第3回 |
スポーツに対する価値観 |
2005年7月22日 |
笠原 一也
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かさはらかずや
1938年 埼玉県生まれ
国立スポーツ科学センター長
和歌山県保健体育課長,文部省競技スポーツ課長,JOC事務局長、東京女子体育大学教授など歴任し現職.
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1995年、当時の英国のメイジャー首相は、近代スポーツの母国とも言われているイギリスの国際競技力が低迷していることを危惧して「英国スポーツ再建策」を政策として打ち出した。
首相はメッセージの中で「生活の資質の中で実質的な成果と同様に大切なことは芸術、余暇及びスポーツの世界であり、それは日常生活を豊かにしてくれるも のである。また、スポーツは、スポーツを知り、享受する世界中の数限り無い各年齢層の人々の生活の価値を高めるとともに、世代間と国境間の結合力とな る。」と述べている。
このような英国首相の積極的な取組みがあって、1996年アトランタオリンピックで金メダル1個であった英国は、2000年のシドニーオリンピックで11個、アテネオリンピックでは9個の金メダルを獲得している。
英国ばかりでなくスポーツ先進国ではスポーツの価値を非常に高いところにおいており、アメリカやオーストラリアでは国民の心を一つにすることが出来るのはスポーツであると位置付けている。
1997年12月、ギリシャに長野オリンピック聖火の受け取りに行った時のことだが、古橋JOC会長はVIP扱いをされておりSPがついたのである。
古橋会長も驚いたが、終日警察官がガードしてくれていてどこに行くのも安心であった。このようにギリシャではNOCの会長に対して国賓並みの待遇をする ということであり、そのこと一つをとってみてもギリシャではスポーツの価値が非常に高いことが伺えたのである。
古橋会長に「日本に帰ったらただの人ですよね」といったら、日本ではスポーツの価値がまだ低いからなと笑っていたことを忘れることが出来ない。
アテネオリンピックでの日本選手の活躍が日本国中を興奮させ、感動を与えてくれたとはいえ、スポーツに対する価値観がこれらのスポーツ先進国並みになっ てこそ、本当の意味で「スポーツ文化」が我が国で定着したといえるのであり、そうなるまでにはまだまだ時間がかかるように思えてならない。
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