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平成23年度 第9回主要スタジアム情報交換会報告

  「平成23年度 第9回 主要スタジアム情報交換会」報告

国立競技場では、国内主要スタジアムにおけるより良いグラウンドコンディションの維持や、施設の管理運営の方策を探り、もって良質なスポーツターフの普及・発展及び我が国のスポーツ振興に寄与することを目的とし、主要スタジアム情報交換会を年1回開催しています。

 今年度は、1月24日(火)・25日(水)に国立競技場にて、全国より46施設130名が参加しました。

1日目

基調講演
 

基調講演(村山勉氏 社団法人日本プロサッカーリーグ Jリーグ競技・事業統括本部 競技・運営マネージャー)

 今年度の基調講演は、『快適で安全なスタジアム.Jリーグの目指す運営.』と題し、1993年5月15日よりスタートした、Jリーグについてお話をいただきました。

 Jリーグの理念とは、日本のサッカー水準向上及びサッカー普及促進・豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与・国際社会における交流及び親善への貢献などを掲げています。

 試合開催を土日又は水曜日と固定し、平日開催の場合は、ナイトゲームとするなど、広くサッカーに触れてもらえるようスケジュールの調整を行っているという趣旨をご紹介いただきました。

 また、観客に満足と快適さを提供することを目的に、スタジアムの安全性など、各スタジアムに求める対応などが挙げられ、参加者からは理解が深まったなどの意見をいただきました。

第1分科会(スポーツターフ部門)

 スポーツターフの維持管理に関する問題を考察する第1分科会では、芝生維持管理の取組み事例の紹介とディスカッションによる意見交換を行いました。

《芝生維持管理の取組み事例》
○大分銀行ドーム
(大分スポーツ公園総合競技場)  『大分銀行ドームの芝生維持管理について』

 大分銀行ドームは、屋根の開口部が小さく、半地下構造となっているため、風が通らず、高温多湿の状態が続き、それに伴う芝生の生育不良など多くの問題を抱えていました。

 管理が難しいとされる状況で管理を行い、コンディション向上のために取組まれた事例など、これまでに得た情報をお話いただきました。

 まず通風障害の緩和として、大型扇風機を導入し、スタジアム内の空気を循環させることで、高温多湿の状態を軽減させ芝生の回復力を向上させ、コンディションを保つ取組みについてご説明いただきました。

 その他、芝生管理以外にも、自主事業である『ターフキッズ(試合前のグラウンド補修体験)』の活動事例など、大変有意義な事例紹介となりました。

《ディスカッション》

(1) 高温状態と芝生管理について

 昨今の異常気象により、夏の猛暑が続き、寒地型芝生を管理するスタジアムは、夏越しが難しくコンディションの維持が困難な状況となっています。また、ウィンターオーバーシーディングを導入しているスタジアムは、秋が遅れることで冬芝の播種時期を見極めることが難しく、初期生育期に秋のシーズンが重なることで、冬のコンディションに大きな影響が出るなど、多くの問題が挙げられました。

 これらの対策案として、ミストクーラーの導入など、各スタジアムの検討内容を意見交換する事で、今後の整備計画を見直すことのできる内容となりました。

(2) 芝生張替のタイミングについて

 2002年FIFAワールドカップ開催から10年が経過し、開催にあわせて整備されたスタジアムでは、芝生の劣化などによる張替えの検討時期に入っています。

 張替えの検討要素としては、茎葉密度やグラウンドの硬度、水はけの問題などが挙げられます。しかし、コンディションは良好で張替えの必要がない場合でも、陸上競技場はグラウンドのせり上がりのため、日本陸上競技連盟の公認制度による検定に通らないことによる張替えも考えられます。

 また、芝生だけでなく予算の確保の問題もあり、張替えのコストを下げるための対策が挙げられるなど、多くの意見交換が行われました。

(3) 稼働日数の確保と芝生の維持管理について

 芝生のコンディションを保つためには、各スタジアムでもある程度の養生期間を設けた管理を行っているようです。しかし、稼働率を上げるためには、養生期間に貸出しを行うことも場合によっては必要となります。このような、芝生の過密利用に備え、園内に圃場を設けるなど、スタジアムにより様々な対策が取られています。

 この様にスタジアムの抱えている問題や対策案などが挙げられ、多くの情報交換が行われました。

(4) 試合前の練習等、芝生使用のあり方について

 テーマ(3)で取り上げた、稼働率のアップに伴い、芝生利用の見直しが必要とされています。

 芝生の養生期間を減らすためには、一つのイベントで与えるストレスをいかに軽減させるかが問題となります。そのため、練習時間の徹底や選手以外の立入りを制限するなど、対策の検討がされています。

 スタジアムによっては、チームと調整を行い、利用方法について検討が行われるなど、今後の対策について、有効な情報交換が行われました。

第2分科会(管理運営部門)

第2分科会 Aグループ
 

 スタジアムの管理運営に関する問題を考察する第2分科会では、スタジアム形態(総合スタジアム、球技専用スタジアム等)や収容人員に応じて三つのグループに分かれ、フリートーキングを行いました。

 昨年発生した東日本大震災時の状況や対応を、今後の教訓として活かしていくための重要なテーマと位置付けて取り上げ、その他、『特徴的な新しい施設利用』、『施設利用時における芝生立入りの制限』、『備品貸出し時の注意事項・破損時の対応』等の各スタジアムの取組みや取扱いに係るテーマについて意見交換を行いました。

《ディスカッション》

 Aグループ(収容人員3万人以上のスタジアム)とCグループ(収容人員3万人未満の総合スタジアム(陸上競技場))では、震災後の省電力への取組みの一つとして、熊本県民総合運動公園・坂田氏より、SVOシステム(食用廃油による発電)によるナイター照明について事例の発表をいただきました。

 芝生立入りの制限については、利用者の要望に対応することと芝生のコンディションを維持することの両方の観点から対応すべき問題として、各スタジアムのスタンスについて意見交換がされました。

 Bグループ(収容人員3万人未満の球技専用スタジアム)では、昨今、市や県の条例により規制が更に厳しくなっている受動喫煙による健康被害への対策について、参加スタジアムからの課題テーマとして取り上げました。スタジアムの構造や周辺環境を確認し、スタジアム外やコンコースの端に喫煙スペースを設ける、テントを張るなどの実例を挙げて、抱える課題や対応策について意見交換が行われました。

 その他にも、共通テーマ、参加スタジアムから挙げられた課題や質問も含め、各グループで、幅広い事案について積極的に情報交換が展開されました。

2日目

施設見学

施設見学(味の素スタジアム屋上)
 

 2日目は、2013年に開催されるスポーツ祭り東京2013(第68回国民体育大会・第13回全国障害者スポーツ大会)に向けた改修工事が行われている、味の素スタジアムで施設見学が行われました。

 改修工事のメインコンセプトとして、環境配慮型施設への転換・ユニバーサルデザインの充実・国際大会が可能なスタジアム作りが挙げられました。

 環境配慮型では、太陽光発電屋根の設置や樹木型壁面緑化、風力発電の導入によるCO2削減の見直しを行いました。また、太陽光発電屋根は、光透過型を採用し、芝生の生育に必要な日照を確保するなど、芝生への配慮が説明されました。

 昨今は、太陽光発電の導入に代表されるように、施設のエコ化が進んでいることから、今後の活動に参考になるとの意見が多く挙げられました。

終わりに

 今回の情報交換会では、意見交換の場を多く設けるため、スポーツターフ部門でもディスカッション形式で開催しました。

 今年度は、東日本大震災・夏の猛暑など、スタジアムで新たな悩みが生まれ、対策を検討している事柄も多く、各スタジアムの対応を情報共有することで、持ち帰るものも多かったのではないかと感じています。

 今後も引き続き、この会が有益な情報交換の場になるよう、また、スタジアム関係者間のより良い交流の場となるよう、更なる充実に努めたいと思います。

 

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