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学校現場での取組(事故防止対策) 広島第72号(2018.9)

第69回 山口県立宇部高等学校文化祭 保健委員会企画
「スタンプラリー めぐって知ろう!救急処置!」
 
 
 第69回山口県立宇部高等学校文化祭において、保健委員会が「スポーツ事故防止ハンドブック」(以下「ハンドブック」という。)や教材カードなどを参考に、救急処置をテーマにしたスタンプラリーを企画しました。
 「ハンドブック」や教材カードがどのように活用されたか、文化祭の様子を取材したので、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下センターという。)が提供している事故防止のための資料等の活用事例として報告します。
 今回の取材は、「文化祭で、保健委員会が救急処置をテーマにしたスタンプラリーを企画しています。その中で、『ハンドブック』を使いたいので送ってください。」との電話依頼を受け、その際にお願いしたものです。 
 

宇部高等学校保健委員会 

 保健委員会は各クラスから保健委員を男女1名ずつ選出し、全学年19クラス、38名からなります。普段の活動は、各種健康診断の会場設営や補助、夏季には各教室の冷房管理をしています。
 文化祭後は、1、2年生を中心に、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、保護者代表、職員代表、生徒代表からなる学校保健委員会会議への参加と健康教室(全校生徒、教職員、保護者対象)で発表をする予定です。
 また以前にもスタンプラリーを実施しており、過去2年間の企画については次のとおりです。

平成28年度:「心がスカッとね!!Let’sストレス解消めぐり」
 校内をめぐって保健委員が用意したストレス解消の行動をして、ストレス解消の方法等について学び、
最後に景品を渡しました。

平成29年度:「食と健康の館」
   保健室内に食に関する様々な展示コーナーを設け、体脂肪や咬合力の測定体験をしてもらい、
食や健康についての知識を深め、参加者には景品を渡しました。              

 

 文化祭レポート(体験してみて…) 

 校内で様々な催しが行われる中、スタンプラリーの拠点となる保健室の前では、保健委員の生徒たちが看板を持って、大きな声で「スタンプラリーに参加してください!」と宣伝をしていました。 
 
  保健室の前で看板を持っての宣伝や、スタンプラリーカードを配布する保健委員  
 
 
 また保健室前の廊下には、救急処置に関する情報の掲示物が貼り出されていました。 
 
■ 保健室掲示物

 掲示物は、「熱中症」について、4つの症状を色分けして分かりやすく解説したものと、熱中症、水泳事故、歯のけがそれぞれの「応急手当」についてまとめたものです。 
 
  掲示物「熱中症について」
 熱射病:体温調節が破綻して起こり、高体温と意識障害が特徴。全身の多臓器障害を合併し、死亡率が高い。→救急車を要請し、速やかに冷却処置を開始する。(救急車のイラスト)熱疲労:脱水によるもので、めまい、吐き気、頭痛などの症状が起こる。→食塩水やスポーツドリンクなどで、水分・塩分を補給する。通常回復する。(スポーツドリンクのイラスト)熱けいれん:大量の発汗があり、水のみを補給した場合に血液の塩分濃度が低下して起こる。四肢のけいれん・筋肉痛→食塩水の補給や点滴により通常回復 熱失神:炎天下にじっとしていたり、立ち上がったりした時、運動後などに起こる。→足を高くして寝かせると通常はすぐ回復する。
参考:独)日本スポーツ振興センター「熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―
 
  掲示物「応急手当」 
 応急手当 けがや事故の状況により応急手当は変わってきます。■熱中症 身体を冷やそう!涼しいところに運んで、衣服を緩ませて寝かせる。氷などで脇の下などを冷やす。水分補給しよう!スポーツドリンクや、0.2%の食塩水などを摂取すると効果的! ■水泳事故(呼吸がない場合) すぐにAEDを装着!身体が濡れているため、装着部を拭いてから、パッドを貼る。すぐに心肺蘇生!溺水者は速やかに人工呼吸をし、脈がなければ胸骨圧迫を行う。 ■歯のけが(歯が抜けた場合) 歯を乾燥させない!「保存液」や「牛乳」に浸して、すぐに歯科医院へ。歯根部分に触らない!抜けた歯の再植のためには、歯根に付着した歯根膜細胞が生きているのが条件!
 
 
■ 保健委員会スタンプラリー「めぐって知ろう!救急処置!」   

 スタンプラリーは、参加者に正しい救急処置の知識を持ってもらうことを目的とし、校内4箇所に設置されたパネル(①~④)をめぐり、カードにキーワードを記入し、スタンプを押して、保健室で景品と交換するというものです。
 パネルのテーマは「熱中症」「頭頚部外傷」「眼のけが」「歯と口のけが」で、これらはハンドブックや教材カードを参考にして作成されています。参加者はテーマごとに出題されたキーワードを記入しながら、事故防止について学習していきます。

 保健委員から記入カードを受け取り、裏面の校内地図を見ながらパネルを探し、実際にスタンプラリーを体験してみました。
 
 パネル①熱中症
      参考:教材カード(平成30年5月号)
保健委員会スタンプラリー パネル①夏が来る前から、急に気温や湿度が上がった時など熱中症は発生しています。・棒グラフ 縦軸;件 横軸:月 平成27年(総数4,465件)平成28年(総数4,713件) 全学校種総数、平成27,28年度 災害共済給付データ(医療費)より  グラフ概要:平成27,28年とも1月から12月まで0件の月はなく、27年は7月に約1,800件、8月に約1,200件、28年は7月に約1,500件、8月に1,200件発生 ■7月、8月はもちろん5月、6月でも400件~500件発生しています。※秋や冬でも発生することがあります。・熱中症発生の要因(基本ベン図) 円1:個人(・体力、体格の個人差 ・健康状態、体調、疲労の状態 ・暑さへの慣れ ・衣服の状態) 円2:運動(・運動の強度、内容、継続時間 ・水分補給 ・休憩のとり方) 円3:環境(・気温、温度の高さ ・直射日光、風の有無・急激な暑さ) 重複部:熱中症発生!!・もし、まわりに体調の悪そうな人がいたら… ①涼しい場所へ移動させる ②水分(←キーワード)を補給させる ③衣服をゆるめ、体を冷やす 症状が改善しない場合は119番通報!参考:日本スポーツ振興センター 
 
 パネル②頭頚部外傷
      参考:スポーツ事故防止ハンドブック 
保健委員会スタンプラリー パネル② 頭頚部外傷事故発生時の対応フローチャート ・頭頚部外傷発生→意識障害の有無を確認注1/なし→頚髄・頚椎損傷の疑いを確認注2/なし→脳震盪症状の有無を確認注3/なし→保護者に連絡して家庭で観察/帰宅後異常あり→速やかに脳神経外科を受診・頭頚部外傷発生→意識障害の有無を確認/あり→「119番通報、AEDの手配」→頚部の安静に留意し呼吸の確認/呼吸なし、わからない→心肺蘇生の開始、AEDの使用 /呼吸あり→呼吸、体動などを再評価、救急隊の到着を待つ・頭頚部外傷発生→意識障害の有無を確認/なし→頚髄・頚椎損傷の疑いを確認/あり→「119番通報、AEDの手配」の流れと同様・頭頚部外傷発生→意識障害の有無を確認/なし→頚髄・頚椎損傷の疑いを確認/なし→脳震盪症状の有無を確認/あり/回復しない→「119番通報、AEDの手配」の流れと同様  脳震盪症状の有無を確認/あり/すぐに回復→速やかに脳神経外科を受診 注1 意識障害の確認例 ・開眼していない ・話すことができない・時、場所、人が正確にわからない ・外傷前後の事を覚えていない 注2 頚髄・頚椎損傷の疑い ・運動マヒ、筋力低下、しびれ、異常感覚 注3 脳震盪症状の有無を確認 ・頭痛、吐き気、気分不快、けいれんや普段と違う行動パターン、バランステストの異常等 参考:日本スポーツ振興センター 
 
 パネル③眼のけが
      参考:教材カード(平成29年4月号) 
保健委員会スタンプラリー パネル③ もし眼にものが当たってしまったら…! 大切な眼をけがから守ろう!・事故発生時の対応 ①眼を無理に開かせない。 ②強く押さえない。 ③外傷部分に異物が入らないように覆う。 ④眼と眼の周辺を清潔に保つ。 ⑤化学物質が眼に入った場合は十分に洗い流す。(←キーワード)  ■眼のけがは、痛みが強くなくても重症となる場合があります。また、けがをした直後は痛くなくても帰宅後や数日後に異常が現れる場合もあります。異変を感じたときは、眼科を受診しましょう。・POINT(ネット型競技) □練習時は十分なスペースを作ろう。 □ネット張りの際は、ポールの上にある滑車が曲がっていないことを確認してクランク(ネットをまく道具)を回すようにしよう。 □打ち返しの練習をする時は、余裕をもって交代しよう。 □レベルに応じたグループ分けをしよう。・こんなに多い眼のけが(円グラフ) 障害種別総数1,564件中 眼の障害440件(約3割) グラフ概要:眼の障害に次いで歯の障害が433件、上肢下肢障害が226件、精神神経系統143件、醜状障害128件、胸腹部臓器障害70件、心機能55件、その他69件です。 参考:日本スポーツ振興センター 
 
 パネル④歯と口のけが
       参考:教材カード(平成28年4月号) 
保健委員会スタンプラリー パネル④ 知っていますか?歯と口のけがの手当 ~歯が抜けても、適切な対応をとれば、再植が可能です。※再植:元の位置に歯を戻すこと ・重要ポイント 1.歯ぐきの傷口を清潔にし、出血箇所はガーゼ等でおさえて止血する。2.抜けた歯や折れた歯は、あきらめないで探す。3.抜けた歯の根元を持たない 4.歯を乾燥させないようにし、歯の保存液に浸ける。(牛乳でも代用可) ※歯に泥等が付いていても構わないので、洗わずに保存液に入れてよい 5.30分以内に(できるだけ早く)歯科医院を受診する。・抜けた歯の保存可能時間の比較表 保存状態→保存可能時間 歯の保存液→48時間 牛乳→24時間 唾液(口の中)→1時間 生理食塩水(0.9%濃度)→1~2時間 精製水→30分 乾燥→30分・抜け落ちた歯を元に戻すには「歯根(←キーワード)」が大切です。歯の再植には歯根に付着している歯根膜細胞が生きていることが条件です。・歯根部の図解 歯根:歯の下部の歯槽骨の中に入っている部分・正しい持ち方の図解 正しい持ち方:歯の根元を持たない 参考:日本スポーツ振興センター 
 
 4箇所をめぐり、カードを完成させて景品交換所である保健室に戻りました。
 景品は、「ハンドブック」とお菓子が入ったものを50個、全て配布し終わったときのために、「ハンドブック」から「熱中症対応フロー」と「心停止に対する応急手当」について抜粋したメモを入れたものを100個準備されていました。 
 
  スタンプラリー景品交換所案内板
   「いざというとき 超役立つハンドブック さしあげます」  
 
 
  景品 
   左:メモ入り景品   右:ハンドブック入り景品
 「スポーツ事故防止ハンドブック」の配布は終了しました。保健委員会のスタンプラリーに参加していただき、ありがとうございました。H30宇部高保健委員会 熱中症対応フロー ・熱中症を疑う症状→意識障害確認/なし→・涼しい場所へ避難・衣服をゆるめて寝かせる→水分摂取ができるか確認/できる→スポーツドリンクを補給する/改善→経過観察 水分摂取ができるか確認/できない→病院へ スポーツドリンクを補給する/改善しない→病院へ ・熱中症を疑う症状→意識障害確認/あり→・119番通報、応急手当→・涼しい場所へ避難・衣服をゆるめて寝かせる→救急車到着まで積極的に体を冷やす→病院へ
 
  景品に入れたメモ 
   (表):熱中症対応フロー
          参考:スポーツ事故防止ハンドブック
 「スポーツ事故防止ハンドブック」の配布は終了しました。保健委員会のスタンプラリーに参加していただき、ありがとうございました。H30宇部高保健委員会 熱中症対応フロー・熱中症を疑う症状→意識障害確認/なし→・涼しい場所へ避難・衣服をゆるめて寝かせる→水分摂取ができるか確認/できる→スポーツドリンクを補給する/改善→経過観察 水分摂取ができるか確認/できない→病院へ スポーツドリンクを補給する/改善しない→病院へ ・熱中症を疑う症状→意識障害確認/あり→・119番通報、応急手当→・涼しい場所へ避難・衣服をゆるめて寝かせる→救急車到着まで積極的に体を冷やす→病院へ
 
  景品に入れたメモ
   (裏):心肺停止に対する応急手当
          参考:スポーツ事故防止ハンドブック 
心停止に対する応急手当(フロー)迅速な通報と心停止の認識、初めの2~3分間に取る行動が、その者の救命を決定する!!・傷病者発見→反応の有無を確認注1/反応なし・わからない→119番通報/AED→呼吸の有無を確認注2/呼吸なし・わからない→ただちに心肺蘇生・注1「反応あり」の場合は、観察する。 注2「呼吸あり」の場合は、気道の確保、応援・救助隊を待つ。・胸骨圧迫→気道確保→人工呼吸の手順で・心肺蘇生、ただちに胸骨圧迫!、少なくとも100回/分→人工呼吸ができる場合は30:2で胸骨圧迫に人工呼吸を→AED→心電図解析→その後はAEDの指示に従う→救急隊に引き継ぐまで、心肺蘇生を続ける 
 
 参加者が景品と交換したスタンプラリー完了のカード。
 この後もたくさんの参加があり、50部用意した「ハンドブック」は全てなくなりました。参加者総数104名でした。 
           
 
 
 スタンプラリーを体験して、パネルは色分けをするなど工夫されていて、とても見やすく分かりやすくまとめられていると思いました。また、景品に入れたメモは、サイズ感や折り方が可愛く作られており、開いて読んでみたいと思わせるものでした。
 これらの作成物は、保健委員がハンドブックを参考にしながら、参加者に情報が伝わるように考えて構成し、手作りしたものです。このことで、事故発生時の対応や事故防止について、知識としてしっかりと身についたのではないかと感じました。  
 

保健委員に感想を聞きました 

■ 救急処置のスタンプラリーを実施してみてどうでしたか?

・ 掲示物を作成することで、救急処置の内容をよく理解できた。
・ 歯が折れたときは牛乳に浸けるとよいと初めて知った。
・ 熱中症にかかる人が5月から急に多くなっているのにびっくりした。
・ 準備は大変だったけど、当日参加してくれる人が多く嬉しかった。
・ 分かりやすい掲示物を作るため、色使い等に気を使った。
・ 景品のハンドブックの内容が、役に立つものなので良かった。
・ 来年はもっと参加者を増やすために、校内をめぐる形ではなく、保健室内で参加できるタイプにするとよい。
・ みんなシフトを守り、責任感があった。 
 

養護の中村先生に聞きました 

■ スタンプラリーの企画立案、実施の目的を教えてください。

 今年度から本校に着任しました。毎年文化祭には生徒保健委員会で参加していると聞き、今年度の内容について保健主任と相談をしました。
 本校生徒について、着任してからの気付きとして、負傷した際に止血をしながら来室する姿や、熱中症の疑いがある友達にすぐに、校内の自動販売機で購入したイオン飲料を渡す姿などを見て、救急処置の基礎知識が身に付いていると感じました。今後は自分だけでなく、周囲の人も助けられるような技術や知識を確実に身につけさせたいと感じ、文化祭で救急処置について企画することにしました。
 また、検診補助等の活動で、責任感の強さを感じたので、シフト作成も生徒に任せて、教員はあまり関わらないようにしました。そういった中で、自分のクラスのシフトと被った際は調整に奔走したり、どうしても都合がつかず困ったときは事前に申し出て、ギリギリまで対応する形を取ったり、前日にはシフトの確認に来たりする姿から、一層の責任感がついたと感じました。
 掲示物の作成では、センターの教材カードを基本に、何グループかに分かれ作成しましたが、生徒自身がレイアウトや色彩などを工夫していました。作成途中で、「歯が折れたときは牛乳がいいんだ」とか「熱中症、5月からもうやばいね」とか「熱中症、冬もあるんだ」といった感想を口にする生徒もいて、他のグループの掲示物にも関心を示す様子がありました。

■ 実施後の生徒の変化や事故防止の効果等、気付きがあればお願いします。

 取組後、あまり時間が経っていないので、実践力が身に付いたかどうかは不明ですが、その後の保健委員の集合の呼び掛けには、以前にも増して集まり方が良くなった気がします。今後もAEDを運動場の端から実際に取りに行って、何分かかるのか検証をするなど、救急処置についての取組を進めたいと思っています。

■ 今後、「ハンドブック」に取り入れてほしい事項があれば教えてください。

・大出血の際の止血点や止血法
・食物依存性運動誘発アナフィラキシー

 

取材を終えて 

 これまでも学校からハンドブックを送って欲しいとの依頼があり、その目的の多くは教職員の研修に使用するためでしたが、今回の文化祭では、保健委員会の生徒が主体となり、催しを企画し、その中で使用していくというものでした。
 保健委員は、パネルや掲示物などの準備を通して、救急処置の知識を身に付けることができ、スタンプラリー参加者は、イベントとして楽しみながら、救急処置について知る機会となったのではないでしょうか。取材をさせていただき、こういった安全教育もあるのだと、とても興味深く拝見しました。ハンドブックはそのきっかけとしての役目を大いに果たしたのではないかと自負しています。

 これからもセンターの提供する事故防止の資料を、安全教育や職員研修等さまざまな形で活用していただけるよう、発信していきます。
 最後に、宇部高等学校保健委員、スタンプラリーに参加した生徒たちの間で、今回の成果がどのような形で現れるのか、1年後、2年後を見守っていきたいと思います。 
 

 

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