スポーツと二人三脚

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第4回 歩く(ウォーキング)ということ 2005年8月24日


笠原 一也

 

  国立スポーツ科学センター センター長 笠原 一也
  かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長  
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.

 今、我が国で一番の人気スポーツ種目は「ウォーキング」である。
ウォーキングがスポーツ?という人もいるかもしれないが、内閣府の世論調査でも認知されているところであり、身近で気軽に、誰もが取組めるスポーツとしてウォーキングに親しむ人が急増している。

 昔から、日本では狭い土地と山坂等の関係もあって道路事情が悪く、車の発達が遅れたのだと聞いている。ということは歩くことにかけて日本人は得意なはず だが、近年、日本人の歩く姿を見ているとあまり上手いとは思えない。そのような中、最近、文部科学省も、厚生労働省も歩くことの大切さに気がついたと聞い ている。私自身も歩くということに関して、ちょっとしたキッカケで考えを改めることとなった。

 10年位前の話だが東京に大雪が降った時の事である。電車が止まるほど降るとは思わず六本木ではしご酒をしていた。遅くなって地下鉄を利用して帰宅する ことになり、営団成増駅までたどり着いたが、タクシーも動かず、我が家に電話をしても雪で車は出せないとのこと。仕方なく歩き出したのが夜中の12時半。 雪道を歩いて、途中二度も転倒しながら、志木の我が家にたどり着いたのが明け方の4時近く。

 家には着いてホッとする間もなく思ったことは、寒かったとか雪道が大変だったということより、歩くということは凄いことなのだと気が付いたことである。
後で、車で測ってみたら10km位あった。真夜中の雪道を仕方なかったこととはいえ、「歩くこと」の素晴らしさを身を持って体験したのである。このことがキッカケとなり、以来出来るだけ足を動かすように心がけ、機会ある毎に歩くようにしている。

 今では、周りの歩く人の姿が気になるようになり、見ていると多くの人が歩くことが上手くないように思えてならない。外国で生活をして帰国した友人の多く が、外国人に比べて日本人の姿勢が悪いということを指摘する。歩くことがうまくないのはそのためなのかもしれないと、自分の姿勢には常に気をつけて歩くよ うにしている。

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