ツルのひとこと

 

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第2回『和の意味を考えよう』

浅見 俊雄

 

  浅見俊雄イラスト
  あさみ・としお
1933年生まれ.
国立スポーツ科学センター長.
(財)日本サッカー協会顧問、
アジアサッカー連盟規律委員会委員、文部科学省中央教育審議会委員など.

 聖徳太子の17条憲法で「和をもって尊しとなす」と定められて以来なのだ ろうか、 明治以後それをそれこそ尊しとして教育したからだろうか、日本人の特性は「和」にあるというのが、日本人もそう思っているし、世界からもそう見られている ようである。確かに「和」とか「ハーモニー」というのは、社会生活を送る上で重要な規範であることに間違いないだろうが、日本的な「和」が本当にすばらし いものなのだろうかと最近疑問を感じている。これは個と集団の問題でもあると思っている。

 スポーツでも、日本ではチームの和がきわめて重要視されている。しかもプレイの面でのチームワークだけでなく、プレイを離れた部分にまで和が求められていることが多い。同じ釜の飯を食った仲良し集団がチームの理想像になっているといってよいだろう。

 これはかなり前に聞いた話でチームも名前も忘れてしまったが、アメリカの大リーグで最高の2遊間といわれたコンビは、フィールドを離れると口もきかない 犬猿の仲だったという。それなのにフィールド上では最高のコンビネーションプレイを見せて、ファンを魅了したのである。それぞれがチームのために、そして 自分のためにどういうプレーをすることが期待されているのか、最高の仕事とは何かを熟知していて、それを披露する結果がプレーのハーモニーを作り出すので あろう。仕事とプライベートの好き嫌いとははっきり区別されているのである。

 日本的な和は、どうも心情的なものに重点が置かれているような気がしている。しかし仕事や勝負をする集団に求められる和は、機能的な和というか、知や技 の和だと思うのである。個性的で高い知や技を持った個人の集団が、集団の目的を十分把握した上で個の能力を和したときに、いい仕事ができるのだと思うので ある。もちろんこれに情の和が加われば、それにこしたことはない。

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