第28回 |
「私の運動は選挙運動一本」と海部首相 |
2007年9月28日 |
笠原 一也
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かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.
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今年も体育の日が近づいてきた。体育の日になると思い出すことがある。それは、平成元年10月10日の体育の日のことである。当時、国は体育の日の中央 行事の一つとして東京・霞ヶ丘にある国立競技場において「壮年体力テスト」を実施していた。その行事に、時の総理大臣であった海部首相( 第76代総理大臣)が家族と一緒に、歴代の首相としては初めて参加された。
体育の日の行事を担当している文部省体育局では大騒ぎとなったが、首相は一般参加者とともに約1時間半をかけて、反復横跳び、垂直跳び、握力測定、ジグザグドリブル、1500mの早歩きの五種目に汗を流された。
体力テスト前に司会者から「総理の日ごろの運動は?」との質問に対して「運動は選挙運動一本」というユーモアたっぷりに答え、参加者を喜ばせてくれた。
また、握力の測定では「これは得意だ、政治家なのでいつも握手しているからね」と、ここでもこの機知にとんだ受け答えの言葉に一緒に参加していた人々は大いに笑ったものである。 5種目総合の最終結果は、体力判定員から「40歳から44歳の体力年齢(首相は当時57歳)」と判定され満足そうな様子だったことを思い出す。
なぜこの話を話題にしたかというと、昨年、このコラムで「体育の日」について取上げ、東京オリンピックの開会式を記念した10月10日ではなく、10月の第2月曜日となったことへの疑問を述べた。 ところが、新たな話題として、その「体育の日」を11月に移動させ、文化の日と勤労感謝の日を並べて、秋のゴールデンウィークを計画する話が持ち上がっていると聞いている。
記念日ではなくなった体育の日、だから移動させても良いという発想が生まれてしまうのではないかと思うと、私は10月10日にどうしてもこだわってしま う。体育の日は、やはり国民がスポーツに親しむための一つの動機付けにもなる大切な日であって欲しいと思っている。10月10日は好天日が多いというデー タもある。だから「体育の日」は東京オリンピック開会式の日という記念日にしておいて欲しかったと思うのは私だけなのだろうか?
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