ツルのひとこと

 

ツル 浅見前センター長の
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第21回 年末年始の年中行事 2004年12月28日


浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 我が家ではなるべく日本の伝統的な年中行事は行なうようにしてい る。年末で言えば、冬至にはかぼちゃを食べてゆず湯に入り、最後の数日で大掃除をして松飾を門につけ、神棚やサイドボードなどに鏡餅を飾って正月を迎え る。こうした飾りをするのも、29日と31日は避けるから、たいてい30日に飾っている。門松を立てるというような大掛かりなものではないが29日は苦立 てといって嫌われ、31日の一夜飾りでは神様を迎えるのに誠意がないとか、葬式に通じるということで避けるというのが習わしで、別にこだわりがあるわけで はないし、1日早いだけで誠意があるとも思えないが、習わしに逆らういわれもないからそれに従っている。

 子どもがいる間はクリスマスも必ずやる行事だったが、夫婦2人だけの生活になってからは、鶏(七面鳥ではなく)の腿を食べる程度になった。でも孫たちのサンタ役だけはさせられている。

 年越しのそばを食べ、元旦には本物のお屠蘇は甘すぎるのでお酒で 新年を寿ぎ、お雑煮に一通りのお節を食べ、天皇杯の決勝に出かけるというのが、最近の我が家の恒例になっている。これに息子の家族も参加することも多い。 そして、サンタ役をしたばかりなのにお年玉である。その往き帰りに近くの神社に初詣に回ることも多い。

 7日は七草粥。横浜の郊外にいたときには、近所の畑に行って、隅 のほうに生えているせり、なずな、ごぎょう、はこべを摘んできて(仏の座だけは見分けがつかない)、これに買った蕪(すずな)と大根(すずしろ)(この二 つは畑で摘むわけにはいかない)を加えて作っていたが、東京に住むようになってからはスーパーのセットで間に合わせている。そして11日はお鏡開き。今の お供えは化学製品でくるまれているのでカビが生えないのはいいが、あれを習わしどおりに手か金槌で割れというのは無理というものである。神様に備えたもの に刃を当てるのを嫌うといわれても、ここは包丁で切る(おっと切るも割るも正月から縁起でもないということで開くというのだった)のではなく、包丁で開く (魚は開くというからこれで許して欲しい)しかない。包みの中からまた包まれた四角い餅が出てくるのもあるが、切る、割る必要はなくても、伝統が泣くとい うものである。

 こう見てくると、年中行事は何か食べ物尽くしのようでもある。季 節に応じてその時々のおいしいもの、必要なものを食べるということなのだろう。しかし年中行事もクリスマスだ、バレンタインだと輸入物の方が優勢になって いるし、食べ物にも日本の伝統や旬(しゅん)といった感覚が薄れてきているという気がしている。我が家のしていることは、そうした傾向への精一杯の抵抗な のかもしれない。

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