
   する。

 5 具合が悪くなった場合には早めに運動を中止し、必要な処置をすること

 ★ 以上のポイントに注意して、体調が悪くなったらすぐに運動を中止し、適切な
     応急手当など必要な措置をとりましょう! また、一方的に怠けなどと判断し
     て放置せず、冷静に症状を観察・判断し、迅速に対応しましょう!

                                     
                         出典:「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」
  
 熱中症の中・高校生徒と手当
 
                         危険(運動は原則中止)WBGT温度:31℃以上 気温(参考):35℃以上WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき。  厳重警戒(激しい運動は中止)WBGT温度:28~31℃気温(参考):31~35℃WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運用は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。   警戒(積極的に休息)WBGT温度:25~28℃気温(参考):28~31℃WBGT25℃以上では、熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。  注意(積極的に水分補給)WBGT温度:21~25℃気温(参考):24~28℃WBGT21℃以上では、熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。  ほぼ安全(適宜水分補給)WBGT温度:21℃まで気温(参考):24℃までWBGT21℃以下では、通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。 1)環境条件の評価にはWBGTが望ましい  2)乾球温度を用いる場合には、湿度に注意する。湿度が高ければ、1ランク厳しい環境条件の運動指針を適用する。 ※スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(公益財団法人日本体育協会)平成25年4月改訂
  出典:「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」-」 

4. 学校における熱中症予防のための指導ポイント
 
 

 1 直射日光の下で、長時間にわたる運動やスポーツ、作業をさせることは避けましょう。 

 2 屋外で運動やスポーツ、作業を行うときは、帽子をかぶらせ、できるだけ薄着をさせま
     しょう。 

 3 屋内外にかかわらず、長時間の練習や作業は、こまめに水分、(0.1~0.2%食塩水
  あるいはスポーツドリンク等)を補給し適宜休憩を入れましょう。また、終了後の水分補給
  も忘れないようにしましょう。 

 4 常に健康観察を行い、児童生徒等の健康管理に注意しましょう。 

 5 児童生徒等の運動技能や体力の実態、疲労の状態等を把握するように努め、異常が
  見られたら、速やかに必要な措置をとりましょう。 

 6 児童生徒等が心身に不調を感じたら申し出て休むよう習慣付け、無理をさせないように
      しましょう。
スポーツドリンクを飲む中・高校生徒

☆また、日頃から、緊急時の対応のために校内対策チームを組織し、熱中症対策について教職員の共通理解を図り、応急手当の研修を実施したり、学校医、消防署、教育委員会、家庭等への連絡方法等を明確にしたりして、救急体制を確立しておきましょう。

 

出典:「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」

 

 5. 熱中症予防と体育・スポーツ活動の進め方
 

 暑い夏で無理に運動しても、トレーニングの質が低下する上、消耗が激しく、効果は上がりません。熱中症予防は、安全面だけでなく効果的トレーニングを行う上でも、大変重要です。

 熱中症事故の実態からは、予防のポイントとして、以下のことが挙げられます。

 
 1 熱中症事故は、夏のごく普通の環境条件下で発生しています。夏は、個人の条件や運動
     の方法によっては、いつでも熱中症は起こり得ることを認識しましょう。また、マラソンなど
     の学校行事では夏以外でも熱中症事故が発生しています。
 
2 運動種目は多岐にわたりますが、野球、ラグビー、サッカー、柔道、剣道で多く発生しており、
   これらの種目では、特に注意しましょう。また、運動種目にかかわらず、ランニングや
   ダッシュの繰り返しによって多く発生しています。ラグビー(タックル)(生徒)
 
3 暑さの耐性は、個人差が大きく影響します。特に肥満傾向の人は熱中症
   事故の7割以上を占めており、注意が必要です。

                             
                          出典:「熱中症を予防しよう -知って防ごう熱中症-」
 6. 熱中症対応フロー

熱中症対応フロー   熱中症を疑う症状 ( 四肢や腹筋のけいれん(つる)と筋肉痛が起こる。 全身倦怠感、脱力感、めまい、吐き気、嘔吐、頭痛などが起こる。  頻脈、顔面蒼白となる。  足がもつれる・ふらつく・転倒する、突然座り込む・ 立ち上がれない 等 )意識障害の有無(質問をして応答をみる  ここはどこ? 名前は? 今何をしてる?)(応答が鈍い  言動がおかしい   意識がない 等)あり 救急隊を要請 病院へ!脱衣と冷却 すぐに救急車を要請し、同時に応急手当を行う。 意識障害がなければ涼しい場所への避難 涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせる 脱衣と冷却 救急車到着までの間、積極的に体を冷やす。水をかけたり、濡れタオルを 当てて扇ぐ。One point! 氷やアイスパックがあれば、頚部、脇の下、足の付け根などの大きい血管を冷やすのもよい!※ できるだけ迅速に体温を下げることが できれば、救命率が上がります!! 水分摂取ができるか できなければ病院へ(体を冷やしながら、設備や治療スタッフが整った集中治療のできる病院へ一刻も早く搬送しましょう!!) できるのであれば 水分塩分を補給する。 0.1~0.2%食塩水あるいはスポーツドリンク  熱けいれんの場合は生理食塩水(0.9%)などの濃いめの食塩水を補給する 症状改善の有無 なければ病院へ(体を冷やしながら、設備や治療スタッフが整った集中治療のできる病院へ一刻も早く搬送しましょう!!) 症状が改善すれば経過観察
                      出典:教材カード平成26年7月号「熱中症に注意しよう(教職員向け)」
 7. センター刊行物等の紹介

 ホームページよりダウンロードできますので、是非ご活用ください。

 ・3~6 出典元
 
熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-
 
 ・熱中症予防の書籍
 
体育活動における熱中症予防 調査研究報告書
 
 教材カード  

 

ページトップへ