スポーツと二人三脚

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第16回 一病息災 2006年9月29日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 「無病息災」という言葉がある。まったく病気をせず健康であることで、多くの人がそうありたいと願っていることでもある。
ところが最近では「一病息災」という言葉も耳にする。近年の辞典には「無病息災」と一緒に「一病息災」も取上げられており、まったく病気をしないよりも、 1つぐらい持病があったほうが、かえって健康に注意をするので長生きをすることと記されている。

 なぜこのような話題を取り上げたかというと、まったくの健康体だと思っていた私が人間ドックで胃がんが発見され7月に胃の摘出手術を受けたからである。

 自分では身体に自信があり、他人からも健康で丈夫そうだから悪い所は何もないでしょうといわれその気になっていた所、今年の検査で指摘され、内視鏡によ る検査を受けて胃がんが発見された。まったく自覚症状がなかっただけにショックは大きかったがこれも人生と受けとめ、手術を受けたのである。

 他への転移は見られなかったが胃は4分の3を摘出した。この摘出手術を経験して現代医学の進歩の素晴らしさを強く感じた所だが、翌日から歩かされ、抜糸することもなく傷口は塞がっており、二週間後には退院出来たことに驚いている。

 退院後の食事の取り方について主治医からは細かく指導を受けたのだが、4分の1しか残っていない胃では思い切った食事が出来ず辛い日々が続いている。
 一病を患った今はこの病気と友達となり、「一病息災」を意識し、今までの生活を反省しつつ健康に注意をすることに心がけて行きたいと思っている。

 ここ国立スポーツ科学センターでは、日本のトップアスリート達がトレーニング体育館で、プールで、体操練習場で、レスリング場で汗を流し、レストランで は元気よく食事をする姿に接する機会が多くある。今まではあまり意識しなかったが、私自身、日々のアスリート達のトレーニングする姿に接することにより、 体力の回復力が高まっているように思えてならない。
 トップアスリートの躍動する姿は、色々な形で周囲に良い影響を与えているということに気がついたのである。



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