スポーツと二人三脚

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第5回 スポーツを知るということは 2005年10月20日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 一昔前の話で恐縮だが、1996年アトランタオリンピックの時のことである。日本選手団本部役員であった現JISSの川原統括研究部長と自転車競技 1000mタイムトライアルで競輪の十文字選手が銅メダルを獲得したレースを応援に行った時の話である。

 自転車競技のタイムトライアルは、1000mを一人で記録へ挑戦するレースなので、長野オリンピック時、長野県知事がスケートはミズスマシみたいにぐるぐる回るだけで面白くないといって大きな話題となったことがあるが、まさに類似の競技である。

 満員の観客(観客席は少ないが)の反応はと見ると、選手達のラップタイムを見てどよめきがあり、記録が良かったり、ラップタイムの上がる選手には大きな 声援を送り、落ちる選手にはブーイングの激励である。観客と選手が一体となって競技を盛り上げようとしていることが伝わり、自転車競技というものをよく理 解して声援していることがわかった。

 オリンピック期間中、このような場面は色々な競技でも多く見ることが出来、自国の選手でも凡プレーには厳しくブーイングを送り、相手チームでもナイススプレーには大きな拍手を送る。

 アメリカの観衆はそれぞれのスポーツを良く知っており、選手達を厳しく、暖かく育てようとしている様子が伺え、決してミーハー的、表面的な応援ではないことを強く感じたのである。

 我が国の状況を見ると、そのスポーツを良く理解しての応援ではなく、芸能人に対する応援と変わらないミーハー的に思えることが多い。

 我が国のスポーツメディアも同様だが、そのスポーツの本質を捉えての報道や応援ではなく、うわべだけになっているように思えてならない。

 表面的な応援ではなく、そのスポーツを良く知り凡プレー、レベルの低いプレーには厳しい声援を送り、ナイスプレーには敵味方問わず拍手を送ることが選手を育てていく上でとても重要ではないかと思っている。

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