第12回 面(つら)も磨こう
浅見 俊雄
|
 |
|
あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.
|
通勤などの電車の中では、なんとなく吊り広告を見ているか、周りの人の顔 を見ていることが多い。広告からは新聞、TVとはちょっと違った情報が得られて面白いし、さまざまな人の顔を見ながら、この人はどんな人なのだろうかと想 像をめぐらすのも、ちょうどいい暇つぶしになる。
面相見といわずに人相見というように、顔にはその人の窓というか、人間の全体が形や表情となって現れているのだろう。中でも「目は口ほどにものをいい」で、目の表情にその人のさまざまな現在の状態が映し出されているような気がする。
なにか仏頂面をして目に険を持ったような人を見ると、朝の出がけに家庭で何かいざこざがあったのではとか、会社でまずいことがあったのではと想像した り、思い出し笑いをしながら目を細めているような人を見ると、何か幸せなことがあったのではと、こちらも思わず口元がほころんでしまう。
しかし、電車の中では雑誌や新聞を読んでいたり、若い子は携帯でメールに熱中したりしているから、あまり表情を変えないし、特に目を見ることができない ことが多い。それにわずかの時間でも寝ている人が多いのが日本の乗客の特徴でもある。朝ぐらい明るいしゃきっとした顔でいてもらいたいものである。
人の顔つきを見ることから、私もいつ見られてもいいようになるべく明るく楽しそうな顔をしているように努めている。いやなことがあったり、失敗したり、 辛いことがあったときも、表情を明るくしようと心がけていると、物事がいい方に変わっていくような気持ちにもなってくる。内面が表面に出るとともに、表面 が内面に影響を与えるという相互作用があるのだろう。といっても私の目が細いせいか、子どものころからいつも眠っているように見えるといわれていて、これ はいまも直らないでいる。
顔を洗ったりお化粧することもいいが、顔の表情を磨くことが、他人にもいい印象を与えることになるし、それ以上に自分の内面を磨くことにもなると思うのである。 |