ツルのひとこと

 

ツル 浅見前センター長の
ツルのひとこと
バックナンバーはこちら>>

第7回 スポーツは人類共通の言語か?

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 ワールドカップの最中の6月24、25日に、フランス大使館、日仏会館と JISSとの共催で、「スポーツー人類共通の言語」のテーマで日仏スポーツシンポジウムが開催された。ワールドカップでスポーツへの関心が盛り上がってい る機会に、両国のスポーツにまつわる諸現象やスポーツ政策について議論しあって、スポーツとは人類にとってどんな意味を持っているのかを探ろうとしたもの であった。ここではその内容に触れる余裕はないが、テーマに掲げた「共通の言語」について少し触れてみたい。

 確かにスポーツは、国、民族、言語、宗教などのさまざまなバリアを超えて、共通の理解の下にプレーを楽しみ、試合を戦い、心を通いあわせることができる ツールである。人と人とがコミュニケーションできるのである。しかし、ブラジルとドイツではプレースタイルが違うというように、ナショナルチームやクラブ チームのサッカーのやり方には、それぞれの民族性や文化的背景が色濃く反映している。こうした違いは言語にたとえれば、世界共通の標準語はなくて、さまざ まな方言があるのだと解釈することもできるだろう。

 ワールドカップの決勝戦は、多分世界中の20数億人が同時に観戦して、興奮と感動に浸っていたに違いない。まさに人類共通の言語として機能したともいえ る。しかし、たとえばカーンがファンブルしてロナウドが先制点を決めたという同じシーンを見たときの反応は、その人の立場によって歓喜、悲嘆、あるいは驚 きなどさまざまであっただろう。同じシーンの発したメッセージが、受け手によってさまざまに理解されたことになる。こう考えると、共通言語といえるのだろ うかという疑問に行き当たってしまう。

 さて皆さんはどうお考えになるだろうか。今回は疑問だけを投げかけて、次回に私の考えを述べさせていただきたい。

ページトップへ