ツルのひとこと

 

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第6回 異文化との遭遇

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.


 いよいよ始まったワールドカップ、わくわくと胸躍らせている人も、なんかうるさいものがやってきたと批判的にみている人も、今まで見たり聞いたりしたこととはかなり違ういろいろなものと接する機会が多くなっていることは間違いない。

 しかも1都市集中で行うオリンピックとは違って、北海道から九州まで、さらにはお隣の韓国まで加えれば20の都市で試合が行われ、36カ国が別々のとこ ろでキャンプを張って、キャンプ地から試合地まで、国境を越えてまでチームもサポーターも移動するのだから、あちこちで異文化との遭遇が起きていることは 間違いない。

 カメルーンの大遅延や、練習試合のドタキャンを平気でするチームなど、時間や約束を比較的きっちり守る日本人からみれば、それはないよというようなこと も、「ちょっと待っては1時間」という言い方があるような国など、世界標準から見ればよくあることなのである。逆にイスラム圏の賓客に、スタジアムの貴賓 室でハムサンドとビールでもてなそうとしたところもあるなど、日本人の国際感覚のなさを露呈したこともあちこちで起きているようだ。

 フーリガンのような接したくない、真似したくない異文化もあるが、ワールドカップはこうした地球上のさまざまな人たちのさまざまな生き方になまで接する ことのできる絶好の機会でもある。単に日本チームを応援したり、世界最高のサッカーを楽しむだけでなく、外国からきた人とじかに接する機会もぜひ作ってい ただきたいものである。そうした異文化と肌で接して知ることが、21世紀の大きな課題であるグローバリゼーションにとっても、逆に日本や日本人のアイデン ティティとは何かを考える上でも、非常に重要な意味を持っているのである。

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