スポーツと二人三脚

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第45回 スキー・モーグル、上村選手の活躍に思うこと 2009年4月28日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 3月に福島県・猪苗代でスキーフリースタイル世界選手権大会 (2009年F ISフリースタイル世界選手権猪苗代大会)が開催され、モーグルで日本勢が大活躍をした。私も応援する機会があり、モーグルにおける日本勢の活躍を目の当 たりにすることが出来た。長野五輪、トリノ五輪に続いて今回でモーグル会場での直接応援は3度目である。

 長野五輪では里谷選手の優勝の瞬間に立ち会ったのだが、決勝レースでの滑りは、柔らかく安定感のあるスピードに乗ったレース振りだったと記憶している。 今回の世界選手権では、二人並んで競い合う「デュアルモーグル」での上村選手のレースを応援したのだが、上村選手の滑りは、スピードに乗った厳しい中にも 安定感のあるものだったと思う。
 上村選手は、モーグル、デュアルモーグルの2種目で優勝し、日本人初の世界選手権金メダルおよび2冠を獲得する快挙であった。

 会場となった「リステルスキーファンタジア」は、例年だと福島県でも雪が多い地域と聞いていたのだが、大会時には雪に恵まれず、雪を山奥から運び出し、会場に貼り付けたのだと聞いた。
 猪苗代湖を見下ろす景色も素晴しい会場なのに、そして世界からトップレベルの選手たちが集まって開催された世界大会なのだから、もう少しスキー競技としての環境に恵まれていたらもっと印象が良かっただろうと思った。

 昨年だったと思うが、全日本スキー連盟主催のパーティで、IOC環境委員であり、JOC副会長の水野氏が挨拶の中で、「オリンピック種目の中で地球環境が悪化し、地球温暖化が進むと一番先に無くなるのはスキー競技だ」と指摘していた。
 今回のモーグル会場を見て改めてその言葉を思い出し、その話が現実のものになってきているのではないかと感じた。

 IOCもJOCも、スポーツや文化と並んで“環境”をオリンピックムーブメントの重要な柱として取り上げてきている。
 2016年のオリンピック招致に取組んでいる東京都も環境問題を重要な柱の一つに取り上げているように、私たちは将来にわたってスポーツに親しむことが 出来るよう環境問題を意識し、地球温暖化阻止をもっと真剣に考える必要があるという思いを強く持ったのであった。

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