大阪かわら版 第60号(2013.9)

                     子どもの熱中症防止について

  「暑いというより痛い・・・刺すような感じ」「焦げそう・・・」 猛暑日が続く中、外出した際の感想です。今年も体温より高い気温が連日続くなど、異常気象と思われる事態が続きました。  下の表は、平成24年度に大阪給付課が給付した熱中症の件数です。  

 日差しを浴びて汗をかいているイラスト

平成24年度 熱中症の校種別給付件数(大阪給付課担当分より)

保育園

幼稚園

小学校

中学校

高校(全)

高校(定)

高専

合計 

 1

 7

 125

 413

 315

 5

 1

 867


 熱中症による死亡事故も報道される中、社会はもちろん、学校現場でも夏の時期は「熱中症対策」これが一番の課題・関心事なのではないでしょうか。給付件数のうち、約7割が体育や部活動中に発生しています。各学校でも対策は取っているものの、少なからず発生しているのが現状です。  
 今回は、運動会の練習中に起きた熱中症の疑いに関する事案について、その原因・背景を調査した結果と、その後の熱中症予防対策について、今年大阪で一番暑かった豊中市(39.8度)内の小学校に話を伺ってきました。 

 ①  発生の概要  
 平成24年9月下旬の運動会に向けて、5年生のリレーのメンバーが運動場で朝の自主練習を行っていた。2周走った後、自主練習終了後の8時30分から全体練習を開始したところ、自主練習メンバーを含む多数の児童が体調不良を訴えた。  
 最初の体調不良の訴えに始まり、その対応をしている間にも不調を訴える児童が続出したため、全体練習を中止した。当日の気温は23.9度、暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)の指標は25.2~25.6度を示していた。運動会の練習は9月12日から学年ごとに行い、5年生としては10回目、全体練習として2回目だった。
 自主練習参加者と体調不良の児童を保健室に集め、検温・水分補給・冷却などの処置をしていた。回復した児童もいたが、1時間経過しても不調を訴える児童が3名いたため、救急車を要請した。  
 到着した救急隊は、その場にいた23名全員の救急搬送を決め、応援依頼の連絡をとった。児童たちに次々とトリアージタグ(症状の緊急度や重症度により、治療優先順位を識別する札)がつけられた。  
 多数の救急車や消防車、パトカーが出動し(消防車:のべ27台、消防隊員:のべ96名)心配した近隣の住民や保護者が学校に駆けつけ、騒ぎは更に大きくなった。インターネットにその情報が掲載された影響もあってか、マスコミの取材が殺到し、取材ヘリコプターまで飛んでいた状況であった。騒然とした状況の中で、新たに体調不良を訴える児童が続出した。

②  疾病の状況  
 最終的に37名(3~5年)が病院に搬送されたが、症状が軽いものがほとんどであったため、回復した児童は、保健室や搬送先の病院から随時帰宅した。うち1名は症状が治まっていたが、搬送先の病院の判断で観察入院することになった(翌日退院)。

③  発生後の学校の対応・取組み
【運動会当日まで】
・健康観察を徹底し、健康管理に努めた。
・自主練習は中止し、朝の会での健康観察をしっかり行ったうえで、練習に臨むこととした。
・熱中症予防飴を配布し、水分補給と同様に適宜、使用した。
・運動会の日程を延期した(9月29日⇒10月13日)。

【運動会当日の熱中症対策】

・児童観覧席全面にテントを設置した(近隣の学校や自治会等より借用)。
・PTA競技を取りやめて、午前中に20分の休憩を設けた。
・30分に1回水分補給を行い、放送で体調管理を呼びかけた。
・救護室を職員室に設置し、市教育委員会から派遣された看護師も対応にあたった。
 
【運動会以降】
・日々の健康観察の徹底を行う。
・すべての学校行事は、必ず児童の状態を把握してから行う。
・WBGT値が「警戒」を示した時点で運動制限をかけ、授業はもちろん休憩時間に外に出るのを禁止し、屋内で休憩をするよう指導する。
・遮光ネットを拡大する(面積を更に拡大)。
・熱中症対策以外の、気象警報、不審者対策などの対応の文書を「学校安全ファイル」 としてまとめ、教職員に1冊ずつ配布し、緊急時には探すことなく、すみやかに対応できるようにする。また、毎年度末に見直しをして、適宜、差し替える。
・児童が家庭から持参する水分は、スポーツドリンクを可とする。
・プールの授業では、ラッシュガードの使用可とする。
 運動場の横の遮光ネット

遮光ネット 
  運動場の横にある木立を利用しており、児童たちは休み時間に、遮光ネットの下で遊んだり、涼をとったり、体育の授業中に先生の話を聴いたり・・・など、様々な場面で利用している。涼しい木陰に遮光ネットを張ることで、さらに涼しい空間となり、風通りの良さも加わって、とても快適に過ごせる。
校区探検で来校した他校の児童にも好評であった。非常に効果的であったため、今年度には面積が拡大された。

 この小学校では、この事案を深刻に受け止め、以上のような対策を講じました。その後、学校で熱中症を訴える児童はいなくなったとのことです。
 子どもは、体温の調整機能が未発達なため、熱の放散がうまくできません。身長によっては、さらに地面からの照り返し(輻射)も加わって、大人にくらべて、2~3度暑い状況となりますので、より注意が必要です。
 また、気温が高くない場合であっても、湿度が高ければWBGTの指標では「警戒」レベルとなり、中等程度の生活活動でも熱中症が発生する危険性があります。ムシムシした状態では汗が蒸発しにくいため、体温が下がらず、体に熱がこもってしまうためです。今後も暑い夏が続くと思いますが、正しい知識と適切な対処で、熱中症を防ぎたいものですね。

 日本スポーツ振興センター学校安全部では、安全な学校生活を送るため、様々な取組みを行っています。熱中症予防については、ホームページで詳しく解説していますので、ご活用ください。

 生徒が給水しているイラスト

☆日本スポーツ振興センターホームページ 
 「熱中症を予防しよう ー知って防ごう熱中症―」 
☆環境省ホームページ 
 「熱中症予防情報」サイト

調査・取材を終えて
  今回の事案について、熱中症というよりは、騒然とした異様な雰囲気に包まれた状況の中で、不安な状態の連鎖が発生したのではないかと推測されます。体験したことのない突発的な状況のもとでは、大人でもどうしていいか分からなくなるような気がします。 熱中症対策については、従前よりこまめな水分補給、遮光ネットやミストの設置、運動会の練習後の講話は木陰で行うなど、十分な対策を取られていましたが、この事案を契機に、「学校安全」について熟考され、更に改善策をとられています。いろんな状況に応じて、すばやく対応する力が求められているのでしょう。「やはり、子どもたちに夏休みは必要ですね。」と言う校長先生。その言葉に込められた思いを感じながら、「学校における安全」が基本中の基本であることを痛感いたしました。

 

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