第43回 |
東京五輪招致に向けて思うこと |
2009年2月10日 |
笠原 一也
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かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.
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2016年の五輪開催都市決定まで半年近くとなってきている中で、先日、私の古くからの知人2人の五輪に関する記事を目にした。
一つは長野五輪時にIOCのマーケティング局長を務めていたマイケル・ペイン氏で、もう1人は読売新聞運動部記者の結城和香子氏である。
共に五輪のことを取り上げており、ペイン氏は北京五輪のように完璧を期すのも一つのやり方だが、観客や視聴者の心に残りいいオリンピックだったと後世に 記憶されるには、それ以上の何かが必要だ。それは観客の心をつかみ、自発的な熱狂と純粋な感動がもたらすことではないかと。
一方、結城氏は東京など4都市が立候補している2016年五輪招致レースを取り上げ、世界同時不況は五輪招致にも影を投げかけており、4都市とも何らかの影響を受けることになる。
そのような中で、日本経済は比較的ダメージが少なく見られており、日本政府の初めての財政保証もあって、東京は「他都市より比較的安全な選択」となるだ ろうが、それだけではIOC委員の支持には結びつかないと。そして、IOC委員との個人レベルでのつながりを通じ、情報発信と信頼醸成を図るべきとも言っ ている。
幸い東京五輪招致への世論も70%を越えたという今、この二人の記事の中に東京五輪招致の重要なポイントがあるような気がしてならない。
国内の機運を盛り上げることも重要なことだが、投票権を持つIOC委員1人1人の心に、過去の国際大会に見られたような組織力の素晴しさ、治安の良さ、 財政基盤の健全さ、交通システムの充実など日本のバランスの良さを伝えると共に、長野五輪で見られたように、東京でも観客の心をつかみ、自発的な熱狂と純 粋な感動がもたらすことが可能なのだという事を、あらゆるネットワークを使ってアピールしていくことが招致の成功につながっていくのではないかと思う。
五輪東京開催決定は、多く国民に夢と希望を与え、活力を生み出す元になることから、ここJISSにおいても招致活動を積極的に支援しているところである。
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