スポーツと二人三脚

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第23回 中国・温家宝首相が見えたのに! 2007年4月24日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 4月に「日中両国の氷を溶かす旅にしたい」と中国の温家宝首相が来日された。
政治的な話はもちろんだが北京オリンピックを来年に控え、当然、話題になると期待していたのに残念ながらあまり話題にされなかったようである。

 中国では2008年の北京オリンピックを国家的行事として取組んでいると聞いている。
 スポーツ人として、またオリンピックに関係してきた1人として、「北京オリンピックの成功を期待するとともに日本選手団もお世話になるのでよろしく」との発言が折に触れてあっても良かったのではないかと思っている。

 ところが、温家宝首相は、天皇陛下と会見された折、 陛下が北京オリンピックについて「準備の状況はいかがですか」と質問されると、「うまくいっています。開会式には天皇陛下と皇族の方々に来ていただきた い」と陛下の訪中を要請されたとの報道がなされていた。

 天皇陛下のスポーツに対するご関心の高さに嬉しく思うとともに、温首相が日本滞在中、北京オリンピックのロゴ入り運動着姿でジョギングしたり、陛下へ訪 中の要請をされたことなどを知ると、中国の北京オリンピックに対する思い入れの強さが分かるような気がする。

 文化大革命の混乱などで孤立していた中国が国際舞台登場への第一歩を刻み、建国以来の国際的孤立状態から脱け出すきっかけとなったのは、1971年、名 古屋で開催された世界卓球選手権大会への初参加であった。これをピンポン外交と言っている。その成功の影には、日中の卓球関係者の長い交流の歴史があった と伺っている。

 このピンポン外交の成功が証明しているように、またスポーツが多くの国家間の国際的友好親善に貢献していることを思うとき、両国間の氷を溶かすのにはスポーツが一番ではないかと思っている。
 中国首脳がせっかく来日したのに、オリンピックという題材があるのに、そのことが大きな話題にならなかったことが、スポーツに関係する者として非常に残念に思ってしまう。
 まだまだ日本にはスポーツ文化は根付いていないのだろうかと。

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