第7回『スポーツ・運動・からだ』(前編) “走る”“泳ぐ”“ボールを打つ”など目的をもって身体を動かす際には、肘、膝、肩などの関節を自分の意志通りに動かす必要がある。関節の動きは筋肉の働きによって生み出される。筋肉は身体全体で400以上あり、関節をまたいで複数の骨についている。 筋肉が収縮すると、筋肉のついている骨が関節を中心に回転・回旋し、身体が動く。我々が走ったり、泳いだり、ボールを打ったりする動作は、このような身 体各部の関節と筋肉の働きの組み合わせである。筋肉を収縮させるための命令は脳から出される。脳からは、動かす身体の部位、タイミング、力の大きさに応じ た信号が出され、それが神経を介して身体各部の筋肉へと伝わり収縮することによって、目的とする動きが実現する。 また、身体には感覚器や受容器とよばれる各種のセンサーがあり、実際に身体がどのように動いたかという結果が脳へ知らされる。身体の動きの修正や技術の向上のためには、このようなフィードバック情報が不可欠である。 目や耳(平衡感覚をつかさどる内耳を含む)などの感覚器の他、筋肉には筋肉の長さを感知する受容器、筋肉と骨を接続する腱には筋肉が発揮した力の大きさ を感知する受容器、皮膚には外部からの圧力や痛みを感知する受容器など、からだには多数の受容器(センサー)があり、そのときの身体の状態が絶えず脳へ信 号として送られ、モニターされている。 さて、脳から神経を介して信号が筋肉まで送られ、それに応じて筋肉が活動するとき、筋肉はエネルギーを消費する。このエネルギーは筋肉の中で作られ、消費される。 エネルギーの作り方には、酸素を使わないエネルギーの作り方(ATP-CP系、解糖系)と酸素を使うエネルギーの作り方(酸化系)がある。この3つのうち、どのエネルギーの作り方が重要かは、どのような運動を行うかによって変化する。 短距離走やジャンプのように瞬間的に大きな力をだす運動ではATP-CP系によって、ジョギングやサイクリングのように軽い運動を長時間続ける運動では 酸化系によってエネルギーの多くがまかなわれる。これらの中間の運動ではATP-CP系と解糖系あるいは解糖系と酸化系で必要なエネルギーのうちの多くが まかなわれ、筋肉で消費される。そして、それぞれで作られるエネルギーが大きければ、筋肉はたくさんのエネルギーを消費でき、たくさんの仕事を行えるとい う理屈となる。 ―スポーツ選手にとってエネルギーを多く生み出すことは有利である。後編ではスポーツ選手の体力の評価方法などを紹介する。― ※本文は「月刊国立競技場」平成13年8月号に掲載されたものを転載しました。
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