第15回 漢字に見る中韓日の違い
浅見 俊雄
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あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.
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漢字の日本への伝来は、朝鮮半島からともいわれるし、中国から直接伝わったともいわれているが、いずれにせよ、漢字の生まれた中国はもとより、韓国も日本より古くから漢字を使っていただろうから、中韓日という順序にしたのである。
この3つの国は、欧米などから見れば共通の文字をもったかなり同質の文化圏のように見られがちであるが、同じ漢字でも読み方も文法もまったく違うし、韓 国のように漢字をほとんど使わなくなってしまった国もある。中国も日本も、複雑な漢字を簡略化したが両国で、同じ略し方をしたものはそんなにないようであ る。その結果中国の現代漢字には、日本人には音が分からないどころか、もとの漢字も意味さえもわからないものが沢山できてしまっている。もともとは表意文 字であった漢字が、中国の略し方では表音文字的になってしまったものもあるようで、たとえば運は云にしんにゅうである。
字体は違っていても漢字を使う中国の方が、何という町(日本の発音で)か、何の店かがなんとなく分かるが、町名の表示や看板にハングルしかない韓国の町 では、それさえよく分からないということになる。駅などにはローマ字はついているが、漢字表記を日本の発音で覚えていることが多いから、違う発音では元の 漢字の想像さえつかないことになる。
マスコミ等での人名の扱いも同じではない。日中間ではお互い漢字で表記し、たとえば胡錦涛主席はコキントウと日本は日本の発音で読んでいるが、日韓では 盧武絃大統領と漢字では書いても発音は韓国読みで、ノムヒョンとかな書きをつけることが多い。韓国の人にもらう名刺には、ハングルとローマ字が表裏のもの がほとんどで、名前にも漢字は使わないのが当たり前となっている。
このように、第3者から見たら似たように見えるものが実は違ったものであったり、当事者同士でもあまりそうとは気がつかない違いがあったりすることはよ くあることである。同じだと思ってことを進めるのと、違いに気がついてそれに即した対応をするのとでは、何事も結果に大きな違いが出ることになるだろう。 私自身、違いに気のつく、違いに敏感な人でありたいと思っているが、それがなかなか難しいものでもある。 |