スポーツと二人三脚

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第46回 卓球の名指導者 吉田安夫先生 2009年6月12日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 8年ぶりの日本開催となった世界卓球選手権大会(2009年4月 28日~5月5日:横浜アリーナ)は、8日間で6万人の観客を集めたそうである。日本卓球協会では「若い選手の活躍があり、予想以上の方が来場した」と話 していたが、多くの人が世界レベルの卓球の素晴しいテクニックに驚かされたのではないだろうか。

 活躍をした日本代表選手の多くが、青森山田学園卓球部の出身又は在席中であり、その総監督が吉田安夫先生なのである。その吉田先生とは、私が高校教員の頃から40数年の付き合いがある。

 先生は、母校の熊谷商工高(現熊谷商高)に新任教師として務め、卓球部監督として49回全国優勝に導き、その後、埼工大深谷高で7年間、そして青森山田 学園にと卓球一筋に打ち込み、通算で全国優勝回数は120回を超えているという。2002年には自叙伝「闘将」を発刊している。

 高校の同級生に推理小説作家の森村誠一氏がいる。私も森村氏とある会で一緒になる機会があり、吉田先生を話題にしながら会話が弾んだ記憶がある。

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 その吉田先生の自叙伝の出だしに『「ピンキチ」という言葉ある。卓球に魅せられ、人生の全てを卓球に賭けている者を称する言葉である。選手として10 年、監督として47年の長い歳月を卓球一筋に賭けてきた私も、間違いなくピンキチの一人である』と述べている。

 まさに卓球一筋に走ってきたといえる人生だと思うが、私が大学で入試問題作成委員長を務めた折、自叙伝が送られてきたので、体育大学の問題として相応しいと思いその中の一文を取り上げて課題とした。

 その課題文の出だしは「名指導者とは、一言で言えば選手の無限の潜在能力を引き出せる指導者ということになるだろう。丹精を込めて大輪の花を咲かせる園 芸の名人と同じである。では、選手の潜在能力(素質)を引き出すには何が必要か。先ず、第一は選手に対して正しい理論と情熱の提供者であることだ。」であ る。

 その吉田先生に、今年の二月頃久しぶりにNTCの宿泊施設アスリートヴィレッジでお会いした。「あと3年は卓球の指導を続けますよ」と77歳の年齢を感じさせない相変わらずの情熱家で、熱血漢の先生である。

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