2010年度調査研究事業

スポーツ施設管理運営・スポーツターフ

 独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下センター)では、毎年スポーツ施設の管理運営等に関するテーマを設定し、調査研究事業を行っています。

 本号では、国立競技場の調査研究事業の枠組みをご紹介しながら、2010年度の調査研究事業全体について報告させていただきます。

調査研究事業の枠組み

 国立競技場が行っている調査研究事業は、次図のようなイメージとなっています。スポーツターフ調査研究に関しては、過去にも様々な調査研究を行ってきましたが、2010年度からは体制を新たに実施しました。

 調査研究事業は、大きく2本の柱で構成されています。

調査研究事業表

1.スポーツ施設管理運営に関する調査研究

 全国各地のスポーツ施設の管理運営について調査研究を行い、センターのスポーツ施設及び附属施設(国立競技場、秩父宮ラグビー場、国立代々木競技場の各施設)の充実と効率的運営の促進を図ることや、調査研究結果を広くスポーツ関係者に提供することを目的としています。

 調査研究委員会に2つのワーキングチームを設置し、国立競技場のようなスタジアムを対象とするチームと、代々木競技場のようなアリーナ(体育館)を対象とするチームを設けて調査研究を行っています。

2.スポーツターフ調査研究

スポーツターフ維持管理研修会の様子
スポーツターフ維持管理研修会の様子

 良質なスポーツターフの普及・発展に寄与するため、スポーツターフに関する調査研究を行い、その成果を広く提供するとともに、センターが主催する研修会、講演会等を通じ、スポーツターフ管理者の育成と資質向上及び管理技術の向上を図ることを目的としています。

 調査研究委員会にワーキングチームを設置し、調査研究を具体的に進めています。

「2010年度調査研究事業」報告

1.スポーツ施設管理運営に関する調査研究

スタジアム調査研究

 これまで以上にお客様(観客・主催者)の立場に立ったスタジアム運営を図ることを目的に、利用団体へのヒアリング及び他のスタジアムの調査を実施しました。

 ヒアリングは6月から7月にかけてサッカー、陸上、野球の7団体に実施し、VIP用のラウンジの充実、照明灯の色合いなど施設・備品・諸室に関するものや、申請書類や料金支払期限といったソフト面に関する要望のほか、「海外の先進事例を視察したらいいのではないか」「手続きの簡素化ができないか」等のご意見もいただきました。

 また、ヒアリング後に6ヶ所のスタジアムにご協力いただき、現地での調査を行いました。これまであまり注目してこなかった飲食売店の運営状況や、事務手続きなども調査し、施設運営全体を通じてよりお客様の立場に立った運営ができるよう、今回の調査結果を踏まえて改善していきたいと考えています。

主要スタジアム情報交換会

主要スタジアム情報交換会(全体会の様子)

 実施したスタジアム調査の結果を基に、「お客さまにとって居心地のよいスタジアムとは」というテーマを中心として、2011年1月25日~26日の2日間、福島県にあるJヴィレッジで開催し、全国から38施設85名が参加しました。

 「管理運営部門」と「スポーツターフ部門」の分科会を設け、事例紹介や質疑応答を行う中で、日頃は一堂に会することが少ないスタジアム関係者が直接顔を合わせて討議し、情報交換する貴重な場となっています。詳細は、「国立競技場2011年3月号」をご覧ください。

アリーナ調査研究

 2010年度は、国立代々木競技場第一体育館と同規模の施設について、施設が抱える問題点等を調査、把握することにより、職員の来場者に対するサービス提供や施設管理・運営に関する意識を高め、サービスの充実を図ることを目的に類似施設の調査を始めました。現地視察のほか、類似施設に対するアンケート調査について準備を行っており、今年度も引き続き実施する計画です。

2.スポーツターフ調査研究

校庭緑化方式の調査

 近年推進されている校庭緑化において、校庭緑化の方式として全国的に有名な「鳥取方式」「塩竈方式」について調査を行いました。両方式とも、雑草・野草も芝地を構成する要素と考え、農薬使用も抑えた省力管理を基本としていますが、気候の差などから芝種や管理法に違いはあります。また、ボランティア等による管理体制の構築、機械器具の調達や業者の委託経費など、共通する課題も確認できました。

校庭緑化に関するアンケート調査

 校庭緑化を導入した各学校が、維持管理を行う中で抱えている問題点や課題等を把握することを目的として、2010年10月~11月にかけて、校庭緑化を実施した東京都内の公立学校76校に対してアンケート調査を実施しました。回収率は94・7%であり、「使用頻度が高く維持管理が難しい」「予算が厳しく補助がなくなった後の管理経費が心配」といった課題が挙げられました。詳細は、「国立競技場2011年5月号」で報告しています。

スポーツターフ維持管理研修会

 本研修会は、中・小規模スタジアムにおけるターフコンディション維持の在り方について考え、スポーツターフ管理者の育成及び資質向上を目的に、2010年6月22日に秩父宮ラグビー場で開催し、14施設28名の参加がありました。

 実地研修では実際に芝刈やラインマーキング、補植作業などを体験し、参加者からは大変参考になったという声をいただきました。詳細は、「国立競技場2010年9月号」をご覧ください。

主要スタジアム情報交換会

 前記「1.スポーツ施設管理運営に関する調査研究」の記載を参照。

 国立競技場では、以上のように様々な観点から、より良い施設運営に向けた調査研究を続けています。こうした調査研究を蓄積し、広く全国のスポーツ関係者の皆様に参考となる情報を提供していきたいと考えていますので、引き続きご協力をお願いします。

 

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