大阪かわら版 第63号(2013.12)

目の前で人が倒れたときのために… ~心肺蘇生法講習会~ 
    独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下:JSC)には毎月数多くの災害報告が寄せられます。医療費以外にも、障害・死亡報告もあり、死亡案件の中には、突然死と呼ばれる事例もあります。
    平成20~24年度に災害共済給付の対象となった学校管理下での死亡件数は346件、うち突然死は178件と約半数を占めています。  
 
     事例1:小学校6年   女子   平成23年度給付
                  リレーの練習で約100メートル走り、次走者にバトンを渡し、数歩歩いた後に倒れ、意識不明となった。
                  その後、救急車で病院に搬送したが死亡した。

     事例2:中学校3年   男子    平成22年度給付
                  午前7時40分ごろ、いつも通り自宅前からバスに乗車し、学校へ向かった。車内では座席に座ってい
                  が、午前7時46分ごろ車内で突然倒れ、心肺停止となる。心臓マッサージをし、救急車で病院に搬送
                  後、死亡した。

     事例3:保育所0歳   男子    平成21年度給付
                  登園後、教室でイスにつかまり立ちをして遊んでいたが、突然その場に座りこみ、けいれんらしき動
                  作をして顔面蒼白となり、その場にいた看護師が緊急を察知し、近くの病院の小児科へ搬送した。
                  直ちに心肺蘇生術を施したが、約1時間後に死亡した。
    これらJSCのデータ等を使って、生徒たちによる
心肺蘇生法の講習会が行なわれたと聞き、和歌山
県立向陽中学校の角谷雅美先生に話を伺ってきま
した。

JSC:    どのような講習会でしたか?
先生:    ドクターや講師を招いての講習会ではなく、
          各学年4名、計12名の生徒保健委員たちが、
          訓練前の説明、ダミーを使っての実技訓練な
          どを行ないました。説明や実技に際して、JS
          Cのデータや資料を使いました。
 
            和歌山県立向陽中学校 校舎 

JSC:    なぜ、心肺蘇生を取上げたのですか? 
                     和歌山県立向陽中学校 
先生:    この講習会は平成23年度から実施していますが、平成23
           年の3月には東日本大震災が、9月にはここ和歌山で台風
          12号による甚大な被害がありました。多くの方の命が亡くな
           り、改めて命の大切さ・重さについて考える機会になりまし
           た。
              目の前で人が倒れたときに、どうすればいいのか…今自
          分たちができることのひとつが、その際の対応を学ぶことで
          はないかと考えました。
               また、近隣の学校でAEDを使わなければならない事故
          があったこともあり、私は「死」はいつ身の回りにおこるか分
          からないということを、生徒たちに認識してもらった上で、実
          技訓練を行ないたいと思いました。
        
             AEDのパット装着
JSC:    JSCのデータをどのように利用されましたか?
先生:    死亡に対する突然死の割合や事例を調べました。また、「学校管理下における突然死予防必携」や「応
           急手当(心肺蘇生)カード」を参考にし、実技訓練前に行うプレゼンテーション(以下:プレゼン)資料の作成、
           実技の手順の学習に活用しました。
 
JSC:    教材の作成で、工夫された点や苦労し
            た点はありますか?
先生:    実技訓練を行なうにあたって、生徒たち
           がその必要性・重要性を十分に理解して
           から実施したかったので、プレゼン資料の
           作成にあたっては、分かりやすく印象に
           残る内容にするようにしました。
                また、突然死の発生件数を示すこと
           で、決して少ない数ではないということ
           や、自分たちの学校で心肺停止になるよ
           うな事故が起こった場合に、 救急車の到
            着を待っているだけでは、救急できる可
            能性が少なくなるなどの点を示し、現実
            に自分たちの身近にも起こりうることだと
            いうことを印象付けるように工夫しました。 
      心肺蘇生法のプレゼンテーション資料
                                                                             生徒たちがパワーポイントで作成したプレゼン資料 
JSC:   保健委員が生徒たちの前で発表してみて、反応はいかがでしたか?
先生:    保健委員には、心肺蘇生法について事前に指導し、彼らに訓練の重要性を十分に理解してもらった上で
           プレゼン資料作成、ダミーを使っての練習を行ないました。 
              保健委員自身が内容をしっかり理解し、他の生徒に分かりやすく印象に残るように伝えるためには…と
           いうことで、3年生の委員長を中心に何度も集まり、活発な意見を交わし、熱心に取組むことができました。
           自分たちで作成したプレゼン資料を使っての発表だったため、保健委員は大きな達成感を得たようです。
                また聞く生徒たちも、クラスメイトの発表ということもあってか、熱心に聴いていたように思います。この
           様子は、保健だよりやPTA会報誌にも掲載して、保護者にもお伝えしました。ダミーが5体だったので、全
           員が実技体験はできませんでしたが、印象に残る有意義な講習会になりました。
 生徒が胸骨圧迫をデモストレーション 生徒のAEDパットの取り付けの様子 
                         胸骨圧迫はこうやって                                                      AED取り付けの様子

JSC:    生徒に事故防止等を指導する上で、効果的な方法などありましたらお聞かせください。
先生:     写真が入ったものや、自分の行動をチェックするような掲示物は、有意義だと思います。
 
JSC:    その他、学校で取組まれている安全対策やけがの防止策をお聞かせ
             ください。
先生:    教師の指導の下、毎日徹底した清掃を実施しています。清掃により煩
            雑なものが原因である事故を防ぐとともに、危険箇所をチェックし、改善
            しています。熱中症、食中毒についても、保健だより等をもとに、各学級
           で指導しています。保護者の方々にも御協力いただき、安全対策を行な
           っています。
           
JSC:    いろいろな安全対策をされているのですね。
               心肺蘇生法の訓練に限ったことではありませんが、継続していただくことが、技術の定着につながり
           ます。いざという時のために、重要なことだと思います。
               本日はお忙しい中、御協力いただきありがとうございました。
         
     取材を終えて
 
中高一貫教育の学校であり、「文武両道」が教育目標である向陽中学校。
今回の心肺蘇生講習会の準備でも、養護教諭の先生が必要な資料などを提供し、少し誘導さ れたあとは、ほぼ生徒たち自身で考え、準備を進めたようです。生徒たちが主体的に関わったことで、記憶に残る講習会になったと思います。これからも生徒たちが自主的に実践していく安全教育を期待しています。

 

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