第7回 |
ジャンケンとスポーツ |
2005年12月15日 |
笠原 一也
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かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.
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スポーツの色々な場面で活用されるジャンケンについて、韓国の初代文化相を勤めた李御寧(イオリョン)氏が「ジャンケン文明論」を提唱している。私もその内容に納得していることもあって「ジャンケン」についての思い出を紹介してみたい。
私が学生時代所属した水球チームは殆どの選手の視力が弱く、そのためゲームに勝つ要因には、白い水球帽を選択する必要があった。理由は、青や黒だと見にくい為、パスミスが多くなるからである。
白い帽子を選択するには、試合前の「ジャンケン」に勝ち、帽子の選択権を確保する必要があるのだ。「ジャンケン」には主将が出てくるのでその性格を研究 し、彼の性格だと「グー、チョキ」だとか、いや「パー、チョキ」で来るとかを読むことにしていた。相手は、そのジャンケンが我々ほど重要に考えておらず意 外とこの作戦は成功したのである。それを我々は「ジャンケン心理学」と言っていた。
昭和42年の埼玉国体の時に、私は地元埼玉の高校女子監督であったが高校女子はあまり期待されていなかった。しかし予想以上の活躍で、埼玉県の水泳優勝 の貢献大と言われたのである。その活躍のきっかけは、高校女子100m決勝に地元選手の進出があった。決勝7名の所を同タイムが2名となり東京と埼玉の抽 選となった。東京の女性監督との監督同士の抽選なのである。
抽選は、紙に書かれた二本の線を選択することであり、私はこの決勝への進出が埼玉勢を勢いづかせることになると考え、何が何でも勝たねばと、そのために はくじの選択権を先に持つ必要があると思った。それは、地元の競技役員が作ったくじ、外れを指せば役員の顔に必ずや変化が現れる、そしたら隣の線に変えれ ば良いと。
そのためにはジャンケンに絶対に勝つ必要がある。相手もすごく緊張している。こんな時は、チョキは出しにくい、「パー」だと。ところが相手もパーを出し てきた。しまったという顔をしたので続いてパーを出したら相手は慌てて「グー」だった。学生の時のジャンケン心理学が多少なりとも役に立ったなと思いなが ら、決勝進出を選手に伝えるため駆け出したのだった。
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