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グラウンドの連続使用における芝の整備について

ヤマザキナビスコカップ試合前(11/3)
ヤマザキナビスコカップ試合前(11/3)
国立競技場では、昨年の10月末から11月初めにかけて、ラグビーニッスイブレディスローカップ(本誌P4.P5参照)・サッカー2009J リーグヤマザキナビスコカップ決勝戦(*注1)・サッカーAFCチャンピオンズリーグ決勝戦(ACL )(*注2)の大規模国際大会を含む3大会連続の利用がありました。
今回行われたそれぞれの大会は、世界的・国内的な格式の高さや技術レベルの高い大会であり、約1週間でこのようなイベントが実施されたことはこ れまでにあまり例がなかったもので、今回はそれらの大会期間中のグラウンド整備がどのように行われたかについての報告をしたいと思います。

●事前の準備(整備について)

【冬芝の播種】
この期間は例年、冬芝(ペレニアルライグラス)の育成期間となっていますが、この時期に合わせて冬芝の播種を行い、どの程度に育てて行くかが大 きな課題となりました。
冬芝の播種は、気温の状況から見ると例年であれば、10月の初旬から中旬となります。しかし今年はその時期に幾つかのイベントやサッカーの試合 が予定されていたため、それらによる消耗を考慮し、9月24日に第1回目の播種作業を行いました(約45g /㎡)。この時期は例年に比べると2週間ほど早く、ベースのティフトン芝に生育の影響を受け、成長が妨げられることは確実でしたが、ある程度の芽数を10 月の中旬までに確保するという目的からこのタイミングで播種を行いました。
その後、イベントのダメージを見極め、10月15日に約20g /㎡の追い蒔きを行いました。

【その他の作業】
施肥は、生育状況に合わせて化成肥料を2回・液肥を1回行いました。また更新作業として、ハイドロジェクト(超高圧の水噴射によるエアレーショ ン)を1回、抗ストレス材の散布を1回、着色作業を2回行いました。

●連続使用期間中の整備

【芝の刈高】
芝生の刈高は、10月10日まで20㎜程度とし、25日に行われたJ2の試合は25㎜ で行いました。その後、ブレディスローカップでのダメージを抑えるため、前日練習の29日、試合当日の31日には28㎜ で作業を行い、31日の試合後には、その後に行われるナビスコカップ・ACLに向けて26㎜に落として作業を行いました。

【ラインマーキング作業】
ブレディスローカップ直前の10月25日にサッカーの試合が入っていたため、ラインマーキング材は消すことのできるもの(*注3)を使用して、その試合直後にラインの消去作業を行いました。また、ブレディスローカップのライン引きに 関しても、その後に行われるサッカーの試合に配慮し、同じものを使用してライン引きを行いました。しかし、試合当日の2日前にライン引きを行ったため充分 に消すことができず、ACLの際には、マッチコミッサリーから指摘を受けてしまいました。

●連続使用中の芝の状態

ラグビーの試合、それも世界のトップを争うチーム同士の試合をはじめとして、国内屈指のカップ戦、また、アジアのクラブチームの№1を決める試 合が約1週間ですべて行われるということでありましたが、我々としては、最初に行われるラグビーの試合で芝がどの位ダメージを受けるかが大きな関心でし た。
しかし見る限りでは、スピード・力強さ・高い技術を存分に見せてくれた試合内容にもかかわらず、部分的な損傷は若干あったものの、ピッチ全体と してはさほどのものではありませんでした。
その後に行われたヤマザキナビスコカップでは、予定されていた前日練習が取リ止めになり、芝生を休めることができました。

連続使用の最後となったACLでは、海外チーム同士の対戦のため、前日練習をそれぞれのチームが1時間ずつ行いましたが、この練習ではかなり厳 しいダメージを受けました。
翌日の試合に向けて整備をしなければならない我々にとっては、前日練習というものはインスペクション的なものであって欲しいという思いもあり、 様々な意味で複雑な心境でした。
というのも、本来であれば、このような大規模のイベントが実施されるとなればそれなりの整備養生期間を設け、万全の準備を進めておきたいところ なのです。しかし、毎年ある程度この時期に大会やイベントが予定されているため、それらの利用も続けながらの作業となります。これに加え、天候や気温の変 化などの気象状況もある程度予測しながら整備作業を行わなければならないのですが、思うようにならないこともあります。

今回は大きな問題もなくこの大規模イベントを終えることができましたが、いつもうまくいくとは限りません。そのことを肝に銘じておきたいと思い ます。
最後になりますが、整備作業に奮闘してくれた整備員の方々にこの場を借りて感謝を申し上げます。

(*注1)(社)日本プロサッカーリーグが主催するリーグカップ
(*注2)アジアサッカー連盟(AFC)が主催するアジアのクラブチームによる国際大会。試 合会場については、前年度までのホーム&アウェーから、今年度より中立地での一発勝負となった。優勝チームには、同年度に開催されるFIFAワー ルドクラブカップへの出場権が与えられる(略称ACL)。
(*注3)消すことのできるラインマーキング材(ER)とは、使用方法は通常のラインマーキ ング材と同じだが、リムーバーという液をライン引きと同じような要領で吹きつけることで、ペイントが浮き水で洗い流せるようになるもの。しかし、時間を置 けば置くほど消えが悪くなることがある。

試合後のライン消し
試合後のライン消し
ACL前日練習後の芝のダメージの様子
ACL前日練習後の芝のダメージの様子

 

 

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